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10 殿下、期待してたんですか?
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「殿下、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「礼には及ばない。皆もいつも通り楽にしてくれ」
週末、殿下は護衛のニコラを連れてやってきました。
彼は私たちの二つ上の騎士で、私にとっては兄代わりのような人です。
「一緒にお邪魔して悪いな。仕事上、どうしてもこいつを一人にはできなくてな」
「……来るなと言ったんだが勝手についてきたんだ」
「仕事だから仕方なくだ。悪く思うなって」
文句を言いつつも、二人はとても仲が良さそうです。
「とはいえ、本当に二人の邪魔をするつもりもないからな。庭園でも散歩してきていいか?」
「……おい。一応護衛してる振りくらいしなくていいのか?」
「構わないさ。何かあったら悲鳴でもあげてくれ。すぐに参上する」
「分かった。好きにしろ」
「それじゃ、また後でな」
そう言ってニコラは本当に行ってしまいました。
「あいつなりに気を利かせてくれたんだろうな」
「そうなんですね。リアの家族はエミリーしか応援してくれないです……」
「いや、それについてはリアの責任じゃない。俺が冷たい態度を取っていたせいだ」
「お二人とも、部屋で話されては?」
「あ、ああ、そうだな。すまない。立ち話に付き合わせてしまった」
殿下を私の部屋に連れていきました。
二人きりになると、殿下は急に口数が減ってしまいました。
「どうされたんですか?」
「いや、部屋にくるとつい意識をしてしまってな」
「今日はさすがにエッチしませんから安心してください」
「あ、ああ……。そうか……。うん」
(あれ? 殿下、期待してたんですか?)
「護衛の騎士がいつ戻ってくるかも分からないのに、リアを抱きたいと思ってたんですか?」
「いや、違う。そんなわけないだろ」
「クラリスさんを撃退した時と違って勢いがありませんねぇ。リアにどうして欲しいか仰っていただけたら、ヌキヌキしてさしあげますよ?」
「お、俺は……」
殿下の葛藤が手に取るように分かります。
「俺は、可愛いリアとたくさんエッチがしたくてここに来たんだ……!」
「よう、邪魔するつもりはないんだが……え?」
最悪なタイミングでニコラが戻って来ましたぁー!!!!
殿下は真っ赤な顔で俯いています!
「な、なんか悪いな。俺はただ、メレーヌから預かってたクッキーと手紙を渡したかっただけなんだ。ほら、お前の姉貴もリアに会いたがってたからよ! もし渡しそびれたりしたらとんでもねえ目に遭うと思って! それにしても、そうか。ヴァレールも関係を進展させようと頑張ってたんだな。一つアドバイスするなら、それなりのムードも必要だと思うぞ? あんまりストレートに伝えすぎるのは……」
「うぜえからお前出てけよ……! 死ね!」
私は初めて殿下が暴言を吐いてる姿を見ました。
彼の新たな一面が見れて大満足です。
ちなみに殿下は髪を掻き毟ってもだえ苦しんでいました。
「礼には及ばない。皆もいつも通り楽にしてくれ」
週末、殿下は護衛のニコラを連れてやってきました。
彼は私たちの二つ上の騎士で、私にとっては兄代わりのような人です。
「一緒にお邪魔して悪いな。仕事上、どうしてもこいつを一人にはできなくてな」
「……来るなと言ったんだが勝手についてきたんだ」
「仕事だから仕方なくだ。悪く思うなって」
文句を言いつつも、二人はとても仲が良さそうです。
「とはいえ、本当に二人の邪魔をするつもりもないからな。庭園でも散歩してきていいか?」
「……おい。一応護衛してる振りくらいしなくていいのか?」
「構わないさ。何かあったら悲鳴でもあげてくれ。すぐに参上する」
「分かった。好きにしろ」
「それじゃ、また後でな」
そう言ってニコラは本当に行ってしまいました。
「あいつなりに気を利かせてくれたんだろうな」
「そうなんですね。リアの家族はエミリーしか応援してくれないです……」
「いや、それについてはリアの責任じゃない。俺が冷たい態度を取っていたせいだ」
「お二人とも、部屋で話されては?」
「あ、ああ、そうだな。すまない。立ち話に付き合わせてしまった」
殿下を私の部屋に連れていきました。
二人きりになると、殿下は急に口数が減ってしまいました。
「どうされたんですか?」
「いや、部屋にくるとつい意識をしてしまってな」
「今日はさすがにエッチしませんから安心してください」
「あ、ああ……。そうか……。うん」
(あれ? 殿下、期待してたんですか?)
「護衛の騎士がいつ戻ってくるかも分からないのに、リアを抱きたいと思ってたんですか?」
「いや、違う。そんなわけないだろ」
「クラリスさんを撃退した時と違って勢いがありませんねぇ。リアにどうして欲しいか仰っていただけたら、ヌキヌキしてさしあげますよ?」
「お、俺は……」
殿下の葛藤が手に取るように分かります。
「俺は、可愛いリアとたくさんエッチがしたくてここに来たんだ……!」
「よう、邪魔するつもりはないんだが……え?」
最悪なタイミングでニコラが戻って来ましたぁー!!!!
殿下は真っ赤な顔で俯いています!
「な、なんか悪いな。俺はただ、メレーヌから預かってたクッキーと手紙を渡したかっただけなんだ。ほら、お前の姉貴もリアに会いたがってたからよ! もし渡しそびれたりしたらとんでもねえ目に遭うと思って! それにしても、そうか。ヴァレールも関係を進展させようと頑張ってたんだな。一つアドバイスするなら、それなりのムードも必要だと思うぞ? あんまりストレートに伝えすぎるのは……」
「うぜえからお前出てけよ……! 死ね!」
私は初めて殿下が暴言を吐いてる姿を見ました。
彼の新たな一面が見れて大満足です。
ちなみに殿下は髪を掻き毟ってもだえ苦しんでいました。
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