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自滅王子は思わぬ反撃を喰らうようです※王子視点
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時間を意のままに操ることができる。
わざと割ったティーカップが、容易く元の状態へ戻る。
神にも等しい王になった僕は、さっそくリリナを抱く為に学園へ向かった。
力の使い方は学んだわけでもないのに頭の中に入っていて、僕はリリナをどういう手段で抱いてやろうか考えるのが楽しくて仕方なかった。
(うーん……。色々試してたらお昼になっちゃったな)
食堂へ向かうとリリナの背中を見つけた。
僕は迷わず彼女の下へ向かい、後ろからその身体を抱きしめた。
そして、即座に肘内を喰らった。
「がはっ……お、お前!」
「王子……殿下」
「殿下じゃない! 僕は現国王だぞ!」
リリナの失礼な物言いにイラっと来る。
誰もが僕を敬っているのに、リリナだけは変わらず僕を見下しているようだ。
「リリナ、君には罰を与える必要があるな。一緒にサロンに来てもらおうか」
「え、嫌ですけど」
「レオン、こいつを捕えろ」
近衛として連れてきたレオンに命じる。
レオンは「了解しました!」と威勢のいい声をあげて、リリナの細腕を掴んだ。
「痛いっ」
「ならば黙ってついてこい。未来の王として、君には僕の妻になるという自覚を育んでもらう」
「離してください! 嫌です! 誰か助けて!」
「レオン、離す必要はない。僕は国王だ。国王の命令は絶対だ」
「いや! こんなの……!」
リリナが叫ぶが誰も助けになど入らない。
僕は国王だし、王命に逆らえば反逆罪で死刑だ。
第一、ジュン・アルガスはリリナに関する記憶を失っているはずだし、誰も助けになど入らな――
「うああっ」
…………え?
見れば、近衛騎士のレオンが顔面をぶたれて床に伸びている。
(……あ、ありえない!)
リリナを助けに入ったのは他でもない、ジュン・アルガスその人だった。
リリナに関する記憶を失い、王命に誰も逆らえるはずもないこの場で、何故こいつはノコノコ首を突っ込んでくるんだ!? 全くこれっぽっちも理解できない! まさか自滅願望でもあるのか!?
「陛下。彼女は嫌がっているように見受けられますが」
「だ……。だからどうした。この俺の命令に逆らう気か!?」
「逆らうなど恐れ多いことです。ただ、私は彼女への振る舞いの是非を確認しているだけです」
改めて周囲を見やれば、貴族や他の王族からの冷たい視線が突き刺さる。
クソ、さすがに場所は考える必要があったか。
だが、僕には時間を巻き戻すことだってできる。
その気になれば……。と、力を使おうとするが何も変化が起こらないことに気がつく。
(……バカな! どうして時間が巻き戻せないんだよ!)
何かに阻害されているらしく、うまく力が働いてくれない。
「陛下、もしかして迷っていらっしゃるのですか? でしたら良い解決方法がありますが」
「な、何だ! 申してみよ!」
「この場を神明裁判にて解決するのです。神の加護を受けている陛下であれば、恐らくより正しい答えが導き出されることでしょう。私が負けたらリリナ嬢に躾を行う。私が勝ったら――」
(こ、こいつと神明裁判などすれば100パーセント負ける! ガルムさえ打ち破った悪鬼だぞコイツは!)
ジュンの底冷えするような瞳を直視できない。
こいつと向かい合っているだけで冷や汗が止まらなくなる。
この男は相手が王であろうが神であろうが躊躇なく排除できる人間だ!
これ以上場を長引かせるのはまずい!
「だ、誰かリリナを医務室へ連れていってやれ! レオンが、強く腕を掴み過ぎていたようだ! レオンよ、お前は猛省せよ! 淑女の扱い方をまるで分かっていない! 痣が残ったらどうするのだ!」
「私が彼女を医務室へ運びます。立てますか?」
「た、頼んだぞ! ジュン・アルガス!」
何とか場をやり過ごして引き下がる。
(……何が起きてやがる)
神の力を借りたはずなのに、時間が巻き戻せないなんてことがあるのか?
何かが力を阻害していたのか……?
それとも、力の発動に条件があったりするのか?
(父上が存命だったら説明してもらえたのに!!! 勝手に死ぬなよ役立たずが!)
