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間話

フィレムとシャムの秘密のお話3

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「フィレム、この子達の事アウラ達に秘密にして、前にこの子達...ククとメメを使って、私はとても酷い事をしてしまったから、」

フィレムは突然の告白に戸惑ったが、シャムがアウラ達に何をしたのかまずは聞く、突き放す訳では無いが聞かなくても聞いても困るのはシャムである。フィレムはルクバトを1度見て視線をシャムに合わせた。

「シャムわかった約束するわ、でもねシャム、まずは訳を聞かせて、聞かないと何かあった時困るのはシャムよ、それ位分かるわよね?それとルクバトが聞いても大丈夫な話?」

シャムは構わないと話した。フィレムにこれまで自分がしてきた事を話す。そしてトゥカーナをエニフ王国から拐わせたのは自分であると、話しながらシャムは時折涙をうかべて懺悔を繰り返す。

「その話ミラとミューから聞いたわ、」

「最初はからかうつもりだった。つまらないから、暇だからって」

なぜしてしまったのかと何度も何度も謝罪の言葉を口に出した。フィレムも黙ってしまいしばらく沈黙が続いた。その沈黙に助け舟をだす様にライラの声が聞こえる。

『えぇいいわよ…ルピー。でも私が先生だと厳しいわよー。それに決めるのは私じゃないわ、まずはご両親の許可がいるわね。』

ルピーが母親に尋ねる声が聞こえる。

「本当に自由ね彼女」

「でしょ?ライラの娘のアルゲティも、夫のタブエルも呆れるくらいとても自由よ、その自由っぷりにため息が出るわ、」

フィレムは呆れた声を出しているが表情は明るい、

すると風に乗ってルピーとライラの楽しげな声が聞こえる、ルピーの行儀の先生にと話になると、ライラは了承してしまった
シャムは空間ポッケから書き物を取り出し手紙を書くと、風の精霊がシャムの周りを1週してフワリと空に消えた。どこに行くのかは精霊の自由なのでシャムは手を振り見送った。



「フィレムはククとメメを知ってる?」

「...えぇもちろん。むしろククとメメを見て、思い出したくない事を沢山思い出しそうよ、」

「やーんフィレム様、メメそんなに褒められると恥ずかしい...ククと一緒にフィレム様の闇を覗いちゃうぞ!」

「私に闇なんてないわよ、知ってるでしょ?私は光の精霊王よそれにメメ私は褒めてないわ、はぁ...メメは相変わらずね。」

フィレムは頭が痛いと盛大なため息を着いた。ククとメメは対象人物のココロの闇を感じることが出来る。これは大精霊王様が持っていた力であった。拐われた頃のトゥカーナは夢の影響で恐怖対象は青髪の帝王であった。
青髪の帝王に装飾品だと言われ、布の少ないドレスを着せられる、そこまでなら前世(ミク)の記憶があるトゥカーナなら耐えられただろう、夢の中としてもトゥカーナは年頃の娘である、
だが人前で突拍子もなく、布の少ないドレスを破られ翼までもがれたら痛みがなくても恐怖でしかない、

「祈りの乙女が産まれてこないのは、アルゲティの魂をあの子が持っているからって思っていた。けど今は...、自分はなんてつまらない事をしたのだろう、後悔しても仕方ないのは知ってる、過去はどうしたって変えられない...。」

ククはシャムの話を黙って聞いていたが、顔は下をむいているが、シャム達からも見てわかる程に、ニィと薄ら笑いをする。シャムは眉をしかめフィレムはククを見て過去を思い出す。

「それ俺のせいだから気にしてはいけないよ、始まりの乙女シャム様、それに祈りの乙女は大精霊王様が始まりの乙女の願いを聞くための者、シャム様が気に病む事はない、もし気に病むなら俺はその者を空に返そう、」

「あなた達にお願いしたのは自分よ、これは私に責任があるもの、あなたは手を出さないで、」

「っ!...」

フィレムは声にならない悲鳴をあげる。フィレムにはあるトラウマがある。あれは2代目の風の精霊王でもあるメルクの時代にある事件が勃発した。

祈りの乙女にあるものを引き換えに、頭痛と共に思い出す。祈りの乙女に消してもらった貰った過去、ガラスが割れるように昔の記憶が溢れ出す。フィレムは真っ白になり目の前の視界が揺れる。
ククとメメに会ったのは数回程度であるが、あの出来事は惨事あった為思い出したくもない。前回ククとメメに会った時の事を思い浮かべ笑顔を引きつらせる。

