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真相

そして……10

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長くなったのでカットしました。
間隔が短いのは前回更新の期間が長かったからではないですよ(滝汗)


 ◆


 人形を作り終えたクルミは翌日もまた教会に来て魔力を注いでいた。だが今回は飛んで帰る分の魔力を残し終り疲れ切っていた。恨めしそうな顔をしてラグエル像を見上げた。魔力を止めておかないともっと魔力が欲しいと吸い上げられそうな気がした。クルミは考えたが分からず、はて?と首を傾げた。


「おかしい、今回は魔力を注ぎ込んでも注ぎ込んでもまだ欲しいと奪われていく、まぁいいか、人形も出来たし思い残すことは無いと思う、双子設定どうしようかな?こんな事を母様に相談も出来ないし、もう少し成長したら考えるか、もしそうなったらその時はもう1人の事をそっくりさんで無理やり通そう、」


 では帰ります。とシスターと司祭様達に挨拶をして教会を出れば、小さな精霊が集まっていて光の精霊と火の精霊、風の精霊は成長した子らしい、いつも私の傍にいる闇の精霊がいないのは悲しいけど、今日はやりたいことがあるから、スパッと飛んで帰ることにした。


「みんな今日もありがとう。おうちまで宜しくね!」

(アルゲディ、今日もちゃんと後ろを着いてくてね、前回すぐ居なくなったよね?すぐ見つけたから良かったけど、寄り道したくなったら教えてくれれば良かったじゃない!ライラが近くに居たから良かった。余り私たちを心配させないで、)

「ごめんね。気になったことがあるとつい見に行きたくなっちゃうから、今回は大丈夫!うちに帰って少し寝たいんだ。魔力空っぽだから疲れちゃって、」


 文字通り教会から飛んで帰ったクルミ、玄関まで着けば教会から送ってくれた精霊達とまた次お願いね!とお別れをする。玄関を開け足に浄化魔法をしたらバタバタと階段を登り上がる、もし家に母様か父様が居たら、娘甘々な父様は転ぶんじゃないぞ、とか、バタバタ走るのが嫌いな母様(汗かくのは嫌らしい)は魔法で転移しなさい!と怒られていただろう、20段ある螺旋階段を登り切り、2つ目の扉を開けばクルミの部屋にたどり着く、ちなみに扉は3つある。手前の1つは両親の寝室で、もう1つ奥の扉はあかずの部屋だ何があるのか知らない、自分の部屋の扉を閉め慣れない足で走り疲れた身体と呼吸を整える。

 部屋は窓側に沿って花柄の布で作られたベッド、なんて言ったってお気に入りはベッドのマットレスだ。この世界凄いの!雲を好きな硬さに固めてベッドマットが作れる、もちろんクルミも出来るが魔法がそこまで持たない、祈りのチカラは外で使うのはご法度、どうしようかと頭を悩ませていたら娘に激甘な父様が登場、

 甘えた顔をして上目遣いをする「父様が作ってくれたのがいい!」とわがままを言えば、父様ニコニコと3つも作ってくれたんだ、お礼は大好き!って抱きついたらすかさず頬ずりされたけど、娘に甘々な父様が大好きだから受け入れた。そしたら体調に合わせた方が良いと硬さが違うマットレスは3つも部屋に要らない、空間ポッケは最初に覚える魔法だからそこに入れて保管してある、

 クルミが絵を描き始めた次の日に突然木を持ってきた。いや空間ポッケに入れていたとはいえ重いだろうと言う本当に大きな木の板、よく持ってきたなこれがあの時の私の感想、「よーしクルミ、優しい父様が頑張って作ってやる、これは昔地上に居た友達に教えてもらったんだ。」と手作りで作ってくれた自分の机に肘をつき祈りたいことを明確にする。自分の中にいる姉さんはまだ寝てるらしく起きた気配はない、中に居る姉さんは教会に着くと毎回すぐに寝てしまう、起きる時間も教会から出たらすぐの時もありマチマチだが、今日は長い時間寝ている。クルミがベッドに入り寝ている時は一緒に寝てるらしい、


