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23話 女友達。2
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「あと半年したら、まなかちゃんは院に進んじゃうんでしょ」
「まだ分からないわよ。進学試験も受けてないし」
「でも、どっちにしても会う機会は減っちゃうよ。院に行かないで四年になったとしても、四年生ってあんまり大学来ないでしょ。うちらだって就活も本腰になるし……どんどん擦れ違っちゃうよ」
「そうよね……」
何と無くだった近い将来が、現実味を帯びてすぐそこまで来ていた。焦らなければならないことは、沢山ある。
「樹くん、これから就活するって言ってたけど大丈夫かしら」
「話を逸らさないの。それは多分大丈夫じゃないの? あっちはきっとすぐに仲直りするって、いつもみたいに。それより今は自分の心配しなさい」
「はぁい」
こういう時、リナと仲良くなれて良かった、と思う。対等に何でも話せる友達なんて、本当はきっと、そうそう出会えない。
「涼平もまなかちゃんの事好きだと思うんだけどなぁ」
「そんな事ないわよ。態度見てたら分かるじゃない」
「碌に話も出来ない癖に。でも、そんなにどこが好きなの? 涼平のこと」
両肘をテーブルについて、可愛く頭を傾けながらリナが尋ねる。
「何、突然……」
「そういえば聞いたことなかったなぁって。まなかちゃんは、もっと大人っぽい人が好きそうなのにね」
好奇心に満ち溢れた瞳は、獲物を放すつもりはなさそうだ。
「そんな急に……どこって言われても……」
突然の核心に触れるような質問にしどろもどろしてしまって、急に自分が弱々しい女の子にでもなったかのような感覚に陥る。
「友達のあたしが言うのも難だけど、あんなの只のフェンシング馬鹿だよ? まぁそれで行くとまなかちゃんは勉強馬鹿だけど。田辺くんみたいに安心感を獲られる訳じゃなし。ああいうのってきっと、付き合っても自分のことばっかだよー? そういえば彼女が居るとかいう噂もたまに聞くけど、本人に聞いてもはぐらかされるんだよねぇ」
「彼女……」
「噂だってば。あたしも見たことないもん。仲良いから、何も知らない人達があたしのことを言ってんのかもしれないし」
「そういえばどうなのかしら。樹くんからもそんな話聞かないから、てっきり居ないのかと思ってたけど、よく考えたら居てもおかしくないわよね、格好良いもの」
「ほほーう」
「えっ? あっ!」
ばっと口を手で抑えたが遅かった。リナは人の悪い顔でにやにやとこちらを見ている。
「成る程ねぇ、ああいうのがやっぱり好みなんだねぇ、まなかちゃんは」
「恥ずかしい……」
まんまと誘導されたことに今更気づいて、顔から火を噴きそうになる。気を逸らそうとわざとらしく壁の大きな時計を見た。
「ああもうこんな時間! リナ、お昼どこに食べに行く!?」
誤魔化すようにテーブルに広げていたお菓子や何やらをガタガタと片付けると、リナは未だにやにやと笑いながらも唇に色を乗せ直すのを忘れなくて、そのたいしたことない仕草ひとつを挙げても、可愛いと思える。
「この間田辺くんとね、良いお店見つけたんだ。おデートの下見ついでにでも行く?」
「デートって……」
「行くでしょ」
「行くわよ」
ごみ箱にきちんと分別してから、改めてリナに向き直る。
「やっぱり私もリナみたいだったら良かった」
「あたしみたいだったら、涼平とは一生進展しないよ。そろそろ逃げ腰やめなさい」
「そうよね」
そろそろ、ちゃんと向き合わなくちゃ。
「まだ分からないわよ。進学試験も受けてないし」
「でも、どっちにしても会う機会は減っちゃうよ。院に行かないで四年になったとしても、四年生ってあんまり大学来ないでしょ。うちらだって就活も本腰になるし……どんどん擦れ違っちゃうよ」
「そうよね……」
何と無くだった近い将来が、現実味を帯びてすぐそこまで来ていた。焦らなければならないことは、沢山ある。
「樹くん、これから就活するって言ってたけど大丈夫かしら」
「話を逸らさないの。それは多分大丈夫じゃないの? あっちはきっとすぐに仲直りするって、いつもみたいに。それより今は自分の心配しなさい」
「はぁい」
こういう時、リナと仲良くなれて良かった、と思う。対等に何でも話せる友達なんて、本当はきっと、そうそう出会えない。
「涼平もまなかちゃんの事好きだと思うんだけどなぁ」
「そんな事ないわよ。態度見てたら分かるじゃない」
「碌に話も出来ない癖に。でも、そんなにどこが好きなの? 涼平のこと」
両肘をテーブルについて、可愛く頭を傾けながらリナが尋ねる。
「何、突然……」
「そういえば聞いたことなかったなぁって。まなかちゃんは、もっと大人っぽい人が好きそうなのにね」
好奇心に満ち溢れた瞳は、獲物を放すつもりはなさそうだ。
「そんな急に……どこって言われても……」
突然の核心に触れるような質問にしどろもどろしてしまって、急に自分が弱々しい女の子にでもなったかのような感覚に陥る。
「友達のあたしが言うのも難だけど、あんなの只のフェンシング馬鹿だよ? まぁそれで行くとまなかちゃんは勉強馬鹿だけど。田辺くんみたいに安心感を獲られる訳じゃなし。ああいうのってきっと、付き合っても自分のことばっかだよー? そういえば彼女が居るとかいう噂もたまに聞くけど、本人に聞いてもはぐらかされるんだよねぇ」
「彼女……」
「噂だってば。あたしも見たことないもん。仲良いから、何も知らない人達があたしのことを言ってんのかもしれないし」
「そういえばどうなのかしら。樹くんからもそんな話聞かないから、てっきり居ないのかと思ってたけど、よく考えたら居てもおかしくないわよね、格好良いもの」
「ほほーう」
「えっ? あっ!」
ばっと口を手で抑えたが遅かった。リナは人の悪い顔でにやにやとこちらを見ている。
「成る程ねぇ、ああいうのがやっぱり好みなんだねぇ、まなかちゃんは」
「恥ずかしい……」
まんまと誘導されたことに今更気づいて、顔から火を噴きそうになる。気を逸らそうとわざとらしく壁の大きな時計を見た。
「ああもうこんな時間! リナ、お昼どこに食べに行く!?」
誤魔化すようにテーブルに広げていたお菓子や何やらをガタガタと片付けると、リナは未だにやにやと笑いながらも唇に色を乗せ直すのを忘れなくて、そのたいしたことない仕草ひとつを挙げても、可愛いと思える。
「この間田辺くんとね、良いお店見つけたんだ。おデートの下見ついでにでも行く?」
「デートって……」
「行くでしょ」
「行くわよ」
ごみ箱にきちんと分別してから、改めてリナに向き直る。
「やっぱり私もリナみたいだったら良かった」
「あたしみたいだったら、涼平とは一生進展しないよ。そろそろ逃げ腰やめなさい」
「そうよね」
そろそろ、ちゃんと向き合わなくちゃ。
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