14 / 118
14 他人様の迷惑を考えろ
しおりを挟む
俺達はワーグの死体を避けて進み、その先にあった石板の窪みへ盗賊から奪った鍵を挿した。すぐに変化が訪れて、行き止まりだと思っていた壁が崩れる。その先に見えたのは、地下へ通じる隠し階段だ。
階段を下った先は、ダイババの寝床だろう。
「凄い。どういう仕組みなんですかこれ」
「さあな。古代人(運営)のセンスだ」
俺が先導して先へ進む。長い階段を汗を流しつつ下ると、アリの巣みたいに通路が広がっていた。
ダイババの部屋に通じる幅の広い通路と、左右に細かく分れた細い通路がある。
やたら細かく道が別れているが、実のところほとんどは居住区だ。
盗賊の幹部連中や、そいつらが囲ってる女達の寝床があるだけだな。
「出てこいダイババ! お前達を始末しにきたぞ!」
俺はいきなり声を張り上げた。
アジトは蜂の巣を突いたような騒ぎになり、幹部連中とおぼしき男達が三日月刀を手に集まってきた。
鑑定するが、戦力値は70前後。
王都にいる大抵の騎士より強いじゃないか。
「侵入者のガキめ!」
一際強そうなのが出てきた。
戦力値は74か。
この中だとなかなか高いな。
男が飛び込んできたので、水の魔剣と三日月刀で鍔迫り合いになる。
俺は零距離からの水刃を使う。
ヒュン、と飛んだ水の刃があっさり男の身体を裂いた。
「何を……っ」
男がひるんだ隙に、剣を弾いて袈裟斬りにしてやった。
ワーグとの戦闘で魔剣の使い方を覚えておいて良かった。
「こいつは強い……ぞ」
それが、男にとって最期の言葉になった。
俺は続けて剣を振るい、男の首を落とした。
スプリンクラーのように血をまき散らしながら、首のない胴体が倒れる。
「この卑怯者! よくも副首領を!」
残った賊が男の死を惜しみながら向かってくる。
しかし、俺からすれば「知るかボケ」って感じだ。
つうか、腹立たしいのが他人様に迷惑をかけまくってる癖に、こいつらが一丁前に感情をあらわにしてることだ。
こいつらに捕まって人身売買の道具にされて、どれだけの人々が涙を流し絶望し、また命を奪われたことか。
嘆く資格があるのはこいつらの被害者で、加害者であるこいつらにその資格はない。
全くもって同情するに値しない連中だ。
これが貧困が原因でパンを盗んでしまった男とかだったら、俺だって同情はする。斬ろうとも思わない。だが、目の前にいるのはクズのなかのクズ。他者の痛みに共感せず、残酷に女子供を拉致して売り物にできる連中だ。
お前らのそれは自業自得だろうが。
怒りに支配された俺は一切、躊躇わない。
賊を次々に斬る。
血だまりに沈める。
比較的長い戦いが続いた。
カナミとネリスも魔法を撃ちこみ、通路に出てきた盗賊達は殲滅された。
さすがに息が切れた。日焼け対策に着てきたローブは血だらけだ。
こんな格好で街に戻ったら通報されるだろうな。
「……先を急ぐか」
「兄さん、囚われてる人がいるかもしれません。一応、見ていきますか?」
「いないと思うが、一応見て回るか」
こんな状況で他人の心配ができるなんてな。
以前は甘さだと思っていたが、少し妹を見直してしまう。
「行くか」
枝分かれした各部屋を見て回る。
しかし、いるのは囚われた女性ではなく、自分から盗賊に身体を売った娼婦だけだった。
女達は自分の男が死んだと聞くと、口汚く俺達を罵って出ていった。
一応、安全の為に共に地上へ帰ることも提案したが、その必要はないと拒絶された。
まあ、今なら魔物は排除してきたから安全に出られるだろう。
しかし、無駄骨だった感は否めない。もちろん、そのことで妹を責めるつもりなどないのだが。
「あと一つ、部屋がありますね」
「一応見てこうぜ。すげー疲れてきたけど」
最後の部屋の扉を開ける。
その部屋は、他と違い豪奢な調度品の置かれた部屋だった。
女が一人、怯えるようにベッドの隅で啜り泣いている。
全く嬉しくないが、当たりか?
