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自滅王子は容赦なく邪魔者を排除するようです※王子視点
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「レオン、君をジュン・アルガス排除係に任命するよ」
「え!? 俺をですか?」
「ジュンは僕と君に恥をかかせた。このまま黙って見過ごせるわけないじゃないか」
レオンを宮廷の寝室に招き、僕は邪魔者の排除をレオンに命じた。
一人で色々考えていたけど、さすがにジュンを一人で排除するのは無理だって結論に至ったんだ。
だって、あいつは頭が切れるし腕っぷしもバカみたいに強い。
僕だけじゃどうにもならないよ。
もっと力が自由自在に使えたらいいんだけど、なぜか不発になることもあるし。
「……陛下。ジュンは強いです。真っ向勝負じゃ手も足も出ない。どうすればいいんでしょうか」
「分かってるよ。君一人じゃ心許ないよね」
それは分かる。
よーく理解しているつもり。
「実は、ひとり心当たりがあるんだ。政治犯として収容されてる人物だけど、戦闘に関してはジュンにも劣ってない」
「まさか、ガルムを出すんですか? それには少し反対ですよ。議会を敵に回すことにもなりますし」
「お前、反逆罪で死にたいのか?」
「え、いえ! そのようなことは!」
「じゃあ素直に協力しろよ。王様であるこの僕が命令してるんだよ」
「は……。申し訳ありません」
このバカは、ちっとも反省から学ばないな。
「お前には期待してるんだ。もし、ジュンを無事に排除できたら褒賞をやろうか。欲しいものがあるなら何でもやるよ。遠慮なくいいな」
「で、では、メイドを一人頂きたいのですが」
「ああ、カレンのことかな」
僕が時間を巻き戻して何回も抱いてる子だ。
「いえ、レベッカの方です」
「はあ、別にいいけどあんなのがいいの?」
レベッカはショートカットで女らしさのあまりない子だ。
胸も薄いし性格も男勝りで、どこがいいのか分からない。
「ハツラツとしていて、俺とは正反対の性格なんですが、そこがいいといいますか」
「へえ。ようするに綺麗なものを汚く汚してやりたいってことか。まあ、その気持ちはよく分かるよ。リリナなんかを見てると特にそう思うし」
いい性格してるなぁ、こいつ。
「え、いや、そういうわけじゃ……」
「お前さあ、中途半端に正義でいようとか思うのやめろよ」
「……う」
「自分を誤魔化すのはやめた方がいいよ。別に悪でもいいじゃん。いっそ開き直った方が自分を追い詰めなくていいと思うんだ。この世界は人を型に嵌めようとするけどさ、腐った奴は頑張ったって光にはなれないんだよ。だから、悪い人間でもいいんだって開き直ろうぜ? 僕と一緒にさ」
「はい……。俺は、陛下と共に闇の道を突き進みます」
ふふ、だから別に頑張らなくてもいいんだってば。
型に嵌まるのはやめようぜ。
世の中、好きに生きればそれだけで勝ち組なんだよ。
「闇に落ちた者同士、ありのままでいこうや」
ポンポンとレオンの肩を叩いてやる。
このあとレベッカを抱きにいってもいいんだけど、さすがにそれは止めといてやろうと思った。レオンは僕の仲間になったわけだし。
「それで、ジュンを排除する方法なんですが、ガルムと俺で襲撃するってんじゃ、少し弱い気はしますよね」
「うんうん。それには同意」
「……人質を取るとかどうでしょうか」
「良い感じに悪に染まってきたねぇ。まー、ただそれだと難しいかな。ジュンはリリナに付きっきりだろうし、あいつ、スラムの人間だから弱味がないんだよ。仲間だっていざとなったら冷徹に切り捨てるだろうし」
つくづく弱点がない奴だ。
それだけ何も持ってないってことだけど。
「どうすればいいでしょうね。いっそ、屋敷に火を放つとか」
「嫌いじゃないよ。だけどリリナまで死んだら元も子もない。もっと真面目に考えてくれないかなぁ。レベッカが懸かってるんだろー?」
「毒殺ってのはどうですかね。リリナ嬢を巻き込まないようタイミングは図った方が良さそうですが、うまくいけば戦わずにやれる」
「いい線だねぇ。隠密でも使ってみるか」
「情報収集に長けた暗殺部隊、噂には聞いてましたが実在したんですか……」
「宰相の子飼いの部隊だけどね。ジュンが僕の婚約者に手を出してるのは事実だし、うまく言いくるめて利用させてもらうよ。成功したら、君にレベッカをあげるね」
「ありがとうございます!」
さてさて、どうやって毒殺してやろうか。
リリナに危険がないよう、タイミングを計ってやらないとね。
(苦痛にもがくお前の顔を見れるのが、今から楽しみだよ)
王の力を手に入れてから気づいたけど、僕の人間性はドブネズミ以下らしい。
王子だ王様だ王族だって周囲は僕を光物みたいに扱うけど、僕はそんな上等なもんじゃない。
民の為の政策なんて何一つ思いつかないし、力を使ってやることは自分の欲望を解放することだけだ。
でもさあ、僕がこういう風に育ってしまったのって、別に僕の責任じゃないでしょ?