「ミク姉さんの願いは大精霊王ラグエルに忘れて欲しいか、だけど大精霊王ラグエルは一緒に居たいか、まぁ今の名前はララ君だよね、そんでもって来世も絶対一緒に居たい、って言うかこうして聞くと重いな、でもララ君が今も一緒に居たいと言い出さないだけまだマシかな、姉さんの願いはララ君からの解放と言うより、ララ君が命を削って魔力を注いで守っていたからララ君を自由にしたいんだろうな、
 それに私たちの世話ばかりしてたミク姉さん、自分の自由の時間は無かったのかも、」


 前世の姉ミクを思い出してなんだかしんみりとしてしまった。確かに姉ミクは社交的な性格ではなかったが、ふんわりと微笑む姿はとても優しく見える。
 実際小さな子供や年配の人達と仲良くなるのが早かったし面倒みもいい、料理も手際良く美味しく掃除も完璧、ミシンなどを使った裁縫技術は凄かったが、絵は不得意だから弟のマサには売り物のワッペンか私達姉妹が書いた絵をプリントし、それをワッペンにして縫い付けていた。もちろんお姉ちゃん子のマサは大喜びで夜遅く帰ってきた母さんに自慢してた。
 私達姉妹に可愛がられてきたマサは、小学生の中学年になってもミクお姉ちゃんが大好き、もちろん友達とも遊ぶけどお姉ちゃんと家でアレコレしてるのが大好きな子供だった。けどあの事故以来夜中にワンワン泣いて母さんと私達姉妹は肩を寄り添い眠っていた。中学生に上がるまで情緒不安定で一緒に眠っていたが、学校でいい友達と先生に出会えたのは良かった。部活一筋になり高校では全国大会で優勝した。スカウトも来てたが大学に進み就職した。大学在校中運命のイタズラなのか、マサはお嫁さんを連れてきた。その名前が姉さんと同じミクさんだったのはビックリしたよね。でもとてもいい子で良かった。

 姉ミクをモデルとし書いた小説、その中の主人公である祈りの乙女アルゲディ、
 この世界は現在十中八九クルミが書いた小説の中の世界で確定だろう、アルゲディ編は長編になっていた。なんせ人の寿命よりも長く生きる。空の人族の平均寿命は800歳とても長い、だがそれは普通の空の人族の寿命だ。風の精霊王を代々受け継ぐ空の人族の長、大精霊王ラグエルのチカラを受け入れてるため5倍程長生きだ。今の空の人族長シャムは幼い見た目をしてるが1500歳位とツブヤッキーの公式が言っていた。

 アルゲディは料理や掃除や勉強などの才能は点数を付けるなら満点だ、しかし絵になると全くの別で才能は皆無幼稚園児だってもう少しわかるものを書く子がいる。
 そんな姉を見本にして書いたからなのか今のクルミも絵心は全く無い、だが絵は力技で解決すると決めている。祈りのチカラ、
 試しに両親の絵を描こうとしても元は分かるのにそのまま絵にならない、見かねた両親にやんわりと絵は人前で描かない方がいいと言われてしまう程の腕前、でも私は知っている、両親は私の絵を額縁に入れ寝室に飾っているのを見てホンワカとしてしまった。言い出したのは父様みたいだから流石娘に甘々だよ、って思いながらも今なら姉さんの気持ちがわかった気がした。


「けど自由とはいっても色々あるよね。私は成人が済んだら地の人族の街に行きたい、なんせ帝国編はあの人と出会うキッカケになる場所でその人は推しにそっくりなんだよね、だけど同時に私が空に帰るキッカケにもなる街。何か作業をして忘れよう!うん…そうしよう!」


