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44 貴族
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ユキとの愛情を確かめあって、俺は満足した。
新しく恋人になったユキは、引っ越しとかの為に家に帰した。
荷物はないからそのまま本邸に向かう予定だ。
俺の方はデートの続きで、今は服飾店に来ている。
「わあ、このドレス可愛いです。あ、こっちのネックレスもいいですね!」
「全て買おう。リンネ、遠慮することはないからな」
「はぁいっ」
リンネに関しては放置されてたことで愛情に飢えまくってる感じだ。
「平和ですね」
エメリスの方はのほほんとしてる。
「そういえば、アイス様達は連れてこなくて良かったんですか?」
「これからスピリタニアに行く予定なんだが、その前に色々画策してることがあってな。今はその準備で手が放せないんだ」
――その分、夜はべったり甘えられてる気がする。
「皆さん忙しいんですね。私もお仕事とか増やした方がいいんでしょうか?」
「いや、貴重な便器役もするからな。傍にいてもらわないと困る」
「なるほど。もっと役に立てると嬉しいんですけど」
「ハジメは毎日喜んでると思うよ」
「……便器でも傍にいれるだけいいでしょ」
「リンネ、時間止めて一カ月くらい一緒にいるか?」
たまにリンネが鬼の形相になって怖い。
俺が提案すると、しかし彼女はニッコリ笑顔で首を横に振った。
「まだまだ免罪符は渡しませんからね」
当面、心からの許しはなさそうだ。
長い目でケアしていこう。
俺は店内のドレスを色々買い上げた。何着か二人にもプレゼントしたが、メインはリンネへのプレゼントだ。
少しでもリンネが満足してくれると嬉しいな。
「邪魔したな、フェルマン」
「いえいえ。とんでもないです」
服飾店の主に金貨を握らせる。これからも贔屓にさせてくれという挨拶みたいなものだ。
「さて、そろそろ昼食にするか」
次に向かう店は決めてある。俺が贔屓にしてる『猫の額レストラン』だ。
変わった店名だが、獣人がいるので合っているような気もする。
あそこのハンバーグが絶品なんだよな……。
早く食べたい。そんなことを考えながら店に向かった俺達だが、店の前に貴族の馬車が停まっていることに気づいた。
「貴族が平民の店で食べるのか?」
「その割に物騒じゃない?」
「旦那様、何か様子が変です」
元冒険者の嗅覚が働いたか。
俺達が店内に入ると、騎士を従えた男が何やら叫んでいるところだった。
「大人しくその獣人を差し出せ。私の客がそいつを欲しがってるんだ!」
「お断りですっ! フォリアは家族ですっ! たとえ貴族様が相手でも渡せません!」
「ならば店主もろとも打ち首だな。金で解決してやろうとしたのに馬鹿な小娘め」
「やめて。わたし、命令に従います」
「フォリア……。やっと二人でお店を開けたのに……!」
「店がなんだ。貴族らが生活できるのは私達がこの国を運営してやってるからだろうに。アラン、リード、こいつらを馬車に放り込め! 店主の方はあとでたっぷり可愛がってやる」
それは無理な相談だろう。なぜなら、二人とも停止の権能で止まっているからだ。
「おい、伯爵ごときがずいぶんと威勢がいいな」
「誰だ貴様……は……え? 次期国王陛下? な、なぜこんな店に……」
俺の方は知らないが、相手は俺の顔を知っていたらしい。
慌てて平伏している。
「あ、あなた達は……」
「また来させてもらったよ。店主、四人分のテーブル席は空いてるか?」
「は、はい……!」
「食事が来るまでの間、俺はこいつと話をつけておこう」
伯爵の馬車に移動する。
中に入ると少女が縮こまっていた。
「お前は誰だ?」
「クレア……です。さっき、声をかけられて……。馬車に乗れって。助けて……」
「よく分かったよ伯爵。お前は普段から平民を好きにしているわけだ」
クレアを馬車の外に連れ出す。
「クレア、ひとまず俺の屋敷でメイドとして働かないか。安全が確保できるまで君を保護したい」
「いいんですか? その前にお父さんとお母さんに会いたいです」
「もちろんだ。ちなみに、君の年は幾つだ?」
俺はクレアの年を聞いて呆れてしまった。もし本当にこれくらいのことを他の貴族もやっているというなら、俺は貴族達に対するルールを設けなければならない。こんなことがまかり通るようだと平民の反発は強まるばかりだろう。
