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音がしたような気がする方向を向けば······もはや笑みの形すらとられてにいない王太子様がいらっしゃった。
こ、怖すぎる······!!
しかし、ここで怯むわけにはいかない!
「お、王太子殿下······どうか、どうか今しばらくご辛抱ください···!」
王太子殿下の周囲は少しずつ空間が出来ていた。
周囲にいた人達は、王太子殿下の怒れる様に恐れを成したわけだ。
「辛抱?これ以上、しろと?」
「お気持ちは、痛いほど!わかります。ですが、一応学園内のことですので、まずは在校生の対応を見ていただけないでしょうか。と言いますか、私が前に出ます」
あまりの形相だったのか、王太子様の表情が少し和らいだ気がした。
「いいだろう、私が後ろについてやる」
王太子様は、アルレンシア様を通して知り合いになった。女性はみんなこのハニーフェイスに騙されるらしいが、アルレンシア様やご自身が認めた方以外を見下す視線に私は慄いた。(身分云々ではなく、無能がでかい顔をするのが気にくわないらしい)それを気とられたのか、見事お認めいただいたわけである。
そして、アルレンシア様からか、私のドブソン男爵令嬢とその愉快な令息達に対する怨嗟をご存知である。
いまだ無駄なことを喚いている集団の前、つまりはアルレンシア様のそばまで行く。
気がついてくださったアルレンシア様と視線を合わせた後、アルレンシア様は近くに王太子様がいることにも気づき、嬉しそうに目を細める。
「アルレンシア・サモア!聞いているのか!」
おそらく聞いてはいない。が、正直に答えるわけもないがアルレンシア様は視線だけ向けた。
「少々、よろしいでしょうか?」
言葉が途切れている良いタイミングで、私は手を挙げて愉快な令息達の視線を集めた。
「なんだ貴様は!」
紳士が、曲がりなりにも女性に対して貴様はない。まあ、紳士だと思ってもないが。
「下位の者よりお声がけさせていただくこと、寛大なる御心でどうぞお許しくださいませ」
「ふん、まあ良いだろう」
言い草に腹は立つが、我慢だ。私も不遜な態度であることは否定しない。
「お初目にかかります、ロス男爵家のユーニスと申します。この度の件で証言をさせていただけますでしょうか」
私の言葉で周囲はざわついた。
男爵令嬢と愉快な令息達は、自分たちの言い分の後押しになるであろうと嬉しさを隠しもしなかった。
背後はもちろん気温が下がる。
「男爵令嬢ごときの言葉がどれだけ信用なるかわからんが、聞いてやろうじゃないか」
その男爵令嬢ごときにうつつを抜かしている野郎が何を言うのか。こっちこそ、言ってやろうじゃないか。
「ありがとう存じます。ではまず、皆様がおっしゃられる記録や証拠のそれぞれの日時をお教えいただけますでしょうか」
「日時だと?」
「はい、ドブソン男爵令嬢様への暴言や暴挙の数々が何日の何時頃に起きたことなのか、加えまして、それを証言なさった方がいらっしゃるのかをです」
令息達は互いの顔を見合わせる。
案の定、あの紙の束は見せかけだったのだろう。
「証言はエイミーがした」
「エイミー様・・・・・・エイミー?ドブソン男爵令嬢様ですね。・・・え、ドブソン男爵令嬢様だけですか?」
「十分だろう。実際に破れた教科書や噴水に落ちて濡れていたエイミーを私たちが見ている」
自信満々に言い切る令息に、ざわついていた会場内が静寂に包まれた。
「・・・お伺いしたいのですが、その、教科書が破れらた時や噴水に落とされた時など一緒にいらっしゃったわけではないのですか?」
「無礼だな、エイミーがその状態で私たちに助けを求めてきたのだ。間違いないだろう」
証拠にもなりえない物言いに、呆れて物が言えないとはこういうことを言うのかと、気が遠くなりそうだった。
こ、怖すぎる······!!
しかし、ここで怯むわけにはいかない!
「お、王太子殿下······どうか、どうか今しばらくご辛抱ください···!」
王太子殿下の周囲は少しずつ空間が出来ていた。
周囲にいた人達は、王太子殿下の怒れる様に恐れを成したわけだ。
「辛抱?これ以上、しろと?」
「お気持ちは、痛いほど!わかります。ですが、一応学園内のことですので、まずは在校生の対応を見ていただけないでしょうか。と言いますか、私が前に出ます」
あまりの形相だったのか、王太子様の表情が少し和らいだ気がした。
「いいだろう、私が後ろについてやる」
王太子様は、アルレンシア様を通して知り合いになった。女性はみんなこのハニーフェイスに騙されるらしいが、アルレンシア様やご自身が認めた方以外を見下す視線に私は慄いた。(身分云々ではなく、無能がでかい顔をするのが気にくわないらしい)それを気とられたのか、見事お認めいただいたわけである。
そして、アルレンシア様からか、私のドブソン男爵令嬢とその愉快な令息達に対する怨嗟をご存知である。
いまだ無駄なことを喚いている集団の前、つまりはアルレンシア様のそばまで行く。
気がついてくださったアルレンシア様と視線を合わせた後、アルレンシア様は近くに王太子様がいることにも気づき、嬉しそうに目を細める。
「アルレンシア・サモア!聞いているのか!」
おそらく聞いてはいない。が、正直に答えるわけもないがアルレンシア様は視線だけ向けた。
「少々、よろしいでしょうか?」
言葉が途切れている良いタイミングで、私は手を挙げて愉快な令息達の視線を集めた。
「なんだ貴様は!」
紳士が、曲がりなりにも女性に対して貴様はない。まあ、紳士だと思ってもないが。
「下位の者よりお声がけさせていただくこと、寛大なる御心でどうぞお許しくださいませ」
「ふん、まあ良いだろう」
言い草に腹は立つが、我慢だ。私も不遜な態度であることは否定しない。
「お初目にかかります、ロス男爵家のユーニスと申します。この度の件で証言をさせていただけますでしょうか」
私の言葉で周囲はざわついた。
男爵令嬢と愉快な令息達は、自分たちの言い分の後押しになるであろうと嬉しさを隠しもしなかった。
背後はもちろん気温が下がる。
「男爵令嬢ごときの言葉がどれだけ信用なるかわからんが、聞いてやろうじゃないか」
その男爵令嬢ごときにうつつを抜かしている野郎が何を言うのか。こっちこそ、言ってやろうじゃないか。
「ありがとう存じます。ではまず、皆様がおっしゃられる記録や証拠のそれぞれの日時をお教えいただけますでしょうか」
「日時だと?」
「はい、ドブソン男爵令嬢様への暴言や暴挙の数々が何日の何時頃に起きたことなのか、加えまして、それを証言なさった方がいらっしゃるのかをです」
令息達は互いの顔を見合わせる。
案の定、あの紙の束は見せかけだったのだろう。
「証言はエイミーがした」
「エイミー様・・・・・・エイミー?ドブソン男爵令嬢様ですね。・・・え、ドブソン男爵令嬢様だけですか?」
「十分だろう。実際に破れた教科書や噴水に落ちて濡れていたエイミーを私たちが見ている」
自信満々に言い切る令息に、ざわついていた会場内が静寂に包まれた。
「・・・お伺いしたいのですが、その、教科書が破れらた時や噴水に落とされた時など一緒にいらっしゃったわけではないのですか?」
「無礼だな、エイミーがその状態で私たちに助けを求めてきたのだ。間違いないだろう」
証拠にもなりえない物言いに、呆れて物が言えないとはこういうことを言うのかと、気が遠くなりそうだった。
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