26 / 60
26話 あきらと慎二 4
しおりを挟む
「キスしてもあれじゃあなあ……」
「え?」
「ところでお前はさあ、一体俺のどこを好きになってしまったわけ?」
「え、キスした?」
「したよ、全然相手にされてないけど。答えろや」
「なら、まあ、いっか」
「いやいや答えろや」
「あ、なにが?」
「だーかーらー、」
変な言い合いが自然にできる。この関係性が一番しっくりくるんだよ。
変わりたくない。
「お前は俺のどこを好きになってしまったんですか」
「ええー、それ答えんの」
慎二はあからさまに嫌そうな顔をした。学生の頃、答えの分からない問題を当てられて板書しろと言われたときみたいな顔だ。それを見て気分が良いと思うのは、俺の心が汚ないからだろうか。
「そうだなあ。いろいろあるけど、」
慎二は言葉を選ぶようにしてゆっくりと喋りながら、それと比例するようにして、ゆっくりと起き上がった。そのまま立ち上がって、ゆらゆら歩きながら俺の前に立ち止まった。
「顔かな」
「顔かよ!」
「うん。そう」
照れなんて微塵もないようないつもの弛い顔で、俺の前にしゃがみこむ。
「笑った顔」
そう言って、俺の左頬を親指で撫でた。
「全然気にしてなかったんだけどさ、ある日急に気づいた。あきらの笑った顔って、すげえ可愛いんだなあって」
……うわあ。
しまったこれ……ガチのやつじゃんかよ。
「一回気になったらあれもこれもってなってさ、可愛いなって思って、そんでもっかい気づいたら好きだった」
からかうつもりが完全に地雷を踏んだらしい。近い。触られちゃってるし。頬に当たる指の感触がこの状況の現実味を際立たせる。目線だけは外したけど、俺今多分相当顔赤くなってる。
なんだこいつ。慎二ってこういう奴だったっけ。なんでそんな恥ずかしいこと普通に言えんのかなこの人。
「あーれぇ、照れた?」
にやにや笑いをしながら目を覗き込もうとしてくる慎二に軽く苛ついて、うるせえよとか悪態を吐きながら肩の辺りを殴った。たいした痛みにはならなかったみたいで、慎二はわざと尻を畳につけてから、声を上げて笑った。
やっぱ嫌だこいつと付き合うとか。
例えばこれが、相手が慎二じゃくて他の男だったら、俺はもう少し上手く立ち回れたかもしれない。相手がどれだけ本気だったとしても、きっと俺は全てを無理矢理冗談にして終わらせたに違いない。なに言ってんの、無理に決まってんじゃん。あんまふざけたこと言うなって。笑ってそれでなかったことにしたはずだ。
でも残念ながら相手はこいつなわけで。お互いの手の内も外も知ってるような間柄相手にそんな真似は通用しないわけで。そういった駆け引きにおいて俺はこいつに勝てる自信は微塵もなく、結果為す術がないからどうにもならないんだ。
「なあ、あきら」
「なに」
「ごめんやっぱ、キスしていい?」
「は?」
なにを言っているんだこいつは。俺今そういうのやだって言わなかったかな。通じなかったかな、ばかだしな、慎二。
唐突すぎて驚いてその顔を見ると、慎二のこの顔はあれだ、至って本気のやつだ。
まじか。
「やだよ」
「いいじゃんか、減るもんじゃないし」
「減るわ、俺の中のなにかが減るわ」
「ちゅってするだけだよ、それ以上しないし」
「お前それ今誰が信用すんの」
「え?」
「ところでお前はさあ、一体俺のどこを好きになってしまったわけ?」
「え、キスした?」
「したよ、全然相手にされてないけど。答えろや」
「なら、まあ、いっか」
「いやいや答えろや」
「あ、なにが?」
「だーかーらー、」
変な言い合いが自然にできる。この関係性が一番しっくりくるんだよ。
変わりたくない。
「お前は俺のどこを好きになってしまったんですか」
「ええー、それ答えんの」
慎二はあからさまに嫌そうな顔をした。学生の頃、答えの分からない問題を当てられて板書しろと言われたときみたいな顔だ。それを見て気分が良いと思うのは、俺の心が汚ないからだろうか。
「そうだなあ。いろいろあるけど、」
慎二は言葉を選ぶようにしてゆっくりと喋りながら、それと比例するようにして、ゆっくりと起き上がった。そのまま立ち上がって、ゆらゆら歩きながら俺の前に立ち止まった。
「顔かな」
「顔かよ!」
「うん。そう」
照れなんて微塵もないようないつもの弛い顔で、俺の前にしゃがみこむ。
「笑った顔」
そう言って、俺の左頬を親指で撫でた。
「全然気にしてなかったんだけどさ、ある日急に気づいた。あきらの笑った顔って、すげえ可愛いんだなあって」
……うわあ。
しまったこれ……ガチのやつじゃんかよ。
「一回気になったらあれもこれもってなってさ、可愛いなって思って、そんでもっかい気づいたら好きだった」
からかうつもりが完全に地雷を踏んだらしい。近い。触られちゃってるし。頬に当たる指の感触がこの状況の現実味を際立たせる。目線だけは外したけど、俺今多分相当顔赤くなってる。
なんだこいつ。慎二ってこういう奴だったっけ。なんでそんな恥ずかしいこと普通に言えんのかなこの人。
「あーれぇ、照れた?」
