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巻き戻されたカナリア(2)
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泣き疲れて眠ったカナリアが次に目を覚ました時には、すでに日が高く昇っていた。
壁掛け時計を見ると、もう昼過ぎだった。
(ここは・・・私の部屋ね・・・)
見慣れた室内の様子に安堵する。
それと同時に、夕べの出来事を思い出した。
(――そうよ、私は彼に刺されて・・・いえ、刺された痕はないんだったわ)
夕べ確認した時と同様、腹部に痛みは感じられない。
そしてもう1つ、彼女にとって大切なことを思い出した。
(そうだ!アナはっ!?)
いてもたってもいられなくなったカナリアは、ベッドから飛び出すとドアに飛びついた。
「うわっ!」
「アナッ!」
「――え、お嬢様!? どうしたのですか、急に――ふぐぅっ!」
「アナァァ・・・」
ドアを開けるとアナがいた。
部屋の脇には食事をのせたワゴンがある。カナリアのために用意したのだろう。
ドアを開けようとしたところで、アナが勢いよく飛び出してきて、そのまま抱きつかれたのだ。
痛む腹部からどうにか意識をそらし、抱きついて離れないカナリアを宥めて部屋へと入る。
もちろん、食事のワゴンを中に運ぶのも忘れていない。
ひとまずカナリアをベッドに座らせると、アナは隣に腰を下ろして、どこか情緒不安定な少女の顔をのぞき込んだ。
「いったいどうされたのですか?」
「アナ・・・アナはここにいるのよね・・・?今、ちゃんと生きているのよね・・・?」
カナリアは自分でもおかしいことを言っているのはわかっている。それでも、聞かずにはいられなかった。
震える手でアナの袖を握りしめる。
手を離したら、アナがどこかに消えてしまうのではないかと思った。
「はい。アナはお嬢様のお側にいますよ。もちろん生きております」
「・・・うん・・・うん・・・」
袖を握りしめる手に力がこもった。
「・・・気持ちの整理が付きましたら、お嬢様の悩みを、アナにお聞かせいただけないでしょうか」
アナは無理に質問せず、カナリアが話してくれるのを待つことにした。
昨晩からカナリアの様子がおかしいのは火を見るよりも明らかだ。
カナリアは迷った。
口にしてしまうと、それが真実になるのではないかと思ったのだ。
けれどこの気持ちを1人で抱えていることに耐えられそうにもなかった。
(――どうしよう・・・)
そうして腹部に目を落として、カナリアはあることに気づく。
「――あれ?」
カナリアは、パンパンと胸に手を当て、何かを確かめるような仕草をする。
それを見守るアナには疑問符が浮かぶが、何をしているか問うことはせず、しばし待つことにした。
カナリアは手を止めると
「――ない・・・」
とつぶやいた。
数瞬、動きを止めたかと思うと、バッとドレッサーに目を見やり、そちらに駆け寄った。
そして鏡に映る姿を見て、目を疑う。
「――嘘でしょっ!?なんで小さいの!?」
(胸がない! ・・・というか、体が小さいのだけど!?)
鏡に映る信じがたい光景に、カナリアは狼狽えた。
そしてアナは、カナリアを追うためにベッドから中途半端に腰を上げた状態で、目を丸くして固まった。
(お嬢様がご乱心!?)
壁掛け時計を見ると、もう昼過ぎだった。
(ここは・・・私の部屋ね・・・)
見慣れた室内の様子に安堵する。
それと同時に、夕べの出来事を思い出した。
(――そうよ、私は彼に刺されて・・・いえ、刺された痕はないんだったわ)
夕べ確認した時と同様、腹部に痛みは感じられない。
そしてもう1つ、彼女にとって大切なことを思い出した。
(そうだ!アナはっ!?)
いてもたってもいられなくなったカナリアは、ベッドから飛び出すとドアに飛びついた。
「うわっ!」
「アナッ!」
「――え、お嬢様!? どうしたのですか、急に――ふぐぅっ!」
「アナァァ・・・」
ドアを開けるとアナがいた。
部屋の脇には食事をのせたワゴンがある。カナリアのために用意したのだろう。
ドアを開けようとしたところで、アナが勢いよく飛び出してきて、そのまま抱きつかれたのだ。
痛む腹部からどうにか意識をそらし、抱きついて離れないカナリアを宥めて部屋へと入る。
もちろん、食事のワゴンを中に運ぶのも忘れていない。
ひとまずカナリアをベッドに座らせると、アナは隣に腰を下ろして、どこか情緒不安定な少女の顔をのぞき込んだ。
「いったいどうされたのですか?」
「アナ・・・アナはここにいるのよね・・・?今、ちゃんと生きているのよね・・・?」
カナリアは自分でもおかしいことを言っているのはわかっている。それでも、聞かずにはいられなかった。
震える手でアナの袖を握りしめる。
手を離したら、アナがどこかに消えてしまうのではないかと思った。
「はい。アナはお嬢様のお側にいますよ。もちろん生きております」
「・・・うん・・・うん・・・」
袖を握りしめる手に力がこもった。
「・・・気持ちの整理が付きましたら、お嬢様の悩みを、アナにお聞かせいただけないでしょうか」
アナは無理に質問せず、カナリアが話してくれるのを待つことにした。
昨晩からカナリアの様子がおかしいのは火を見るよりも明らかだ。
カナリアは迷った。
口にしてしまうと、それが真実になるのではないかと思ったのだ。
けれどこの気持ちを1人で抱えていることに耐えられそうにもなかった。
(――どうしよう・・・)
そうして腹部に目を落として、カナリアはあることに気づく。
「――あれ?」
カナリアは、パンパンと胸に手を当て、何かを確かめるような仕草をする。
それを見守るアナには疑問符が浮かぶが、何をしているか問うことはせず、しばし待つことにした。
カナリアは手を止めると
「――ない・・・」
とつぶやいた。
数瞬、動きを止めたかと思うと、バッとドレッサーに目を見やり、そちらに駆け寄った。
そして鏡に映る姿を見て、目を疑う。
「――嘘でしょっ!?なんで小さいの!?」
(胸がない! ・・・というか、体が小さいのだけど!?)
鏡に映る信じがたい光景に、カナリアは狼狽えた。
そしてアナは、カナリアを追うためにベッドから中途半端に腰を上げた状態で、目を丸くして固まった。
(お嬢様がご乱心!?)
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