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19 覚悟

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 デートを終えて王城に戻ろうとしていた俺だが、途中でユウスケに出くわしてしまった。

「ようオッサン……って、何で精霊が増えてんだよ!」
「フレアが精霊だって分かるのか?」
「俺は選ばれた勇者なんだから当然だろ」

 鑑定か、それに類する能力を持っているということだ。
 俺はユウスケを鑑定した。

 だが、聖剣が妨害したせいで結果を見ることはできなかった。

「喧嘩売ってんのか? なに人のステータス覗こうとしてるんだよ」
「お前だってフレアを覗いたんだからお互い様だ」
「うるせーな。許して欲しけりゃ精霊をよこせよ」
「彼女達は奴隷じゃない。自分の意思で俺と一緒にいてくれるんだ。お前の連れてるエルフと一緒にするな」

 ユウスケの顔が怒りに歪む。

 彼が連れているのは、17才くらいの年若いエルフだった。首輪をつけられ、冷たい怒りを秘めた目をしている。ユウスケはこんな娘を連れてよく平気で歩けるな。背後から刺されそうで怖くないのか?

「俺が奴隷を連れ歩こうがオッサンには関係のないことだ」
「……上位精霊……いえ、精霊王ですか?」
「おい、勝手にしゃべるな!」

 神経質にユウスケが叫ぶ。よほどエルフのことが気に入らないんだろうな。
 だったら連れて歩かなければいいと思うんだが……。

「ユウスケ様、私をこの方に売っていただけませんか。お金は必ず返しますので」
「ふざけるな! お前は俺の女になるんだよ!」
「そんな未来はこないと伝えたはずですが。私は戦闘奴隷です。戦うこと以外で奉仕する気は一切ありません。性的な奉仕をして欲しいのなら他の娘を購入すればいいじゃないですか。この国の宰相もそれを勧めていたはずですが」
「うるさいんだよ! 俺に恥をかかせるな!」
「奴隷の躾もできないとは情けない男だな」

 シディアがユウスケを挑発する。

「てめえ、雑魚が偉そうな口利いてんじゃねえよ。俺は勇者なんだぞ。俺がその気になればお前なんか木端微塵にできるんだぜ」
「確かに、私ではお前の相手にはならないだろうな。しかし、弱いという点では同じだろう。貴様はハジメよりも劣った勇者だ。城に潜んでいた魔人を始末したのはハジメなのだからな」
「こいつはただの巻き込まれた一般人だ! 俺が、俺こそがこの国の勇者なんだよ!」
「……ほう。そんなに言うなら今ここで試してみればいい。互いに精霊とエルフを賭けて戦ってみたらどうだ?」

 何を勝手なことを……。

「俺は受けて立つぜ。俺が勝ったら精霊は奴隷にする。何でも言うことを聞く奴隷だ」
「精霊は道具じゃない。賭け事の対象にするわけないだろ」
「逃げるのか? 所詮はただの一般人だったってわけだ」

 安い挑発に乗るつもりはない。
 しかし、それを許すフレアではなかった。

「いいわ。あたしを賭けて戦いなさい」
「何を言ってるんだフレア! こんな賭けに乗る必要はない!」
「そうですよ! 何を考えているんですか!」

 アイスも反対する。
 俺だって、恩人を詰まらない賭け事に巻き込むつもりはない。
 だが、フレアは譲らなかった。

「ハジメなら必ず勝つわ。だから、勝って名誉を守りなさい。あなただけじゃない。あたし達の為に勝つのよ」
「でも、その為にフレアを危険に晒すわけには……」
「誇りを失えば皆があなたを舐めるようになるわ。そうなれば少しずつ大切なものを失って、いずれは自分さえ見失うことになる。戦うことは決して悪いことじゃない。名誉を守る為に剣を取りなさい」

 フレアの熱量にあてられて、こんな奴には負けられないという感情が湧きあがってくる。ここで逃げればアイスとフレアの安全は確保できるが、それはこの先ずっと、情けないマスターと契約した精霊という汚名を着せることにもなる。

(……腹を括るか)

「俺が賭けるのは奴隷エルフだ。オッサンには赤髪の生意気そうな精霊を賭けてもらうぜ」
「その条件でいい。フレアは絶対に渡さない。一生舐めた態度を取れないようにしてやる」
「では私が立会人となろう」

 ユウスケが聖剣を抜く。

「ちなみに、そいつの餌は何やればいいんだ?」

 餌……だと? 俺の恩人を家畜のように扱うつもりか?

「今お前が持ってるものを根こそぎ奪ってやるよ」
「ハハッ。やってみろよオッサン!」
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