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間話

アウラ

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バタバタしてた間に1ヶ月が過ぎ去っていきました。もう少し更新頻度上たい。
拙い小説をお読み下さりありがとうございます。次回更新から新章になります。



アウラは王妃達と別れ客間に入ると、お茶を入れようとしていたラケルタに1人にして欲しいと言うと、テキパキとお茶と菓子をテーブルの上に置くと、アウラに1枚の栞をそっと手渡す。歪な形をした花を形を紙に貼り付けてある。アウラは鎮魂の儀式の時にトゥカーナが少女から花束を貰い、押し花にすると言っていた事を思い出した。

「アウラ様、トゥカーナの侍女から預かりました。あの侍女は、お嬢様の役に立ちたい、そう言って厨房に入り王妃様とお菓子作りをして主を待つと、アウラ様がしっかりしないと愛おしいトゥカーナ嬢も心配します。...まぁ俺の主様は気が短いらしい、後、余り気を落とすな。それだけです。」

「...しばらく1人にしてくれ、頭の中を整理する。」

「承知しました。何かあればおっしゃってください。すぐに駆けつけます。」

ラケルタは弱りきっているアウラに1度心配気な視線を送り頭を下げ部屋を出た。アウラは人の気配は遠くなるまで立ち尽くした。
テーブルの上にはカーナが貰った花を侍女が押し花にした物があった。それは先程ラケルタが置いたもの、歪な花だがカラフルな紙に付けられ、テーブルの上に置かれていた。

糸が切れた人形の様にヨロヨロと毛足が長い絨毯に両ひざと頭を着け項垂れた。こんな姿ラケルタが見たら心配するだろうが、幸いな事に先程部屋から退出したばかりだ。

「お願いだカーナ!帰ってきてくれ!」

ミューがいれば違ったのかもしれない、今は自分1人だけ、アウラは弱音を吐き弱弱と何度も拳を絨毯に叩きつけたが、毛足の長い絨毯はアウラの気持ちとは裏腹に何度も拳を優しく受け止めた。
そこでアウラはふと思い出した。自分はアルゲティの血を引くものであると、もしかしたら何かしら自分も出来るのではないかと、

「祈ってみよう、僕もカーナと同じ場所に行きたい、」

自分の可愛い婚約者が帰ってくる様に膝を立て祈った時だった。白い光が自分の目の前に現れ膨れ上がった。そして部屋一面が光に包まれた。

「これは...眩しい!」

一瞬の出来事だった。チカチカする目が光に慣れた頃、周りの光景を見て目を疑った。先程まで部屋の中に居たはずだった。カラフルな背の高い建物や、空を飛ぶ大きな鳥みたいなもの、騒がしい音楽があちこちから聞こえる。不思議な場所、キョロキョロと見ていると1番聴きたかった声が聞こえた。振り返ると会いたいと願っていたカーナの姿、髪色は少し戻りつつあるが、まだオーキッド色が強く出ている。アウラはたまらずカーナを抱きしめた。

「ア…アウラ様?なぜここに?」

「カーナ会いたかった!心配したんだ。さぁ帰ろう、」

だがアウラはカーナを見つけると、もう離したくないとトゥカーナを抱きしめた。トゥカーナは自身の翼でアウラの身体を抱きしめ、身体に異常がないか確認する。カーナは元々背丈は小さい、そこが可愛いんだけどとアウラは更にギュッと逃げ出せない様に強く抱きしめる。背丈は出発前よりも少し小さいが抱きしめたカーナはとてもいい匂いがして柔らかい、顔を見れば金色の瞳の色素は薄く、角度を変えて見ればオーキッド色に見えなくもない、

「まさかこの子が貴女が言っていた可愛いあの子の…私の...うぅぅ…」

横から鳴き声が聞こえると同時だった。優しくポンと頭に手が置かれ髪形が崩れない様にそっと撫でられる。
カーナを離さない様にして横を見ると、優しく僕の頭を撫でる女の人、その背中には空の人族の特徴である大きな翼があり、アウラはハッとする。この女の人がアルゲティ様なのだろう、サラサラとした長い髪はオーキッド色、キラキラした金色の大きな瞳からは、真珠の様な涙が次から次へと流れ落ちている。