「この子達は確か…ククとメメ?あなた達どうしてここに?」

「うっわ怖!お前らどこから来やがった?!」

フィレムは見覚えのある精霊を見て驚きながら優雅に手を振るククに慌てて手を振り返す。
魔法陣に手を当て一連の流れを見ていたルクバトは、周囲に魔法や転移も感じなかったのに、いきなり現れたクク達を見て恐怖で叫んだ。
ククは「怖いなんて酷い」と笑いながら、屈んで動けないルクバトの背中に勢いよく座った。乗られたルクバトはククが勢いよく座った事で背中がしなるほど痛く、眉と目を思いっきり歪ませククを見る。

「おい!重いんだよ!降りろ」

「重いなんて酷い!だからモテないんだよ、女の子に重いなんて言ってないよね?まさか言ったことがある?」

「なっ?!ち、ち、違うフィレム俺は!あの時わざとじゃない!」

ルクバトの顔が真っ赤だが、フィレムも同じく真っ赤になって両手で顔を隠す。あの日の事を思い出しさらに赤面する。



昔のルクバトは天狗だった。人々から火は恐れられ誰も火の精霊王であるルクバトに手出しできない、火が唯一の苦手属性でもある水の精霊王ミラは内気で大人しい、当時のミラは暴れ回るルクバトの姿を見ると逃げ回っていた。その姿を見てルクバトは気を良くしてしまう、
暴れて走って逃げる途中、フィレムが目の前に居たのに気が付き足をひねり体制を崩した。それまでなら自業自得だが、焦ったルクバトが転ばない様に咄嗟に掴んだもの、フィレムのドレスを掴んだがルクバトが倒れ込んだ後フィレムが落ち下敷きに、ルクバトはそこで思ってもない一言を放つ、乙女に1番言ってはいけない1言「重い」と言ってしまったのだ。日も暮れ辺り一面暗闇に光の精霊が集まり一斉に光って辺り一面が白くなった。慌てて駆けつけたスワロキンが精霊から訳を聞くと、ルクバトはフィレムと光の精霊に謝った。フィレムは
その後ルクバトがどうなったのかお察しである。

「ルクバト!昔の事を掘り起こさないで怒るわよ!」

「アハハ!なんでフィレム様の名前が出てくるの?えーもしかして好きなの?だってー無…モゴ」

「失礼しますも!クク様それ以上は言わせないんですも、それにご自身にデリカシーがない事位、ニブチンなルクバト様は分かっていますも、」

ルルはぬいぐるみサイズになると、ククの背後に回りこんだ。小さな手で両手で余計な事を言うククの口を押えた。ククは愉しげに口をモゴモゴとさせる、楽しげに何度か頭を振り解こうとしたが、けしてルルは手を離さない、これ以上の暴言は聞きたくない、ククは小さなため息を吐くと諦めたらしい、
ルルに好き放題言われたルクバトは、傍から見ても気落ちしてる。

「ルル…お前だけは違うと思っていたのに…」

「ごめんなさいですも、言動は気をつけた方が良いんですも、フィレム様は」

「ねぇルル…それ以上は止めてあげて、ルクバト泣きそうよ。」

また何食わぬ顔でシャム達に笑顔で手を振るが口はルルに押さえられたまま、からかわれたルクバトはプルプルと震えていて怒っているのだろう顔は赤いを通り越して真っ赤だ。見かねてシャムは止めなさいと手を大きく横に振りククを止めるが、ククは口を押えられていても、前に進めー!とルクバトの背中の上で手と足をばたつかせている。

「俺はここから離れられないの、シャムお前の為の魔法陣なんだからお前から説明しろ!」

「クク聞きなさい、ルクバトは今私の魔力の流出を押える魔法陣を起動してくれてるの、ルクバトを許してあげなさい、紹介するわルクバトの上にいる子はクク、頭を下げてるのがメメよ、私の大事な花畑や屋敷を管理してくれてるの、私よりも長生きだからフィレムは知ってるのよね、歴代空の人族の長を手助けする精霊よ、
ククメメ私の魔力がどこにあるか確認してきて欲しい、確認出来たら調査もお願い、ククそろそろ悪ふざけは止めなさい、」

