背中越しの温度、溺愛。

夏緒

文字の大きさ
上 下
23 / 67

23話 女友達。2

しおりを挟む
「あと半年したら、まなかちゃんは院に進んじゃうんでしょ」
「まだ分からないわよ。進学試験も受けてないし」
「でも、どっちにしても会う機会は減っちゃうよ。院に行かないで四年になったとしても、四年生ってあんまり大学来ないでしょ。うちらだって就活も本腰になるし……どんどん擦れ違っちゃうよ」
「そうよね……」
 何と無くだった近い将来が、現実味を帯びてすぐそこまで来ていた。焦らなければならないことは、沢山ある。
「樹くん、これから就活するって言ってたけど大丈夫かしら」
「話を逸らさないの。それは多分大丈夫じゃないの? あっちはきっとすぐに仲直りするって、いつもみたいに。それより今は自分の心配しなさい」
「はぁい」
 こういう時、リナと仲良くなれて良かった、と思う。対等に何でも話せる友達なんて、本当はきっと、そうそう出会えない。
「涼平もまなかちゃんの事好きだと思うんだけどなぁ」
「そんな事ないわよ。態度見てたら分かるじゃない」
「碌に話も出来ない癖に。でも、そんなにどこが好きなの? 涼平のこと」
 両肘をテーブルについて、可愛く頭を傾けながらリナが尋ねる。
「何、突然……」
「そういえば聞いたことなかったなぁって。まなかちゃんは、もっと大人っぽい人が好きそうなのにね」
 好奇心に満ち溢れた瞳は、獲物を放すつもりはなさそうだ。
「そんな急に……どこって言われても……」
 突然の核心に触れるような質問にしどろもどろしてしまって、急に自分が弱々しい女の子にでもなったかのような感覚に陥る。
「友達のあたしが言うのも難だけど、あんなの只のフェンシング馬鹿だよ? まぁそれで行くとまなかちゃんは勉強馬鹿だけど。田辺くんみたいに安心感を獲られる訳じゃなし。ああいうのってきっと、付き合っても自分のことばっかだよー? そういえば彼女が居るとかいう噂もたまに聞くけど、本人に聞いてもはぐらかされるんだよねぇ」
「彼女……」
「噂だってば。あたしも見たことないもん。仲良いから、何も知らない人達があたしのことを言ってんのかもしれないし」
「そういえばどうなのかしら。樹くんからもそんな話聞かないから、てっきり居ないのかと思ってたけど、よく考えたら居てもおかしくないわよね、格好良いもの」
「ほほーう」
「えっ? あっ!」
 ばっと口を手で抑えたが遅かった。リナは人の悪い顔でにやにやとこちらを見ている。
「成る程ねぇ、ああいうのがやっぱり好みなんだねぇ、まなかちゃんは」
「恥ずかしい……」
 まんまと誘導されたことに今更気づいて、顔から火を噴きそうになる。気を逸らそうとわざとらしく壁の大きな時計を見た。
「ああもうこんな時間! リナ、お昼どこに食べに行く!?」
 誤魔化すようにテーブルに広げていたお菓子や何やらをガタガタと片付けると、リナは未だにやにやと笑いながらも唇に色を乗せ直すのを忘れなくて、そのたいしたことない仕草ひとつを挙げても、可愛いと思える。
「この間田辺くんとね、良いお店見つけたんだ。おデートの下見ついでにでも行く?」
「デートって……」
「行くでしょ」
「行くわよ」
 ごみ箱にきちんと分別してから、改めてリナに向き直る。
「やっぱり私もリナみたいだったら良かった」
「あたしみたいだったら、涼平とは一生進展しないよ。そろそろ逃げ腰やめなさい」
「そうよね」
 そろそろ、ちゃんと向き合わなくちゃ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

浮気を許すとかそういう話じゃなくて

ニノ
BL
 お互いを思い合っていた筈なのに浮気を繰り返す彼氏………。  要はそんな彼氏に捨てられたくない気持ちが強くて、ずっと我慢をしていたけど………。 ※初めて書いた作品なのでだいぶ稚拙です。 ※ムーンライトに投稿しているものをちょっと修正して上げています。

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

元執着ヤンデレ夫だったので警戒しています。

くまだった
BL
 新入生の歓迎会で壇上に立つアーサー アグレンを見た時に、記憶がざっと戻った。  金髪金目のこの才色兼備の男はおれの元執着ヤンデレ夫だ。絶対この男とは関わらない!とおれは決めた。 貴族金髪金目 元執着ヤンデレ夫 先輩攻め→→→茶髪黒目童顔平凡受け ムーンさんで先行投稿してます。 感想頂けたら嬉しいです!

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

ハッピーエンド

藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。 レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。 ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。 それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。 ※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...