とにかく、先にリリナを落とすんじゃなくて、ジュン・アルガスに対処する必要があった。
次の標的を定めて、僕は独り策を練り始めた。
わざと割ったティーカップが、容易く元の状態へ戻る。
神にも等しい王になった僕は、さっそくリリナを抱く為に学園へ向かった。
力の使い方は学んだわけでもないのに頭の中に入っていて、僕はリリナをどういう手段で抱いてやろうか考えるのが楽しくて仕方なかった。
(うーん……。色々試してたらお昼になっちゃったな)
食堂へ向かうとリリナの背中を見つけた。
僕は迷わず彼女の下へ向かい、後ろからその身体を抱きしめた。
そして、即座に肘内を喰らった。
「がはっ……お、お前!」
「王子……殿下」
「殿下じゃない! 僕は現国王だぞ!」
リリナの失礼な物言いにイラっと来る。
誰もが僕を敬っているのに、リリナだけは変わらず僕を見下しているようだ。
「リリナ、君には罰を与える必要があるな。一緒にサロンに来てもらおうか」
「え、嫌ですけど」
「レオン、こいつを捕えろ」
近衛として連れてきたレオンに命じる。
レオンは「了解しました!」と威勢のいい声をあげて、リリナの細腕を掴んだ。
「痛いっ」
「ならば黙ってついてこい。未来の王として、君には僕の妻になるという自覚を育んでもらう」
「離してください! 嫌です! 誰か助けて!」
「レオン、離す必要はない。僕は国王だ。国王の命令は絶対だ」
「いや! こんなの……!」
リリナが叫ぶが誰も助けになど入らない。
僕は国王だし、王命に逆らえば反逆罪で死刑だ。
第一、ジュン・アルガスはリリナに関する記憶を失っているはずだし、誰も助けになど入らな――
「うああっ」
…………え?
見れば、近衛騎士のレオンが顔面をぶたれて床に伸びている。
(……あ、ありえない!)
リリナを助けに入ったのは他でもない、ジュン・アルガスその人だった。
リリナに関する記憶を失い、王命に誰も逆らえるはずもないこの場で、何故こいつはノコノコ首を突っ込んでくるんだ!? 全くこれっぽっちも理解できない! まさか自滅願望でもあるのか!?
「陛下。彼女は嫌がっているように見受けられますが」
「だ……。だからどうした。この俺の命令に逆らう気か!?」
「逆らうなど恐れ多いことです。ただ、私は彼女への振る舞いの是非を確認しているだけです」
改めて周囲を見やれば、貴族や他の王族からの冷たい視線が突き刺さる。
クソ、さすがに場所は考える必要があったか。
だが、僕には時間を巻き戻すことだってできる。
その気になれば……。と、力を使おうとするが何も変化が起こらないことに気がつく。
(……バカな! どうして時間が巻き戻せないんだよ!)
何かに阻害されているらしく、うまく力が働いてくれない。
「陛下、もしかして迷っていらっしゃるのですか? でしたら良い解決方法がありますが」
「な、何だ! 申してみよ!」
「この場を神明裁判にて解決するのです。神の加護を受けている陛下であれば、恐らくより正しい答えが導き出されることでしょう。私が負けたらリリナ嬢に躾を行う。私が勝ったら――」
(こ、こいつと神明裁判などすれば100パーセント負ける! ガルムさえ打ち破った悪鬼だぞコイツは!)
ジュンの底冷えするような瞳を直視できない。
こいつと向かい合っているだけで冷や汗が止まらなくなる。
この男は相手が王であろうが神であろうが躊躇なく排除できる人間だ!
これ以上場を長引かせるのはまずい!
「だ、誰かリリナを医務室へ連れていってやれ! レオンが、強く腕を掴み過ぎていたようだ! レオンよ、お前は猛省せよ! 淑女の扱い方をまるで分かっていない! 痣が残ったらどうするのだ!」
「私が彼女を医務室へ運びます。立てますか?」
「た、頼んだぞ! ジュン・アルガス!」
何とか場をやり過ごして引き下がる。
(……何が起きてやがる)
神の力を借りたはずなのに、時間が巻き戻せないなんてことがあるのか?
何かが力を阻害していたのか……?
それとも、力の発動に条件があったりするのか?
(父上が存命だったら説明してもらえたのに!!! 勝手に死ぬなよ役立たずが!)
とにかく、先にリリナを落とすんじゃなくて、ジュン・アルガスに対処する必要があった。
次の標的を定めて、僕は独り策を練り始めた。
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