「あんたは……どっちだ? 自分からここに来た女か?」
「いいえ、違います! どうか助けてください!」
ベッドで怯えるように泣いていた女が、俺達を見るなり走り寄ってきた。
どう見ても賊に誘拐され、望まない仕事に従事していた女性だ。
褐色の蠱惑的な肌。
裸体でベッドシーツを身体に巻きつけ、心許ない恰好をしている。
「騒ぎを起こしてすまなかった。だが、もう大丈夫だ。ダイババ以外の盗賊は倒した。あとは頭をやるだけだ」
「私は奴隷のセラです。本当に、あなた方でダイババを討てるのでしょうか?」
俺がどう返答をしようか迷っていると、カナミが叫んだ。
「兄さん避けて!」
「な……っ」
「くっ」
突然、カナミの掲げた杖が光を噴いた。
遅れて、魔弾が放たれたということに気づく。
女が目を見開く。
身体に巻き付けたベッドシーツに穴が空いている。
カナミ……なんてことを……。
女が脇腹を押さえて崩れ落ちた。
カナミの撃った魔弾が命中し、深手を与えたのだ。
「いきなり何をするんだ!?」
カラン、と何かが落ちる音がする。
見るとセラが手元に隠していたナイフが落ちた音だった。
「……ダイババに命じられて侵入者を排除するよう言われてたのか」
女は何も答えず、薄っすらと笑った。
そのまま、固く目を閉じる。
望んでやっているようには見えなかった。
だが、本当のところは俺などには分からない。
「カナミ。今のは助かった」
「心臓に悪かったです。兄さんが死んじゃうかと思って……」
危ないところだった。
もし、カナミを連れていなかったら、俺はセラに刺されていたかもしれない。
俺達は血塗られたアジトの個室を一つずつ確かめ、残存戦力が空になっていることを確認した。
そして、もう増援が来ないことを確かめて奥の間へ進んだ。
階段を下った先は、ダイババの寝床だろう。
「凄い。どういう仕組みなんですかこれ」
「さあな。古代人(運営)のセンスだ」
俺が先導して先へ進む。長い階段を汗を流しつつ下ると、アリの巣みたいに通路が広がっていた。
ダイババの部屋に通じる幅の広い通路と、左右に細かく分れた細い通路がある。
やたら細かく道が別れているが、実のところほとんどは居住区だ。
盗賊の幹部連中や、そいつらが囲ってる女達の寝床があるだけだな。
「出てこいダイババ! お前達を始末しにきたぞ!」
俺はいきなり声を張り上げた。
アジトは蜂の巣を突いたような騒ぎになり、幹部連中とおぼしき男達が三日月刀を手に集まってきた。
鑑定するが、戦力値は70前後。
王都にいる大抵の騎士より強いじゃないか。
「侵入者のガキめ!」
一際強そうなのが出てきた。
戦力値は74か。
この中だとなかなか高いな。
男が飛び込んできたので、水の魔剣と三日月刀で鍔迫り合いになる。
俺は零距離からの水刃を使う。
ヒュン、と飛んだ水の刃があっさり男の身体を裂いた。
「何を……っ」
男がひるんだ隙に、剣を弾いて袈裟斬りにしてやった。
ワーグとの戦闘で魔剣の使い方を覚えておいて良かった。
「こいつは強い……ぞ」
それが、男にとって最期の言葉になった。
俺は続けて剣を振るい、男の首を落とした。
スプリンクラーのように血をまき散らしながら、首のない胴体が倒れる。
「この卑怯者! よくも副首領を!」
残った賊が男の死を惜しみながら向かってくる。
しかし、俺からすれば「知るかボケ」って感じだ。
つうか、腹立たしいのが他人様に迷惑をかけまくってる癖に、こいつらが一丁前に感情をあらわにしてることだ。
こいつらに捕まって人身売買の道具にされて、どれだけの人々が涙を流し絶望し、また命を奪われたことか。
嘆く資格があるのはこいつらの被害者で、加害者であるこいつらにその資格はない。