(俺ならもっと上手くやるのにな)
早急に手を打ちたいと思わされた。
新しく恋人になったユキは、引っ越しとかの為に家に帰した。
荷物はないからそのまま本邸に向かう予定だ。
俺の方はデートの続きで、今は服飾店に来ている。
「わあ、このドレス可愛いです。あ、こっちのネックレスもいいですね!」
「全て買おう。リンネ、遠慮することはないからな」
「はぁいっ」
リンネに関しては放置されてたことで愛情に飢えまくってる感じだ。
「平和ですね」
エメリスの方はのほほんとしてる。
「そういえば、アイス様達は連れてこなくて良かったんですか?」
「これからスピリタニアに行く予定なんだが、その前に色々画策してることがあってな。今はその準備で手が放せないんだ」
――その分、夜はべったり甘えられてる気がする。
「皆さん忙しいんですね。私もお仕事とか増やした方がいいんでしょうか?」
「いや、貴重な便器役もするからな。傍にいてもらわないと困る」
「なるほど。もっと役に立てると嬉しいんですけど」
「ハジメは毎日喜んでると思うよ」
「……便器でも傍にいれるだけいいでしょ」
「リンネ、時間止めて一カ月くらい一緒にいるか?」
たまにリンネが鬼の形相になって怖い。
俺が提案すると、しかし彼女はニッコリ笑顔で首を横に振った。
「まだまだ免罪符は渡しませんからね」
当面、心からの許しはなさそうだ。
長い目でケアしていこう。
俺は店内のドレスを色々買い上げた。何着か二人にもプレゼントしたが、メインはリンネへのプレゼントだ。
少しでもリンネが満足してくれると嬉しいな。
「邪魔したな、フェルマン」
「いえいえ。とんでもないです」
服飾店の主に金貨を握らせる。これからも贔屓にさせてくれという挨拶みたいなものだ。
「さて、そろそろ昼食にするか」
次に向かう店は決めてある。俺が贔屓にしてる『猫の額レストラン』だ。
変わった店名だが、獣人がいるので合っているような気もする。
あそこのハンバーグが絶品なんだよな……。
早く食べたい。そんなことを考えながら店に向かった俺達だが、店の前に貴族の馬車が停まっていることに気づいた。
「貴族が平民の店で食べるのか?」
「その割に物騒じゃない?」
「旦那様、何か様子が変です」
元冒険者の嗅覚が働いたか。
俺達が店内に入ると、騎士を従えた男が何やら叫んでいるところだった。
「大人しくその獣人を差し出せ。私の客がそいつを欲しがってるんだ!」
「お断りですっ! フォリアは家族ですっ! たとえ貴族様が相手でも渡せません!」
「ならば店主もろとも打ち首だな。金で解決してやろうとしたのに馬鹿な小娘め」
「やめて。わたし、命令に従います」
「フォリア……。やっと二人でお店を開けたのに……!」
「店がなんだ。貴族らが生活できるのは私達がこの国を運営してやってるからだろうに。アラン、リード、こいつらを馬車に放り込め! 店主の方はあとでたっぷり可愛がってやる」
それは無理な相談だろう。なぜなら、二人とも停止の権能で止まっているからだ。
「おい、伯爵ごときがずいぶんと威勢がいいな」
「誰だ貴様……は……え? 次期国王陛下? な、なぜこんな店に……」
俺の方は知らないが、相手は俺の顔を知っていたらしい。
慌てて平伏している。
「あ、あなた達は……」
「また来させてもらったよ。店主、四人分のテーブル席は空いてるか?」
「は、はい……!」
「食事が来るまでの間、俺はこいつと話をつけておこう」
伯爵の馬車に移動する。
中に入ると少女が縮こまっていた。
「お前は誰だ?」
「クレア……です。さっき、声をかけられて……。馬車に乗れって。助けて……」
「よく分かったよ伯爵。お前は普段から平民を好きにしているわけだ」
クレアを馬車の外に連れ出す。
「クレア、ひとまず俺の屋敷でメイドとして働かないか。安全が確保できるまで君を保護したい」
「いいんですか? その前にお父さんとお母さんに会いたいです」
「もちろんだ。ちなみに、君の年は幾つだ?」
俺はクレアの年を聞いて呆れてしまった。もし本当にこれくらいのことを他の貴族もやっているというなら、俺は貴族達に対するルールを設けなければならない。こんなことがまかり通るようだと平民の反発は強まるばかりだろう。
(俺ならもっと上手くやるのにな)
早急に手を打ちたいと思わされた。
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