 単純作業は好きだ。だけどやっぱり頭の中で考えてしまい無心にはなれなかった。同時に魔力も空だった事も思い出し粘土を空間ポッケにしまう、椅子にもたれかかって大きくため息を吐いた。
 最近気になってること、それは教会で魔力を奉納してる時だ。いつも通り魔力を奉納をすると、もうこれ以上はいらんとばかりに魔力が押し返される、最初は力ずくで魔力を奉納していたが、最近は全く受け付けないため諦めた。もちろん今回はほぼ空まで魔力を持っていかれてしまった。
 今回は成功だろう、魔力を使えば使うほど魔力を受け止める器は大きくなる、魔力量が多ければ何かと便利な為ガシガシ増やすことが今のクルミの目標、だか最近新たな悩みが出来た。

 前世の姉のミクに今世の名前アルゲティと呼んで欲しいと、そう姉さんに言われてしまった。
 前世の小説を思い出し、ララ君を召喚したらまさかの姉ミクが自分の中に現れた。
 前世の事を忘れようと思っていた。だが独りじゃないと思い出した時どんなに嬉しかったか姉のミクは知らないだろう、嬉しくて嬉しくて「ヒャッホーイ」と叫びながらうちの真上を飛んだら、母様に「うるさい」と怒られた。怒られても怒られても無邪気に笑うクルミを見て叫ぶならせめて遮音の結界を張りなさい、とそこで初めて結界の作り方を教わった。この世界の魔法はイメージはとても大切なの、カラオケボックスをイメージしたらすぐ出来た。

 だが悪いことばかりでは無い、前世の母さんもとても優しい人だったが、今世の両親もとてもいい人だ、父親の娘バカが過ぎると思うがそれはそれだ。前世で父親が居なかったからこんなんなのかな?と思うくらいである、高校生時代のクルミの友達は親の愚痴は言っても拒絶反応までは言わなかったな、と思うがそれも過去過ぎてうろ覚えだ。


「そういえばうちの娘サチの反抗期は凄かったな、就職したら落ち着いて子供が出来て苦労したからか「母さんあの頃はごめん」って謝ってきたっけ、それを聞いてめっちゃ嬉しかったし報われた気持ちにもなった。私あんなに子育ての事で悩んでたのにすっかり無くなったわ、まぁ結局自分の子供は可愛いから許しちゃうよね。」


 前世のクルミには一人娘が居た。病気をすることも無くすくすくと成長した。ロングヘアをツインテールにしてあげると某美少女戦士の髪型がいい!とお団子頭にしてた。小学生高学年まではとても素直で可愛い頃だった。もしそれが前世の娘だったならと考える、可愛い盛りの娘にクルミの全てを拒絶され、「お母さんなんて大嫌い、」なんて言われたらあれやこれやと構ってしまい鬱陶しがられるのだろう、だからか今世のタブエル父様がペタペタ触るのも分かる、だが前世の娘サチは付かず離れずの距離感が好きな子だった。その為メソメソする夫を「成人を迎えればきっと大丈夫よ、女の子は男親にはそうなるものなの、」と慰めていたし、無事成人を迎え娘の反抗期も落ち着き3人でお酒を呑んでお祝いもした。娘も気恥しいのかまだ多少のトゲトゲした言葉もあったが、完全な無視じゃないだけマシらしい、その姿を見た娘はその日からお父さんを頼るようになった。
 前世の夫がお酒を呑みながら泣いてたのを思い出し懐かしさと寂しさが込み上げる。

姉さんって呼ぶ事が出来ないのは寂しいが、いつまでも甘えられないな、と思いベッドにダイブしてゴロゴロしてそのまま昼寝をしてしまったからだ。

ララ君は窓の外でイライラしていた。なぜならクルミが願い事をしない、クルミは自分の欲望のまま祈るのに、


「そうだいい事を思いついたにゃ。我ながら天才だと思うにゃ、」


ならどうするのかクルミの意識が無いうちなら中にいる最愛を外に出せるなら、弱った魂も少しは良くなるだろう、
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