「僕はカーナに会いたいと願ったらここに来たんだ。」

「アウラ様でもここは、みら…」

アルゲティは指を1本トゥカーナの口元に持っていき、これ以上話させない様に閉じさせる。

「トゥカーナこの場所の事言ってはダメですよ、この子がここから帰れなくなります。それにここは私の魂を持ったトゥカーナと私しか来られない場所、
そう貴方がアウラ、あの人に似たとても素敵な名前を付けてもらったのね。1つ忠告します。アウラは私の血が入り強く出てしまっている。強く願い叶ってしまった。けどもう願ってはダメ、それにあなたは空の人族でなく地の人族、アウラあなたの命はとても短くなります。それでもいいですか?もう1度使えば隣にいる可愛い奥さんと過ごせませんよ、」

「アルゲティ様それはとても困ります。カーナはいつ帰ってこられるのでしょう?」

「流石ね。あの人はいつも皆にとても優しくて...いいえこの話は止めましょう。アウラあなたの婚約者は必ずあなたの元に帰すと祈りの乙女である私アルゲティが約束しましょう。シャム様やライラ母様と父様には帰ったら怒られると思う、帰ったら母様の拳骨が痛そうね…。父様も今回だけは庇ってくれなさそう。」

そこまで聞くとアウラの身体から光が溢れ出す。アルゲティはじっとアウラを見て慌てた。これ以上この世界にいてはいけない、慌てて両手を組み合わせ祈ると、アルゲティの白く大きな翼は辺りを照らす様に白く輝き出した。

「私は祈りの乙女アルゲティ、大精霊王ラグエル様に願います。この者を元の場所へ返してください。」

アルゲティは両手で優しくアウラを抱きしめた。アルゲティのココロがあの人との再会を喜んでいる。だがこの人アウラは愛おしいあの人ではない、だって愛おしいアウストは私を庇い空に帰ってしまった。覚悟はしていた。だが現実はとても残酷で、自分だけ生き長らえた事を激しく後悔し懺悔を繰り返した。

「アウラに祝福がありますように、」

アルゲティが祝福のキスをおでこにしようとした時、アウラは両手でおでこを押え拒絶した。

「カーナがヤキモチを妬きます。」

アルゲティも知っていたらしい、やっぱりね。と残念そうに笑う、

「あなた達の国に何かあれば私は協力を惜しまない、そうあなたに誓います。」

アルゲティはこの件が終わったら、今まで心配してくれた司祭様達がいる教会で、静かに暮らそうと思っているとトゥカーナは聞いた。
トゥカーナはアルゲティに抱きしめられているアウラを見ていると、どこかで見た事がある光景だなと考え過去を思い出す。



畳の部屋でミクは少し時間が出来きゲームを始めた。すると妹弟がミクの周りにやってきて、あれやこれと好き好き言い始める。これがいつもの光景であり日常だ。

ミクはコントローラーをテーブルに置くと、ミユキが持っている本をパラパラと捲った。確か前にミユキがヒロインがある事をすると、王子は祈りの乙女に恋をするルートが存在する。と聞いてからずっと気になっていた。
クルミのノートには、王子が祈りの乙女からおでこに祝福のキスを贈られる。そのキスをしてしまうとヒロインはアウラのルートには行けないらしい、
ミクは自分のおでこに手を当て思う、ほっぺたとかじゃないんだ。外国の映画みたい、と、隣りにいたミユキが笑いながらミクを見る。

「本当にミク姉は王子様好きだよね。けど今日はルート変更するの?珍しい、」

「なんか惹かれるんだ。王子様をついつい見ちゃうし気になっちゃう。ミユキ流で言うなら、このゲーム沼に沈めてくれてありがとう。ってやつだね、」

「どういたしましてミク姉。ねえ次はこのゲームやらない?」

「これだけで十分よ、ここでルート変更するとどうなるんだろうやっぱり止めようかな。」

マサはゲームを見てるよりも私の横にいて漫画を読んでいる。ミクはなんでと聞くと、お姉ちゃんの横が落ち着くからと離していた。
ミクはノートをクルミに返すと、両手で頬ずえをつきゲーム画面を見る。そこには祈りの乙女とヒロインが共に協力をして、街に祈りを捧げている場面、ここでの答え次第で隣国の王子様ルートかいつものルートアウラにいくかが決定される。

「まぁそれよりも、こんな素敵な人が現実にいたら私なんて眼中に無いと思うし、もっと綺麗な人の所に行く、だって私ならそうすると思うもの、もちろん性格の綺麗さが重要だけど、」

「あーそれ分かる!だから私もゲームで現実逃避するもん。」

「ゲームの世界に入れたら、とか異世界転生でもしない限りない!私の最推しレオニス様に出会ったら余裕で萌え死ぬ、彼もれっきとした王子様だよ。」

「「それミユキだけ!」」

クルミと声が揃った所で2人して大笑いした。ミユキは何でよ!と声を上げるが、結局自分も笑っている。ミクは笑いすぎて涙が出てきた。指で涙を拭きながら家族の顔を見る。

「こうして笑っていられる事が幸せ、」

「私達家族は不滅ね!」

「もうクルミったらその言葉は古い...でもそうね。私がおばあちゃんになっても家族みんなで笑ってたいわ、」

マサが突然ミクの膝に抱きつき甘えてきた。小学生に上がってもまだまだ甘えん坊さんだ。ミクはマサの頭を優しく撫で、どうしたの?とマサに聞くがマサは答えようとしない、更にゴリゴリと太ももにおでこを擦り付けられ痛くて涙目になってきた頃、そこでやっとマサは話す気になったらしい、太ももに顔を埋めたまま話す。

「僕はお姉ちゃんの事大好きだから、僕が王子様ならお姉ちゃんを迎えに行く、」

「本当にお姉ちゃん子だよね。マサはミク姉がお嫁さんに行ったらどうするの、」

「お姉ちゃんは僕が王子様だと嫌?」

マサが顔を上げると顔は真っ赤で半泣きだ。ミクは慌てて涙を指で拭いてやる、そしてマサにおいでと言ってギュッと抱きしめてあげると、マサは安心したのか顔を上げる。先程王子様が祈りの乙女から贈られるキスの再現をする様に、

「ヒュー!祈りの乙女ルートだね。」

ミユキはそう茶化すとクルミと一緒になってミクに抱きついてきた。
ミクは流石に3人も抱えきれず後ろに倒れてしまうが、姉弟4人で笑いあう、
笑いが落ち着いた頃ミクは起き上がると、妹弟3人まとめて抱きしめた。こんな幸せがあっていいもだろうか?

ミユキはくすぐったそうに笑い、クルミはちゃっかり今日の夜ご飯をリクエストする。マサは恥ずかしいのか顔を私のお腹に埋めたままだが、やっぱりおでこをゴリゴリと押し付けてくる。

「ありがとう。私の大好きな王子様とお姫様、今日の夜ご飯はリクエストに応えてハンバーグにしましょう。」

「やった!私も手伝うね。祝福に感謝しなきゃ!」

1人づつおでこにキスをした。すると妹達もお返しと皆で祝福のキスを返し笑い合うとても幸せな時間...。

この数ヶ月後ミクは弟を助けたが、自分は溺れてしまい転生してこちらに来た。



楽しい記憶はそこで終わりを告げた。頬に伝って何かが流れている。指で掬うと涙だった。あの頃妹弟と一緒でとても楽しかった。ボロボロ流れ落ちる涙をそのままにしてトゥカーナは考える。
先程はルート変更の祝福であったと、そしてそれをアウラは自ら拒否した。祈りの乙女ルートから見事にアウラは外れた。という事になる。トゥカーナは自分の心のままに生きよう、そう決意した。王太子妃は大変かもしれない、王太子は未来の国王であり民の見本になる。
今から考えるのはとても恥ずかしい事だけど、アウラ様との間に沢山の子どもを産み育てる、
私がおばあちゃんになったら、膝に猫を乗せてゆっくり過ごしたい、それがトゥカーナの夢である。