気づいたらこんな風になっちゃってたんだし。
だったら無理に自分を抑え込むより、自分らしく生きた方がいいと思うんだ。
その方が、ほら、機嫌がよければ僕にも世の為人の為に何かしてやろうっていう気持ちがこみ上げてくるかもしれないし。
今は良い王様になる為の充電期間ってことで……。
機嫌が良くなれるようたっぷりと悪いことをしてやろう。
手始めに、ジュンには死んでもらってリリナは僕のペットにする。
気に入らない奴らは全員殺して、議会には僕の息のかかった貴族だけを入れる。
革命派は適当に武装蜂起しようとしてたってことで証拠をでっちあげて軍で制圧、見せしめになるよう派手に親類縁者まで首を並べて、その後のことは……まあその時に考えればいっか。
ひとまず僕は宰相に相談して、ジュン・アルガスに暗殺を仕掛けることにした。
「え!? 俺をですか?」
「ジュンは僕と君に恥をかかせた。このまま黙って見過ごせるわけないじゃないか」
レオンを宮廷の寝室に招き、僕は邪魔者の排除をレオンに命じた。
一人で色々考えていたけど、さすがにジュンを一人で排除するのは無理だって結論に至ったんだ。
だって、あいつは頭が切れるし腕っぷしもバカみたいに強い。
僕だけじゃどうにもならないよ。
もっと力が自由自在に使えたらいいんだけど、なぜか不発になることもあるし。
「……陛下。ジュンは強いです。真っ向勝負じゃ手も足も出ない。どうすればいいんでしょうか」
「分かってるよ。君一人じゃ心許ないよね」
それは分かる。
よーく理解しているつもり。
「実は、ひとり心当たりがあるんだ。政治犯として収容されてる人物だけど、戦闘に関してはジュンにも劣ってない」
「まさか、ガルムを出すんですか? それには少し反対ですよ。議会を敵に回すことにもなりますし」
「お前、反逆罪で死にたいのか?」
「え、いえ! そのようなことは!」
「じゃあ素直に協力しろよ。王様であるこの僕が命令してるんだよ」
「は……。申し訳ありません」
このバカは、ちっとも反省から学ばないな。
「お前には期待してるんだ。もし、ジュンを無事に排除できたら褒賞をやろうか。欲しいものがあるなら何でもやるよ。遠慮なくいいな」
「で、では、メイドを一人頂きたいのですが」
「ああ、カレンのことかな」
僕が時間を巻き戻して何回も抱いてる子だ。
「いえ、レベッカの方です」
「はあ、別にいいけどあんなのがいいの?」
レベッカはショートカットで女らしさのあまりない子だ。
胸も薄いし性格も男勝りで、どこがいいのか分からない。
「ハツラツとしていて、俺とは正反対の性格なんですが、そこがいいといいますか」
「へえ。ようするに綺麗なものを汚く汚してやりたいってことか。まあ、その気持ちはよく分かるよ。リリナなんかを見てると特にそう思うし」
いい性格してるなぁ、こいつ。
「え、いや、そういうわけじゃ……」
「お前さあ、中途半端に正義でいようとか思うのやめろよ」
「……う」
「自分を誤魔化すのはやめた方がいいよ。別に悪でもいいじゃん。いっそ開き直った方が自分を追い詰めなくていいと思うんだ。この世界は人を型に嵌めようとするけどさ、腐った奴は頑張ったって光にはなれないんだよ。だから、悪い人間でもいいんだって開き直ろうぜ? 僕と一緒にさ」
