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4話 へんな人たち 4
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「あ、社長? ごめん俺今起きた。ごめん。10時には行くわ。うんごめん。じゃ」
くっそ寝坊したじゃねえかよ。
あれもこれも全部慎二のせいだ。液晶画面にでかでかと主張する時計。
「9時じゃん」
やべー。ま、今日は確かまだ確定した仕事なかったはずだし、いいか。社長も別に怒ってなかったしな。朝飯コンビニで買ってこ。
ワンルームの部屋の中はいつも通りだ。窓から風が入ってきてカーテンを揺らしている。壁際の小さめのテレビはつける気にならない。取り敢えず会社の作業着に着替えて、顔洗って歯みがきして、眩しすぎる朝日に向かって玄関ドアを開けた。
ボロいドアノブに鍵を閉めていると、ガチャリと右隣の部屋のドアが開いた。
そういや会ったことねえんだよな。生活時間帯が違うんだろうけど、こんな時間からお出掛けとはどんな生活してんだか。
自分のことを棚上げにしてそう思いながら好奇心半分に隣のドアに目をやると、中から出てきたのは昨夜の厳ついオッサンだった。髪は整えてるけど無精髭はそのまんま。Tシャツにジーパンで、なんっつー楽そうな格好。
「戸締まりしとけよ」
オッサンが中に向かって声をかける。
「取るもんないわよー。あたし今夜店に顔出しに……あれ?」
続けて出てきたのは、いかにも寝起きといわんばかりの装いの、昨夜のお姉さん、もといエリカさんだった。昨日の服そのまんま。
「昨日のお兄さんじゃん」
まじか。
隣の部屋だったんか。
「おはようございます。隣だったんですね」
取り敢えず朝の挨拶。
おはよう、奇遇だね、と返したエリカさんの声は、昨夜聞いたよりも少しだけ掠れていた。
「おう青年。おはよう。今から仕事か」
見た目にそぐわず笑顔の爽やかなオッサンだな。
何歳だろこの人。結構年上に見える。30代後半、40代かもしれない。
「ああ、はい、寝坊しちまって。そちらはお出掛けですかっていうか、なんかすいませんでした、昨日」
取り敢えずやっぱキスしたことは謝るべきかと思って、軽く頭を下げると、二人はなにが? とでも言いたそうにぽかんとした。
え、なにもう覚えてないわけ? この人ら。
「あ、もしかしてちゅーのこと? 全然気にしてないよ、ねえ陽平」
エリカさんが笑うとオッサンも軽くああ、と返す。
「あ、そっすか」
もうちょっと気にしてくれよ、と思わないでもなかったがまあいいか。へんな人たちだ。
「っていうかね、ちょっと待って」
エリカさんは途端になにか考え込むように額に指をつけた。昨日も思ったけど今改めて見てつくづく思う。すっげえ美人だな、この人。っつーか俺仕事行きたいんだけどな。
「昨日の……お隣さん……」
ぶつぶつと呟くエリカさんに、オッサンもとい陽平さんは「あ!」とデカイ声を上げてエリカさんを見た。エリカさんまでが同じように「あああ!」とデカイ声を出して、それから二人同時に俺を見て指を指した。
「「昨日のケツ掘られてたほうだ!」」
「…………………………はい?」
くっそ寝坊したじゃねえかよ。
あれもこれも全部慎二のせいだ。液晶画面にでかでかと主張する時計。
「9時じゃん」
やべー。ま、今日は確かまだ確定した仕事なかったはずだし、いいか。社長も別に怒ってなかったしな。朝飯コンビニで買ってこ。
ワンルームの部屋の中はいつも通りだ。窓から風が入ってきてカーテンを揺らしている。壁際の小さめのテレビはつける気にならない。取り敢えず会社の作業着に着替えて、顔洗って歯みがきして、眩しすぎる朝日に向かって玄関ドアを開けた。
ボロいドアノブに鍵を閉めていると、ガチャリと右隣の部屋のドアが開いた。
そういや会ったことねえんだよな。生活時間帯が違うんだろうけど、こんな時間からお出掛けとはどんな生活してんだか。
自分のことを棚上げにしてそう思いながら好奇心半分に隣のドアに目をやると、中から出てきたのは昨夜の厳ついオッサンだった。髪は整えてるけど無精髭はそのまんま。Tシャツにジーパンで、なんっつー楽そうな格好。
「戸締まりしとけよ」
オッサンが中に向かって声をかける。
「取るもんないわよー。あたし今夜店に顔出しに……あれ?」
続けて出てきたのは、いかにも寝起きといわんばかりの装いの、昨夜のお姉さん、もといエリカさんだった。昨日の服そのまんま。
「昨日のお兄さんじゃん」
まじか。
隣の部屋だったんか。
「おはようございます。隣だったんですね」
取り敢えず朝の挨拶。
おはよう、奇遇だね、と返したエリカさんの声は、昨夜聞いたよりも少しだけ掠れていた。
「おう青年。おはよう。今から仕事か」
見た目にそぐわず笑顔の爽やかなオッサンだな。
何歳だろこの人。結構年上に見える。30代後半、40代かもしれない。
「ああ、はい、寝坊しちまって。そちらはお出掛けですかっていうか、なんかすいませんでした、昨日」
取り敢えずやっぱキスしたことは謝るべきかと思って、軽く頭を下げると、二人はなにが? とでも言いたそうにぽかんとした。
え、なにもう覚えてないわけ? この人ら。
「あ、もしかしてちゅーのこと? 全然気にしてないよ、ねえ陽平」
エリカさんが笑うとオッサンも軽くああ、と返す。
「あ、そっすか」
もうちょっと気にしてくれよ、と思わないでもなかったがまあいいか。へんな人たちだ。
「っていうかね、ちょっと待って」
エリカさんは途端になにか考え込むように額に指をつけた。昨日も思ったけど今改めて見てつくづく思う。すっげえ美人だな、この人。っつーか俺仕事行きたいんだけどな。
「昨日の……お隣さん……」
ぶつぶつと呟くエリカさんに、オッサンもとい陽平さんは「あ!」とデカイ声を上げてエリカさんを見た。エリカさんまでが同じように「あああ!」とデカイ声を出して、それから二人同時に俺を見て指を指した。
「「昨日のケツ掘られてたほうだ!」」
「…………………………はい?」
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