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「ん……ぁ……、ごめんなさ、」
「もう一度だ」
 もう一度。そう言われて子猫ちゃんは涙ぐんだ。
 僕だって本当はちゃんとイきたい。でも上手く出来ない。このままではお仕置きをされてしまう。
 子猫ちゃんは必死に御主人様からいつも与えられる快感を思い出した。持ち上げていた尻をソファにぺたりと落としてみる。軽く身体を揺するとカウチソファの肌触りの良い生地が子猫ちゃんの股に擦りついた。ゆらゆらと勝手に腰が揺れる。
 子猫ちゃんは無我夢中でソファに擦り付けた。イきたい。お仕置きこわい。気持ち良い。でもこんな、ソファを使うようなことをしてはまた叱られてしまうだろうか。でももうどうやったら良いのか分からない。
 気持ち良いのは確実に競り上がってくるのに、色んな考えでごちゃ混ぜになった頭では最後の一押しが足りない。
 イきたい。イけない。どうしよう、どうしよう、このままじゃ……
 子猫ちゃんがついに涙を溢しそうになった時、それまでご自分のソファにゆったりと座られていた御主人様がゆっくりと立ち上がられた。子猫ちゃんはビクッと肩を竦めて動きを止めた。
 叱られる。お仕置きをされてしまう。そう思った。
 ところが御主人様は無言で子猫ちゃんの頭もとにお座りになり、子猫ちゃんの顎を持ち上げるようにしてその顔をご自分のほうに向けさせた。ぶたれると思った子猫ちゃんがぎゅっと目を瞑ると、御主人様はそのまま子猫ちゃんの唇にキスをなさった。
「……え、?」
「そのまま、続けなさい」
 それだけ仰って、子猫ちゃんの口の中に舌を差し入れられた。くちゅ、くちゅ、と、わざと音が出るように舌と唾液を絡められて、子猫ちゃんは段々と身体の力が抜けていくのを感じた。そして続けなさいと言われた通りに、また自分のものをソファにゆるゆると擦り付け始めた。
 御主人様にねっとりと口の中を掻き回されて、子猫ちゃんはどんどん気持ち良くなってくる。頭の奥がぼーっとしてきて、腰の辺りがじんわりと甘い痺れを感じてきた時、御主人様はゆっくりと唇をお離しになられた。
「はい、良く出来ました」
「え、……ぁ、」
 御主人様に優しく微笑まれて自分の身体をみると、いつの間にかだらだらと吐精していた。先のほうにどろついた水たまりを作っている。いつの間に出たのか全然分からなかった。
 子猫ちゃんが呆けていると、御主人様はまた子猫ちゃんの顎を掴んでご自分のほうへ顔を向けさせた。
「いくら質の良いものとはいえ、流石にソファに負けるのは癪だったからね」
 にこりとキスの理由を告げられて、子猫ちゃんは赤面した。
「あ、ごめんなさい……あの、上手に出来なくて……」
「仕方がないよ、今日のは少し難しかったね」
「はい……」
「でも頑張っていたから、お仕置きは半分に減らしてあげよう」
「………………え、」
「一人で最後まで出来なかったからね。仕方がないよ。一日って言ったけど、可哀想だから半分にしてあげよう。明日の昼から、そうだな、6時間くらいかな。今日は疲れたろう、ゆっくりシャワーを浴びておいで。それから、今から人様にお見せするための準備をしなければならないから、シャワーの帰りに拘束具を持ってきなさい。自分の好きなものを選んでくると良い。他のものは俺が用意しよう」
「………………あの、御主人様、」
「どうした?」
 子猫ちゃんは焦った。さっきまでとは違う身体の震えが出る。いやだ。いやだ。
 いやだ。いやだ。いやだ。
「言うことを聞けるね?」
「………………やだぁ………………」
 子猫ちゃんが怯えきった震える小声ですがるように呟くと、御主人様は子猫ちゃんの頬を優しく手のひらで包まれた。
「俺の子猫ちゃんはね、お利口さんな筈なんだよ。分かるね」
 御主人様の優しくて、有無を言わせぬ物言いに、子猫ちゃんは逆らうことが出来ない。
「………………  はい、」
「うん。良い子だ」



(了)
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