「ごめんなさいシャム様、なかなかいい椅子だったよありがとう!喜んでククさっき思いついたわ、あなたの名前を決めてあげるわ、名前はイス!いい名前だよね!」

メメはわーいと幼子の様に無邪気に喜ぶ、両手を高く上げパチパチと手を叩く、その姿を見てルクバトは怒りよりもどっと疲れと呆れが出る。

「おい...勝手に名前をつけるな。それに俺は椅子じゃ無い、それに俺には名前はちゃんとある。名前はルクバト大精霊王様がこの名を与えてくれた。ちゃんと覚えておけよ、それより足をバタバタとさせやがって痛えじゃねえか、」

ルクバトはククが背中から降りた事を確認してから、ペタリと疲れた様に座り込んだ。けしてモテないとか言われたからでは無い、フィレムは仕方なさそうにしているが、顔を見れば焦っている、ルクバトに駆け寄ると、痛む背中を優しく摩りルルは治癒魔法をかける。

「ルクバトごめんなさい。この子達を先に行かせれば良かった。クク、メメお願い、」

「了解シャム様、じゃあ私達は始まりの乙女の魔力を追えばいいよね?」

メメは可愛く首を傾げる。けどシャムは追加のお願いをする。打てる手は打っておかなければならない、

「メメ、祈りの乙女の魔力もお願い、今代の祈りの乙女アルゲティがどこかに居るらしいの追えるわね?」

「えー!私の魔力は祈りの乙女を追う為じゃないのに!いいよシャム様、帰ったらメメにあれ頂戴!ククもお願いあるなら言いなよ。」

メメはプーっと膨れ顔をしたが、隣にいるククと話し合いをするとジャンケンをしてすぐに決まったらしい、
シャムはあれと言われたものがなんなのかすぐに分かった。シャムは空間ポッケからバスケットを取り出し中身を確認する。バスケットの中は乾燥させた色々な果物が入っていて甘い香りが漂う、シャムは目の前に居るメメに「これよね。」と手渡した。
手渡した瞬間メメはわーおー!と大喜びをしてバスケットに飛びつきキラキラとした瞳でシャムを見つめる。
だがククは相変わらず身動きしない、メメの横でじっとシャムだけを見つめ立っている。シャムは気にせず愚痴をこぼす。

「先払いよ、暇な時に沢山作っておいて良かった。あなた達は私の魔力しか受け付けないのは面倒ね。」

「シャム様それは仕方ないよ、私達はシャム様の近くにいるし、あの場所にいればシャム様の魔力で溢れていて不足することも無いからね、それに約束したしシャム様の魔力の行方を最優先にするとして、ついでに祈りの乙女を探すね!もし見つからなかったら仕方がないよね、後は強制的に街に帰らせるしかないよ、だって祈りの乙女は始まりの乙女の為にいるんだもん。」

そう歴代始まりの乙女の日記には、祈りの乙女に色々として貰ったと記録が書かれている。メメは歴代乙女が祈りの乙女に何を願ったのか教える。

初代始まりの乙女は、大精霊王といつまでも長く暮らしたいと祈りの乙女に願った。

2代目は地の人族の事をもっと知りたかった。だから祈りの乙女に末永い時の交流を願った。

3代目は色々研究がしたかった。空の人族は今まで空を飛び移動していたが、一瞬で移動したいと思い祈りの乙女に願い魔法陣を生み出してもらった。ここから地の人族

4代目が何をしてたかメメは知らない。ククは知ってるが、何度教えてくれない、

5代目は楽しく暮らしたいと思った。だから色々思い付いた物を空の人族と共に作った。だがどうしても作れない物だけを、街の人々と一緒に祈りの乙女に願い作り出してもらった。甘い菓子屋やオシャレなカフェ、湖が綺麗な緑豊かな森や公園、空の人族の街が発展し人々が豊かに過ごせるのは5代目の力が大きい、

6代目は祈りの乙女に疑問を抱いた。祈れば願いが叶うなら始まりの乙女はいらないのでは?と、疑問を抱いたからだ。だがもう少しで真相にたどり着きそうな頃、始まりの乙女の魔力が暴走し6代目の記憶は消えていた。そこからは何も疑問に思うことも、感じる事もないまま日々を過ごしたという、