「はい……。俺は、陛下と共に闇の道を突き進みます」
ふふ、だから別に頑張らなくてもいいんだってば。
型に嵌まるのはやめようぜ。
世の中、好きに生きればそれだけで勝ち組なんだよ。
「闇に落ちた者同士、ありのままでいこうや」
ポンポンとレオンの肩を叩いてやる。
このあとレベッカを抱きにいってもいいんだけど、さすがにそれは止めといてやろうと思った。レオンは僕の仲間になったわけだし。
「それで、ジュンを排除する方法なんですが、ガルムと俺で襲撃するってんじゃ、少し弱い気はしますよね」
「うんうん。それには同意」
「……人質を取るとかどうでしょうか」
「良い感じに悪に染まってきたねぇ。まー、ただそれだと難しいかな。ジュンはリリナに付きっきりだろうし、あいつ、スラムの人間だから弱味がないんだよ。仲間だっていざとなったら冷徹に切り捨てるだろうし」
つくづく弱点がない奴だ。
それだけ何も持ってないってことだけど。
「どうすればいいでしょうね。いっそ、屋敷に火を放つとか」
「嫌いじゃないよ。だけどリリナまで死んだら元も子もない。もっと真面目に考えてくれないかなぁ。レベッカが懸かってるんだろー?」
「毒殺ってのはどうですかね。リリナ嬢を巻き込まないようタイミングは図った方が良さそうですが、うまくいけば戦わずにやれる」
「いい線だねぇ。隠密でも使ってみるか」
「情報収集に長けた暗殺部隊、噂には聞いてましたが実在したんですか……」
「宰相の子飼いの部隊だけどね。ジュンが僕の婚約者に手を出してるのは事実だし、うまく言いくるめて利用させてもらうよ。成功したら、君にレベッカをあげるね」
「ありがとうございます!」
さてさて、どうやって毒殺してやろうか。
リリナに危険がないよう、タイミングを計ってやらないとね。
(苦痛にもがくお前の顔を見れるのが、今から楽しみだよ)
王の力を手に入れてから気づいたけど、僕の人間性はドブネズミ以下らしい。
王子だ王様だ王族だって周囲は僕を光物みたいに扱うけど、僕はそんな上等なもんじゃない。
民の為の政策なんて何一つ思いつかないし、力を使ってやることは自分の欲望を解放することだけだ。
でもさあ、僕がこういう風に育ってしまったのって、別に僕の責任じゃないでしょ?
気づいたらこんな風になっちゃってたんだし。
だったら無理に自分を抑え込むより、自分らしく生きた方がいいと思うんだ。
その方が、ほら、機嫌がよければ僕にも世の為人の為に何かしてやろうっていう気持ちがこみ上げてくるかもしれないし。
今は良い王様になる為の充電期間ってことで……。
機嫌が良くなれるようたっぷりと悪いことをしてやろう。
手始めに、ジュンには死んでもらってリリナは僕のペットにする。
気に入らない奴らは全員殺して、議会には僕の息のかかった貴族だけを入れる。
革命派は適当に武装蜂起しようとしてたってことで証拠をでっちあげて軍で制圧、見せしめになるよう派手に親類縁者まで首を並べて、その後のことは……まあその時に考えればいっか。
ひとまず僕は宰相に相談して、ジュン・アルガスに暗殺を仕掛けることにした。
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