悪役令嬢の里帰り

椿森

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 衝撃に驚いて動けないでいると、ブロワ伯爵が立ち上がり馬車の外に出ようとした。

「様子を見てきますので、テアニア嬢と侍女殿はここで待っていてください」
「で、でも危ないですよ···!」
「この馬車は王族が乗るものと同じですので、そう簡単には壊れません。護衛も護っておりますから」

 怒声に混じり、金属がぶつかる音も聞こえていて直感で危ないとおもった。そんな外に
危険を冒してまで、しかも頼りになりそうな人が出ていくことが不安で伯爵を止めようとしたが、伯爵は出ていってしまった。
 伯爵が出る時に扉を開いた隙間から、思った以上に近い騒乱の音に恐怖心が煽られる。
 扉が閉まれば少し遠くに聞こえる程度になるが、何も安心できなかった。

 テアニアと付き添いで来ていた侍女は身を守る術も、武器になるようなものも持っておらず手を取り合って怯えるばかりだった。

 伯爵が馬車の外に出てから少しして、不意にノブがガチャガチャと音をたてた。しかし、簡単には開かないようで、そのうちに扉がドンッドンッと叩かれるような音と、衝撃が加えられる。程なくして、扉が壊されて、男達が入ってきた。

「この小さい方を連れていけばいいのか?侍女はどうする」
「そうだな···特に指示を受けてはいないが、とりあえず連れていけばいいだろう」

 先に入ってきた男が後に続く男に伺いをたてて、その言葉に頷いた。そのまま、奥にいたテアニアの腕を掴み、馬車から引きずり出した。

「お、お嬢様!!」

 侍女が抵抗しようとするが、男に力で叶うはずもない。その上、抵抗されないように力で腕をとられてねじ伏せられてしまった。

「ミリ!」
「お嬢さん、侍女を痛めつけられたくなければ大人しく着いてこい」

 ミリはテアニアによく仕えてくれる大事な侍女だ。男にそう言われてしまえば抵抗できる訳もなく、大人しく連れていかれざるを得なかった。
 王宮のものよりも簡素な作りの馬車に押し込まれ、続いてミリも投げられるように入れられた。
 テアニアはミリを助け起こそうとするが男に制止される。

「お嬢さん、余計な動きはするな。手を後ろで組みな。後ろを向け」

 これ以上、何をされるかわからない恐怖に、テアニアは大人しく従った。
 後ろを向けば、痛いくらいに縄を手首に巻き付けられる。同時に猿轡と目隠しもされる。
 それが終わって座らされると、壁を2度叩く音がして、馬車が動き出した。

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