7代目シャム様は何も願っていない、願おうと考えた事が無かったと言えば嘘になる。願う事をしなかった。ただそれだけの事、

メメは物事をはっきりと口にするし、時折可愛らしく首を傾げて話すが、ククはジーっとシャムの顔を見てるだけ、シャムは表情が出ないククが苦手だ、
何代か前の乙女の日記に書いてあった。人や動物が喧嘩する時は先に視線を逸らすと負けるらしい、それは精霊にも適応されるらしい、シャムは負けたくないと目に力を入れ、メメとククを交互に見る。

「そうあなた達なら追えるでしょ?あなた達は祈りによって作られた存在であり、当時の祈りの乙女が一晩中祈り産み出された精霊よ、そして大精霊ラグエル様と始まりの乙女の魔力を強く持ってるでしょ?
始まりの乙女の番人として、乙女にだけ過保護な大精霊王様から様々な許可を貰ってるのよね。魔力の事あなた達お願いね。」

シャムはツンと横をむいたが、ククはシャムの腕を掴みこちらへ向かせる為に引っ張った。驚いたシャムは手を振り解こうとしたが、足は動かないので結局力負けしてしまう、ククにもたれ掛かる格好になったが、ククはシャムの身体に触ることなく魔法でゆっくり座らせた。
ククはシャムと視線を合わせるように少し屈む、何を考えてるのか分からない薄い緑色の瞳と目が合う、笑う訳でもなく怒る訳でもない不気味な顔、目の前に来たククをシャムは小さな悲鳴を飲み込みククを睨む、ククは睨まれても表情を崩す事は無く無機質な人形の様にシャムの瞳をじっと見る。

「ではシャム様これはお願いでは無い、あなたに警告をする。強い言葉で言うが俺達は番人として言うだけ、もし始まりの乙女の御身に何かあったら俺達は大精霊王様に怒られてしまう、たとえシャム様が会った事が無くても、それが大精霊王様に与えられたククとメメの役割。
俺達は大精霊王様がどこにいるか言えない、この世界に存在してるのは分かる。なんて言えばいいのかわからないけど魔力を感じるんだ。メメは始まりの乙女の魔力を補充し、俺の魔力は大精霊王様の魔力に偏ってる。大精霊王様は始まりの乙女から男という男を排除したかった。それが自分の子供であってもね、だから始めの頃は四六時中始まりの乙女と共に過ごしていた。」

ククがそこまで話すとメメの方に視線をやる。視線に気がついたメメは両手を後ろに組み、スキップしながらこちらにやって来た。シャムはメメが来るのを見て安堵のため息を付いた。しかしククの口から次から次へと日記には無い話が出てくる。シャムの顔は凍りフィレムも言葉をなくし固まっている。メメは目の前にいる2人の様子を気にすること無く、まるで昔あった楽しい話をする様にニコニコと話の続きを言う、

「むかーしむかし、シャム様が住まうあの場所には1人の男がいました。男の仕事は夜に閉まる門を守る事、だが誰もその門の先に何があるのか分からない、男は誰も来ない門を1人で何年も守っていました。
その日も男は門番をしながら、森にいる大人しい動物や鳥を眺めていた。そんな日々が続いたある日の事だった。いつも来る動物が来ない事に寂しさを感じながら森の中をみると、ピンク色の髪と瞳を持った始まりの乙女が1人で森の鳥や動物と戯れていました。優しく微笑みかける乙女に男は一目見て乙女に恋心を抱いた。」

男が女を愛すのね!素敵だわ!とメメはわざとらしく笑うと両手を胸の前で組み合わせるが、すぐにパッと手を離した。シャム達を1度見て囲む様に1周ぐるりと飛び回るとシャムの目の前で立ち止まり、パッと両手と両足を開きニィーと笑う、

「なんで知ってるかって?メメ達の大好物それは大きく揺れ動く感情、
たとえば大嫌いから大好きに変わる感情が特にメメは大好き!でも始まりの乙女のシャム様はダメー!」

そこでメメは腕を高く上げて頭の上で大きなバッテンを作った。「浮気はダメー」と、もちろんメメからしたら悪い事なんてしてないし、言ってもいない、メメの表情はとてもいい笑顔だ。
シャムもフィレムも表情が固まってしまっている。メメは気にせずまた話し出した。

「話がだいぶズレたけど、門番が恋をした始まりの乙女がいつもニコニコと話すのは大精霊王様だけ、門番に勝ち目は無いから諦めればいいのにね。始まりの乙女が大好きな大精霊王様はずっと離れず側にいました。ある時大精霊王様は門番が乙女に恋をしてる事に気が付きました。幸いなことに乙女は気がついてない。
この場所と乙女に何かあれば精霊達が教えてくれる。お前の恋心は俺は知っている。空の人族の父に逆らって罰を受けたいか?と、ラグエル様が門番に話すと、顔を青ざめた門番は始まりの乙女の住む場所を守る門番を止めてめでたく街の門番になりました。でもーあの後すぐにあの門番街から居なくなったんだよね。精霊から聞いたんだけど、何人か地上に降りたらしいよ!」

シャムは目を白黒させてメメを見て、ククを見ればククは人形の様に黙ってシャムをじっと見ている。怖くなったシャムは咄嗟にフィレムの手を掴もうとしたが、何だか気恥ずかしく寸前で手を下ろし、自分の足の上で握りこぶしを作ったが、フィレムはすぐに気がついてそっと自分の手をシャムの手の上に乗せる。

「でもねこの話を詳しくすると、はじめ大精霊王様は役割を剥奪しようとしたんだ。だって番人が恋をした乙女は大精霊王様のつがいなんだ。
だけど1度失敗をしたから役割を剥奪なんて可哀想、と始まりの乙女は言いました。そこで自分の子供達が住む街の4ヶ所ある門番の1つを任せました。
キャハハ!まぁ空の人族はみんな始まりの乙女と大精霊王様の子供なんだけどね。
大精霊王様に嫁いで長い時間を過ごした乙女は、大精霊王様に願った『1度生まれ故郷に帰りたい』とね、大精霊王様は条件付きで了承した。それはメメを連れて行く事、ラグエル様は私に言いました。『乙女を知る者がいたら空に返せってね。』精霊じゃないんだしラグエル様も冗談キツイですよー。って笑ちゃった!
肝心の乙女は数百年経っているから自分の家に帰りたくても帰れない、そりゃ時が経ちすぎて産んでくれた親も空に帰ってるし、周りの誰も始まりの乙女の事を知らない、乙女は泣きながらラグエル様の所に帰りました。乙女の悲しみを以降の乙女が忘れない様に、ラグエル様は生まれ変わりの乙女を親からすぐに引き離す事にしました。めでたしめでたし!」

メメの話が終わるとククが1歩前に出るが表情はやはり人形の様に無表情、対してシャムは話を聞いて顔が青くなっていた。すぐにフィレムは気が付き勇気づける様に両手でギュと握りしめると、安心したシャムもフィレムの手を握り返し2人でククを見る。

「シャム様俺達は始まりの乙女だけは危害を加えない、それに大精霊王様が居ないからといえ、自分勝手な行動をされると困る。それに俺達は始まりの乙女の番人として勝手な行動に許可出来ない、
シャム様の身に何かあれば空の人族の存亡に関わる事になる。
1つお願いがあります。この件が終わったら屋敷から出ない事、シャム様の魔力量を見れば沢山消耗しているのが分かります。俺達は見るだけで魔力量がわかる。それに始まりの乙女のあなたは俺達に守られる貴重な存在である。」

それ位はわかりますよね?ククに無表情で言われシャムは顔をこわばらせる。もし足が自由になったら...そう考えていた。ライラが提案してくれたルピーの行儀見習いの先生、どうしてもやりたい、だけどククとメメに止められてしまえば、今まで守られてきた始まりの乙女とてどうすることも出来ない、ククは俯いてしまったシャムを見て動揺から視線をさ迷わせメメを見る。フィレムはそれを見て心底驚いたが顔には出さない、

「メメ行こう。シャム様行ってきます。」

「はーい!シャム様!フィレム様行ってきまーす。椅子君もバイバイ」

椅子と呼ばれたルクバトの顔は若干ひきっつていて、だがメメに言われた事に反論はするらしい、先程までと違い声は小さく元気がない、

「俺は椅子じゃねえよ、」

「キャハハ!ルクバトだよね?知ってる知ってる!」

「わざとかよ!!」

メメはそんなルクバトを気にすることも無く背中から黒い翼を出した。2人はふわりと空高く飛び上がると魔法陣を作りスっと消えた。
翼があることから空の人族と同じなのだろうとルクバトは考えたが、フィレムもシャムも黙ったまま空を見上げていた。
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