上 下
38 / 69

38 悪魔認定

しおりを挟む
『受け継ぐ者クエストをクリアしました。クリア報酬として、『王の加護』が適用されます。『聖域』のスキルが使用可能となりました。聖域は自分が定めた法が適用される固有結界です。冒険を進めて最強の勇者を目指しましょう』

(これで五つ目の加護か……)

 聖域を自分でも作れるようになった。使い道については後で考えよう。

「王の試練を乗り越えたのですね」

 クアラはずっと待っていてくれたようだ。聖域に通じるゲートから出てきた俺を、安堵の笑顔と共に迎えてくれた。

「王の持つ剣を手に入れた。これで試練は合格だろう」
「さすがハジメ様ですね。ところで、こちらの方は……」
「兄さんの妹で、サイハラ・アカリと申します。私も転移者のようです」
「まさか、魔石も捧げてないのに召喚が起こるなど……。いえ、そもそも一人分の魔石しか捧げてないのにハジメ様が召喚されたこともおかしいのですが……」

 ぶつぶつとクアラが喋っているが、意味はよく分からない。

「そういえば、今さらだけどこの国には魔術師がいないんだよな。どうやって俺とユウスケを召喚したんだ?」
「特定の条件下であれば、女神様が奇跡を起こしてくださるのです。千人の信者が一カ月間の祈祷をすることと、魔石を既定の数だけ捧げれば、勇者召喚の奇跡は起こります」
「なるほどな」
「あの、兄さん、こちらの綺麗な方は……」
「私はトリテア王国の女王、クアラ・ミア・トリテインです。そして、今はハジメ様の正妻という立場でもあります」
「兄さんが……結婚」

 アカリは昔からブラコンをこじらせていた。少し心配だったが、彼女はもう一つのキーワードにも引っ掛かりを覚えたようだった。

「あの、正妻というのは……」
「それは、私達もユウスケさんのお嫁さんという意味です。試練の達成おめでとうございます」

(き……きてしまった)

 アイスがいつものように悪気なく甘えてくる。一回りも年下の未成年な外見の女の子が、あきらかにおかしな距離感で嫁を自称しているのだ。妹にとっては地獄だろうと思って見てみれば、アカリの目が死んでいた。

「兄さんがこんな子供と結婚……嘘……ありえない……さすがに……」
「あたしとシロナも同じく嫁よ?」

 もう一人のロリ……フレアがメスガキなシロナと共に転移してきた。彼女は「当ててんのよ」と言わんばかりに俺の背中にツルペタな胸をぶつけてくる。いつもだったら勃起してこのあと処理してもらう流れだが、そんなことをしていると妹にバレたくなかった。自制し、「本当に色々あったんだ」と言い訳をすることしかできない。

「アカリ、ここは異世界だからな。命を賭けたやり取りをするなかで、こういう運命を歩むことになったことだけは理解して欲しい」
「そうそう。ハジメは本当に頑張ったんだ。それに、私にとっては恩人でね。おかげで孤独から解放されたんだ。……皆、自分の気持ちでこの人の妻になったんだよ」

 良いこと言ってるんだけどシロナはメスガキだ。
 ロリ枠なんだ……! 『こんな幼い子と関係を?』妹の目はそう物語っていた。

「私は元性奴隷ですが、今は喜んで奉仕をしてます」

(エメリス……ッ!?)

「え、性奴隷って、兄さんに奉仕とかしてるんですか? こんなにお嫁さんがいるのに!?」
「そうですね。アイス様、フレア様、クアラ様、シロナ様というローテーションで朝の奉仕と夜伽の順番を回していますね。私は急に尿意を催した時やムラムラした時に便器として使用いただいてます。単純な回数だけならこのなかで一番――」
「こんな綺麗な人を便器とか、兄さんは人間ですか? 何様なんですか?」
「アカリ……! 言い訳のようだが、戦いに身を置いているとどうしても子孫を残したいという思いが強まるんだ。まさかその辺にいる子女を手当たり次第に抱くわけにもいかないからな。エメリスには大事な世話をしてもらってる」
「その辺にいる子女を抱いたことがないと? では、私のことはお忘れですか……?」

 な、なぜ、リンネがここに……。
 彼女は別邸の管理をしていたはずじゃ……!?
 というか、会うの何か月ぶりだ!?

 ユウスケから寝取って一回抱いて以来、完全に放置してたぞ!

「皆様にお伺いを立て、本邸のメイドにしていただけないかと直談判に来ました。想い人から寝取られ、なのにずっと放置され、主人の戻らない屋敷を管理し、女としても見てもらえず……うっうっ……せめて奉仕をしろと命じてください! こんなに人生を無茶苦茶にされてるのに……ずっと放置だなんて……ううぅぅぅぅぅうううぅぅ」
「ごめんね。あんまり可哀想だから連れて来たんだよ。皆はいいって言ってる。だから、妹の前では決断しづらいだろうけど、リンネも本邸で迎えてあげられないかな? こんなタイミングになってごめんね?」

 シロナ、最低なタイミングでの提案をありがとう。

「最低……兄さんは人でなしです!」
「待ってくれ! 日本とここは違うんだ! アカリの面倒は俺が見る。皆も、誤解をさせるような言い方はやめてほしい。それと、リンネは後で話そう」
「いいって……言ってくれなかった……うあぁぁぁん! 旦那様の寝取り魔! 鬼畜!」
「違う! いいとも! 二人の時間を作ろうという意味だ!」
「最低です。死んでください! 兄さんは人の皮を被った悪魔です!」

 兄は死んだ……。

 この日、一人の妹が兄を失った。

 クズな兄貴でごめんな。
 マジですまんかった……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり

柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日―― 東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。 中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。 彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。 無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。 政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。 「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」 ただ、一人を除いて―― これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、 たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~

笹原うずら
ファンタジー
獣人ばかりの世界の主人公は、炎を使う人間の姿をした少年だった。 鳥人族の国、スカイルの孤児の施設で育てられた主人公、サン。彼は陽天流という剣術の師範であるハヤブサの獣人ファルに預けられ、剣術の修行に明け暮れていた。しかしある日、ライバルであるツバメの獣人スアロと手合わせをした際、獣の力を持たないサンは、敗北してしまう。 自信の才能のなさに落ち込みながらも、様々な人の励ましを経て、立ち直るサン。しかしそんなサンが施設に戻ったとき、獣人の獣の部位を売買するパーツ商人に、サンは施設の仲間を奪われてしまう。さらに、サンの事を待ち構えていたパーツ商人の一人、ハイエナのイエナに死にかけの重傷を負わされる。 傷だらけの身体を抱えながらも、みんなを守るために立ち上がり、母の形見のペンダントを握り締めるサン。するとその時、死んだはずの母がサンの前に現れ、彼の炎の力を呼び覚ますのだった。 炎の力で獣人だらけの世界を切り開く、痛快大長編異世界ファンタジーが、今ここに開幕する!!!

処理中です...