全くもって同情するに値しない連中だ。
これが貧困が原因でパンを盗んでしまった男とかだったら、俺だって同情はする。斬ろうとも思わない。だが、目の前にいるのはクズのなかのクズ。他者の痛みに共感せず、残酷に女子供を拉致して売り物にできる連中だ。
お前らのそれは自業自得だろうが。
怒りに支配された俺は一切、躊躇わない。
賊を次々に斬る。
血だまりに沈める。
比較的長い戦いが続いた。
カナミとネリスも魔法を撃ちこみ、通路に出てきた盗賊達は殲滅された。
さすがに息が切れた。日焼け対策に着てきたローブは血だらけだ。
こんな格好で街に戻ったら通報されるだろうな。
「……先を急ぐか」
「兄さん、囚われてる人がいるかもしれません。一応、見ていきますか?」
「いないと思うが、一応見て回るか」
こんな状況で他人の心配ができるなんてな。
以前は甘さだと思っていたが、少し妹を見直してしまう。
「行くか」
枝分かれした各部屋を見て回る。
しかし、いるのは囚われた女性ではなく、自分から盗賊に身体を売った娼婦だけだった。
女達は自分の男が死んだと聞くと、口汚く俺達を罵って出ていった。
一応、安全の為に共に地上へ帰ることも提案したが、その必要はないと拒絶された。
まあ、今なら魔物は排除してきたから安全に出られるだろう。
しかし、無駄骨だった感は否めない。もちろん、そのことで妹を責めるつもりなどないのだが。
「あと一つ、部屋がありますね」
「一応見てこうぜ。すげー疲れてきたけど」
最後の部屋の扉を開ける。
その部屋は、他と違い豪奢な調度品の置かれた部屋だった。
女が一人、怯えるようにベッドの隅で啜り泣いている。
全く嬉しくないが、当たりか?
「あんたは……どっちだ? 自分からここに来た女か?」
「いいえ、違います! どうか助けてください!」
ベッドで怯えるように泣いていた女が、俺達を見るなり走り寄ってきた。
どう見ても賊に誘拐され、望まない仕事に従事していた女性だ。
褐色の蠱惑的な肌。
裸体でベッドシーツを身体に巻きつけ、心許ない恰好をしている。
「騒ぎを起こしてすまなかった。だが、もう大丈夫だ。ダイババ以外の盗賊は倒した。あとは頭をやるだけだ」
「私は奴隷のセラです。本当に、あなた方でダイババを討てるのでしょうか?」
俺がどう返答をしようか迷っていると、カナミが叫んだ。
「兄さん避けて!」
「な……っ」
「くっ」
突然、カナミの掲げた杖が光を噴いた。
遅れて、魔弾が放たれたということに気づく。
女が目を見開く。
身体に巻き付けたベッドシーツに穴が空いている。
カナミ……なんてことを……。
女が脇腹を押さえて崩れ落ちた。
カナミの撃った魔弾が命中し、深手を与えたのだ。
「いきなり何をするんだ!?」
カラン、と何かが落ちる音がする。
見るとセラが手元に隠していたナイフが落ちた音だった。
「……ダイババに命じられて侵入者を排除するよう言われてたのか」
女は何も答えず、薄っすらと笑った。
そのまま、固く目を閉じる。
望んでやっているようには見えなかった。
だが、本当のところは俺などには分からない。
「カナミ。今のは助かった」
「心臓に悪かったです。兄さんが死んじゃうかと思って……」
危ないところだった。
もし、カナミを連れていなかったら、俺はセラに刺されていたかもしれない。
俺達は血塗られたアジトの個室を一つずつ確かめ、残存戦力が空になっていることを確認した。
そして、もう増援が来ないことを確かめて奥の間へ進んだ。
1
お気に入りに追加
1,884
あなたにおすすめの小説
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる