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で、どうする?

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「――で、彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもりなの?」
「…え?」


姉の突然の問いに、ジョージは戸惑った。


「身分差のある相手と結婚するために、既に手は打ってあるのかしら?」
「え、えっと…」
「――まさか、何もしてないわけじゃないでしょう? 策があるからお父様にお話ししたのよね」


何も言えなかった。
姉の言うところのなど、何もない。

無言の弟に、姉は呆れた顔をする。


「やだ、まさか本当に何もしていないの?
 貴族――そこそこ歴史ある伯爵家の我が家に対して相手は平民よ。
 男爵家ならまだしも、こんなに大きな身分差があるのに何の対策もしていないの?」
「…」
「ひょっとして、いつかお父様達が許してくれるのを待つだなんて都合の良いことを考えていないかしら?」
「うっ…それは…」


カレンは深いため息を吐く。


「はぁ…呆れた。
 本当に彼女と結婚したいのなら、貴方が行動をしなくてどうするのよ。
 それに、これは我が家だけではないわ。
 親交のある他家はもちろん、余所の派閥の家に侮られないようにしなければならないの。
 平民が伯爵夫人となるのよ?
 子爵や男爵夫人達が、自分たちより身分が高くなった元平民を受け入れてくれるかしら――いいえ、普通に考えたら受け入れないわね。
 仲間はずれにされるのは容易に想像がつくわ…」
「そんな…」


(仲間はずれだなんて子供じゃあるまいし…)


そう思ったジョージの心をまるで読んだかのように、姉が言葉を続ける。


「そんな子供みたいなことをするのよ。だって、子供だった大人と呼ばれるようになるだけなのだから。
 ある年齢に達したとき、急に大人としての考え方に切り替わるわけじゃないのよ。
 子供の頃に意地悪をしていた人は、成長してもそのまま意地悪をし続けるの。
 そんな体が大きい子供とやり合っていくためには、こちらも準備が必要なの。
 心構えと知識と経験が必要だし、もし1人で立ち向かうことが出来ないのなら大きな後ろ盾が必要不可欠。
 悪意に満ちただらけの場所に、貴方は大事な妻を放り込もうとしてるのだと理解してちょうだい」


ジョージは俯いた。
反論することは出来ない。――反論出来るようなことがなかった。

カレンが言ったことは、少し考えればわかることだった。
隙を見せればすぐに足下を掬われるのが貴族社会だ。
平民が貴族と対等に渡り歩くなど、そう簡単に出来るはずがない。



「彼女だけじゃないわよ。当然、ジョージの立場も悪くなるわ。
 貴族のくせに何も出来ない平民にうつつを抜かした愚か者。伯爵家としての立ち居振る舞いの出来ない妻を迎えた無能。
 ――とか、色々と陰口をたたかれるでしょうね。
 もちろん息子の愚行を止められなかった親も嘲笑の的になるわね。
 今までお父様やお母様が築き上げてきた素晴らしい功績や人脈も、貴方の結婚1つですべて台無しになるの」
「…」



淡々と説明されて、ジョージは当たり前のことに思い至ることが出来なかったことを恥じた。
己の選択で家族にまで迷惑をかけてしまうのだと、なぜすぐ気づかなかったのか。


黙って俯く弟に、カレンは再度問いかけた。




「それで、平民の彼女と結婚するために貴方はこれから何をするつもり?」
「――俺は…」


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