トゥカーナは嬉しくて両手をギュッと胸の前で組み、アウラを見つめていると、アウラ様の手に何かあるのが分かりじっと見る。この位置からではそれが何なのかわからないが、首の位置だけを変え見てみるが紐だけが見えただけで分からなかった。

「カーナ」

トゥカーナはアウラに呼ばれ目を合わせた。アイスブルーの瞳は今にも閉じてしまいそうだが、力強くトゥカーナを見る。トゥカーナは伸ばされた手に触れたくなり自分も手を伸ばした。

「アウラ様!」

アウラはトゥカーナの手を絶対に離さない様に握る、
だが逆にトゥカーナはまだやる事があるのです。そう言って笑うと力の出ないアウラの手を離した。アウラは何度も手を限界まで伸ばし、トゥカーナを捕まえようとしたが、トゥカーナはアウラの手が届かない位置に立ち頭を下げる。

「アウラ様この地が最後だとアルゲティ様も言ってます。心配しないで下さい、私は必ず帰ります。」

「カーナこれを...必ず帰ってきて欲しい...僕は君がいないと嫌だ。僕の隣りは他の人では務まらない、僕はカーナしかいらないと誓おう、だからカーナも誓って欲しい、」

「私もあなただけと誓います。帰ったら私は私のままでいられます。だから少しだけ待って下さい。」

アウラは持っていた栞を差し出すと、栞はふわふわとトゥカーナの所まで飛んで行った。
アウラは栞はカーナに渡さねばならないと思った。トゥカーナに栞を受け渡した所で、強烈な眠気に襲われたアウラはそのまま眠ってしまいこの地から転移した。

「これは押し花?」

トゥカーナはアルゲティからじっと見られている事が分かっていても、アウラの居た場所に立ち栞を見つめる。

「トゥカーナ。熱烈なプロポーズだったわね。こっちが恥ずかしい位の、...もしこの事を姉さんが知ったら驚きそう、これが現実なんだもん。」

「えっアルゲティ様は、お姉様がいらっしゃったのですか?」

「秘密。ねえトゥカーナ好きな人からのプロポーズされた今の気持ちを聞かせて?」

「い!今の気持ちを言うのなんて無理!」

アルゲティの最後の言葉と、悪役令嬢と言う言葉を聞いてトゥカーナは聞き戸惑う、もしかして私と同じ所から来た人?と思ったが、そんな人はそうそう居ないだろう、
アルゲティはトゥカーナの言葉を誤魔化しつつ「やるわね」ケタケタ笑いながら肩をバシバシ叩いた。
一方肩を叩かれてるトゥカーナは口では痛いと言うが、顔から火が出る程恥ずかしい頭と膝を抱え座りこんだ。「私は何を人前で言ってるんだ?」自問自答を繰り返していて、顔を隠したりしないと恥ずかし過ぎて耐えられない、
しゃがみこんだトゥカーナをアルゲティは優しく包み抱きしめる。アルゲティから甘く優しい花の香りがする。親子だからライラさんと同じ物を使っているのだろう、そんな事を考えている間に気分が落ち着いてきた。

「はは~ん。その様子だとトゥカーナの王子様はいつもそんな事言っているのね、あの人もそうだった。...さて!私の孫達が見れて良かった。さぁトゥカーナ、ここで祈って終わり、助言の事もそうだし貴女には迷惑を掛けたと思っているの、私の魂は貴女の身体から私の身体に戻るわ、そしてあなたはいつもの生活に戻ることが出来る、」

ねえあなた悪役令嬢だって知ってるのでしょう?
アルゲティに突然トゥカーナはそう言われギョッとしてアルゲティの顔を見る。
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