にやにや笑いをしながら目を覗き込もうとしてくる慎二に軽く苛ついて、うるせえよとか悪態を吐きながら肩の辺りを殴った。たいした痛みにはならなかったみたいで、慎二はわざと尻を畳につけてから、声を上げて笑った。
やっぱ嫌だこいつと付き合うとか。
例えばこれが、相手が慎二じゃくて他の男だったら、俺はもう少し上手く立ち回れたかもしれない。相手がどれだけ本気だったとしても、きっと俺は全てを無理矢理冗談にして終わらせたに違いない。なに言ってんの、無理に決まってんじゃん。あんまふざけたこと言うなって。笑ってそれでなかったことにしたはずだ。
でも残念ながら相手はこいつなわけで。お互いの手の内も外も知ってるような間柄相手にそんな真似は通用しないわけで。そういった駆け引きにおいて俺はこいつに勝てる自信は微塵もなく、結果為す術がないからどうにもならないんだ。
「なあ、あきら」
「なに」
「ごめんやっぱ、キスしていい?」
「は?」
なにを言っているんだこいつは。俺今そういうのやだって言わなかったかな。通じなかったかな、ばかだしな、慎二。
唐突すぎて驚いてその顔を見ると、慎二のこの顔はあれだ、至って本気のやつだ。
まじか。
「やだよ」
「いいじゃんか、減るもんじゃないし」
「減るわ、俺の中のなにかが減るわ」
「ちゅってするだけだよ、それ以上しないし」
「お前それ今誰が信用すんの」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
婚約破棄をしたいので悪役令息になります
久乃り
BL
ほげほげと明るいところに出てきたら、なんと前世の記憶を持ったまま生まれ変わっていた。超絶美人のママのおっぱいを飲めるなんて幸せでしかありません。なんて思っていたら、なんとママは男!
なんとこの世界、男女比が恐ろしく歪、圧倒的女性不足だった。貴族は魔道具を使って男同士で結婚して子を成すのが当たり前と聞かされて絶望。更に入学前のママ友会で友だちを作ろうとしたら何故だか年上の男の婚約者が出来ました。
そしてなんと、中等部に上がるとここが乙女ゲームの世界だと知ってしまう。それならこの歪な男女比も納得。主人公ちゃんに攻略されて?婚約破棄されてみせる!と頑張るセレスティンは主人公ちゃんより美人なのであった。
注意:作者的にR15と思う箇所には※をつけています。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
僕の兄は◯◯です。
山猫
BL
容姿端麗、才色兼備で周囲に愛される兄と、両親に出来損ない扱いされ、疫病除けだと存在を消された弟。
兄の監視役兼影のお守りとして両親に無理やり決定づけられた有名男子校でも、異性同性関係なく堕としていく兄を遠目から見守って(鼻ほじりながら)いた弟に、急な転機が。
「僕の弟を知らないか?」
「はい?」
これは王道BL街道を爆走中の兄を躱しつつ、時には巻き込まれ、時にはシリアス(?)になる弟の観察ストーリーである。
文章力ゼロの思いつきで更新しまくっているので、誤字脱字多し。広い心で閲覧推奨。
ちゃんとした小説を望まれる方は辞めた方が良いかも。
ちょっとした笑い、息抜きにBLを好む方向けです!
ーーーーーーーー✂︎
この作品は以前、エブリスタで連載していたものです。エブリスタの投稿システムに慣れることが出来ず、此方に移行しました。
今後、こちらで更新再開致しますのでエブリスタで見たことあるよ!って方は、今後ともよろしくお願い致します。
【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
侯爵家の令嬢であるシエルは、愛人との間に生まれたせいで、父や義母、異母姉妹から酷い仕打ちをされる生活を送っていた。
そんなシエルには婚約者がいた。まるで本物の兄のように仲良くしていたが、ある日突然彼は亡くなってしまった。
悲しみに暮れるシエル。そこに姉のアイシャがやってきて、とんでもない発言をした。
「ワタクシ、とある殿方と真実の愛に目覚めましたの。だから、今ワタクシが婚約している殿方との結婚を、あなたに代わりに受けさせてあげますわ」
こうしてシエルは、必死の抗議も虚しく、身勝手な理由で、新しい婚約者の元に向かうこととなった……横暴で散々虐げてきた家族に、復讐を誓いながら。
新しい婚約者は、社交界でとても恐れられている相手。うまくやっていけるのかと不安に思っていたが、なぜかとても溺愛されはじめて……!?
⭐︎全三十九話、すでに完結まで予約投稿済みです。11/12 HOTランキング一位ありがとうございます!⭐︎
運命の見つけ方
花町 シュガー
BL
「やっと見つけた、運命の人よ」
ーーさぁ。あなたはどの薔薇が好きですか?
***
・設定に沿って薔薇の花言葉15こ分の話を詰めます。
(短編×15の流れ)
・更新はマイペース且つ気まぐれ。
・コメント・イラストご自由にお願いします〜
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる