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帝国編

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あけましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。ゆっくり更新は変わらないです。



ケーティ視点

綺麗な天使様から羽根を貰ってから、私は毎日寮でその羽根に祈りを捧げた。すると羽根は不思議な事に虹色に変化した、私はなんとも不思議な気持ちになる、
一緒に祈りを捧げていた精霊が側に来て何かを呟く、最初は何を言っているのか分からなくて、首を傾げていたが、何度も聞き直し分かった。

「空の人族の羽根?」

光属性の精霊は肯定する様にふよふよと上下に動く、再度あの綺麗な天使様を思い浮かべる、トゥカーナ様が染まってしまった髪色、それと同じ髪と瞳の色の天使様、あの時無礼も承知で尋ねてしまったが、トゥカーナ様は言えなかったのだろう、何か関係があるとしか分からなかった。

私は天使様は空の人族と認識する、私達はなんて呼ばれているのだろう?ふと疑問に思ったが、知らない方がいい気がして、緩く頭振り考えない様に日々を過ごす。そしてあっという間に日々は過ぎ、明日から夏の長期休暇が始まる、学園から帰ると着替えや荷物を纏める、

「ロロが誤って触らない様にしないとね」

ロロは私が小さな頃から家にいるメイドで、ちょっとおっちょこちょいな所がある、見つけても何もしないのは分かるのだけれど、少し前にエニフ王国行きが決まった為、この羽根を陛下に見せようとしていた見せる前に何かあっては、お父様やお母様に迷惑が掛かってしまう。

夏の長期休暇が来て短い挨拶が終わると、長期休暇中エニフ王国に行くトゥカーナ様達を見送る為、私達は街に来ていた、エリーゼ様とムスカエ様とヒドゥリー様と私の4人、
馬車を降りるとヒドゥリー様に兵士が近づき耳打ちをした、急な用が出来てしまったと肩を下げ渋々王城に戻って行く、
私達は一緒にお見送りをする為に、教会の近くに来ていた。少し高い場所を陣取ったら、後は馬車が通り過ぎるのを待つだけ、私の横から後ろに立ったムスカエ様は周りを気にしながら私達に話し掛ける、

「この後どこかに行くのか?買い物なら付き合うが」

「お気遣いありがとうございます。買う物はありませんこの後王城へ行きますので、」

「私は流行りのお菓子を貰いましたの、お茶を飲みながらゆっくりと過ごしますわ。ムスカエ様は何かされるのですか?」

「俺は長期休暇後に騎士の試験が控えている、父上と剣を交えて訓練する」

「ムスカエ様のお父様は騎士団長でしたわね。剣術頑張って下さいませ。」

「ムスカエ様なら大丈夫です!合格出来る筈です。あれだけ練習なさったのですから、」

茶色の瞳を大きくさせ私を見た時、私達の目の前を白い馬車がゆっくりと通って行く、私達は大きな声で見送った。すると先にトゥカーナ様が気が付き、王太子様と一緒に私達に手を振る、
エリーゼ様は私の横で隠れる様にして、トゥカーナ様達に手を振っていた。
そんなエリーゼ様が可愛らしくて微笑んでしまう。
馬車が目の前を通り過ぎれば解散になる、ザワザワとした騒めきが疎らになった頃に私達は歩き出す。

「トゥカーナ様とのお茶会・・・お約束を出来ませんでしたわ」

エリーゼ様は憂いた顔で言う、私達の前を歩いていたトゥカーナ様と同じクラスの令嬢は、立ち止まりこちらを向くとボソリと言葉を零す。

「トゥカーナ様はいつ帰って来れるか分からないと、お茶会の約束は全て断っていました。お姉様でもあるボレアリス先生とのお約束も保留にされてました。」

「そうなのですのね・・・仕方がありませんわ。」

エリーゼ様は家族でさえ断っているのなら無理ですね。と肩を落とす。その姿が余りにも不憫で、私は声を掛けようとした。

「あの・・・」

「し・・・仕方がありませんわね。ケーティ様長期休暇中時間がある様でしたら私とお茶会をしましょう。美味しいお菓子を用意しますわ。
屋敷に篭もりっぱなしもつまらないですもの。」

「ありがとうございます。時間を調べてお手紙をお出ししますね。」

私は王城へ向かった。私はその事をエニフ王国に行く際、羽根が虹色に染まった事を陛下に伝えた、プラチナブロンドの髪を後ろに撫で付けた宰相は陛下と目配せした後に前に出て話す。

「ケーティ嬢それは内密にお願いします。」

「分かりました。ですが、天使様の綺麗な羽根、私が持っていても大丈夫なのでしょうか?」

「それはトゥカーナから聞いてます。ケーティ嬢なら大事に扱ってくれると、この事は王族とトゥカーナは知ってます、ですが、他の方には言わない様にお願いします。
エニフ王国にはケーティ嬢の他に魔術師を2人送る事になってますが。1人は女性ですのでエニフ王国迄の道中は安心でしょう。」

「ケーティ嬢土壌調査宜しく頼む、後、あちらの願いがある様なら、聞ける事は聞いてやって欲しい、アウラとトゥカーナ嬢も居る、何かあったら相談する様に、後アウラがトゥカーナ嬢にイタズラをしてしまい、トゥカーナ嬢の髪色と瞳の色が変わってしまったらしい。息子には言い聞かせたが変に驚かない様に頼む、」

陛下はニコニコと嬉しそうに私の顔を見ていたが、王太子様の話しになると困った顔をしていた。
宰相はトゥカーナ様の話になると、目が少しだけ下げ寂しそうに笑っている、私は陛下達にニッコリと微笑んだ後、「承りました。」とカーテシーをしてその場を去る、

バタンと重い扉が閉まると重苦しい空気になる、それはそうだろう、宰相は危惧していた事の1つでもある、トゥカーナ嬢の髪色と瞳の色が変わってしまった。ここで見せてもらった精霊魔法も効かなかったらしい、実際に見た訳でもない、手紙の報告のみ、

チラリと見た宰相ルクバーは深刻な顔をしていた。未来の可愛い娘が望んだ事だ、エニフ王国に向かったとはいえ心配にもなる、クルキスは立ち上がると宰相に頭を下げた、驚いたのは宰相だった。

「陛下お止め下さい!下臣に頭を下げるなど」

「公式の場でも無い、最終的にトゥカーナ嬢に許可を出したのは私だ、すまないと思っている、」

「行くと言ったのはトゥカーナ本人です。それに多少の覚悟もしていたと思います。」

「・・・そうか・・・宰相少し書斎に行く、300年前・・・8代前の王サギッリの事を調べる」

「承知しました。調べ物ですか?お手伝いします。」

「うむ、宰相・・・いや、ルクバー頼む」

ルクバーはエメラルドの瞳を細め笑う、陛下が名前で呼ぶ時はプライベートになった時だ、学園からの付き合いだから互いに分かり合えるのだと言えるだろう、

「ではクルキス陛下行きましょう。可愛い娘と王太子様の為です。」

「うむ、可愛い娘と可愛い息子の為だ」

謁見の豪華な扉が閉まると、その扉の前に1人の女の人が立っていた。こちらを向き赤い瞳を嬉しそうに細める、魔術師のローブを羽織り、胸元には上官の印でもある銀糸でアウストラリスの国印の盾と翼が刺繍されている、ちなみに魔術師の団長クラスだと翼が銀糸で刺繍され、盾は金糸で刺繍されている、それと紫の髪を高い場所で1つで結った人。私はこの特徴的な紫髪と銀糸の刺繍で副団長だと気が付き礼をする。

「お初にお目にかかります。エニフ王国に一緒に向う副団長様とお見受けしました。私ニュー伯爵家長女ケーティでございます。」

「貴女がケーティ様ね。私はザウラク、私は貴族では無いんだ呼び捨てで構わない、ただ話し方だけは治らないんだ、流石に王族の前ではしないけどね。」

「私の事はケーティで構いません。私の様付けは癖だと思って下さい、道中よろしくお願いします。」

赤い瞳を曲げ白い歯を見せキラリと爽やかに笑う、
近くを通り掛かったメイドはザウラクの笑顔を見て、顔を赤くして通り過ぎていく、私は顔が赤くなったメイドを見て首を傾げ、気にせずそのまま話を進める。

「出発は明日ですね。姫様の好きなお話の絵本も作りました。姫様が喜んでくれると良いのですが、」

「ケーティが一生懸命作ったんだろ?大丈夫姫様も喜んでくれるさ、姫様の所は今回で3回目の派遣になる、前回派遣された魔術師から聞いたが、姫様の髪が染まらないと言われ、前回の派遣で姫様の魔術師嫌いが酷くなった、今回は魔術師でも特に優秀なケーティと魔術師団長マーコックの息子ヒドゥリーを連れていくんだ、明日は宜しく頼む」

「はい!ではまた明日ですね。」

ザウラク様と別れ屋敷に帰ろうとしていると、レオニス様が前から来るのが分かった。私は挨拶をしようと頭を下げようとしたら、レオニス様から声を掛けられた。いつも優しく声を掛け私を気にかけて下さる、

「頭を上げていいよ。ケーティ嬢エニフ王国に行くのは明日だったね。気を付けて行っておいで」

「レオニス様ありがとうございます。これからどちらに行かれるのですか?」

私はレオニス様を見上げニコリと微笑み、レオニス様の紫色の瞳は優しく私を見る、

「今からお茶を飲もうと思ってね。お茶に付き合ってくれないか?エニフ王国の話も少ししておきたい、と名目上の理由を付けておくよ、俺と2人でお茶を飲んでいたなんて噂されても、ケーティ嬢が困るだけだからな、」

レオニス様は肩を竦め私を見る、けど紫色の瞳に困った様子は無い、人払いしている訳でも無いから、後ろに護衛の人も聞いているが止める様子も無い、だから私も名目上の理由を付ける事にした。これならレオニス様も困らないだろう、

「フフ・・・はい。では私は姫様の為に作った絵本を、レオニス様に見てもらいたいです。」

「絵本ケーティ嬢が作ったのか?!凄いな!」

絵本の事や最近精霊と話した事等を話をして、急に開かれたお茶会はお開きになった。

次の日ヒドゥリー様と挨拶していると、副団長と一緒に話をしていた魔術師団長は長い緑髪を揺らし、ゆっくりとした足取りで来た、ヒドゥリーは首を傾げて団長を見るが、団長は笑いを堪えた様なニヤケ顔をして、息子のヒドゥリーの横に来た、そして肘で数回横腹を突く、突つかれたヒドゥリーは痛そうに顔を歪め脇腹を押える、団長がこちらを向いたので、私は咄嗟に両手でお腹を隠す、団長は目を丸くして驚いた顔をしたが、首を横に数回振ると、流石に令嬢にはしないと紺色の目を細め苦笑いしている、

「ケーティ嬢息子を宜しく頼む、」

「はい魔術師団長様、ヒドゥリー様道中宜しくお願いします。学園では同じクラスなのですよ。」

「父様痛いです。いきなり突っつかないで下さい。ケーティ嬢とは学園でお会いしてますから、ケーティ嬢宜しくお願いします。」

ヒドゥリー様は瞳の端に着いた涙をハンカチで拭くと、ローブをスカートの様に持ち挨拶する、学園ではローブは着ていない為落ち着かないと話していたが、これが出来ないからかと納得する。ヒドゥリー様が挨拶をされたので、私もスカートの端を持ち挨拶をしていたら、団長がいきなり大きな声を上げた、

「ヒドゥリー!ローブの端を掴んで挨拶しない!」

「ひゃい!父様すいません。でも!いきなり声を上げるなんてびっくりするじゃないですか!」

「ハハッ!親子喧嘩か!私もやったな」

私は突然の大きな声でビックリして団長を見たが、副団長は微笑ましい者を見る様に団長達を見る、私はすっかり忘れてましたが、ヒドゥリー様は男の人でした。

ヒドゥリー様は拳を上下に振り、団長に講義している、
私は姿を見て思わず笑ってしまった、学園では絶対に見れない姿ですから、
学園では紺色の瞳を優しく曲げ微笑んでいる印象が強い、見た目は細身で色白、度々女の子に間違えられる事もあるが、勿論女子からの熱い視線もある、
同じクラスの令嬢達が話をしているのを、私も聞いた事がある。『あの瞳に吸い込まれそうなの』とか『他の人には無い気品がある』令嬢は話をしていた。

授業が終われば閉校時間まで、トゥカーナ様と一緒に練習したあの魔法訓練所に居る印象しかない、後は王城に呼ばれればそちらに居る位、私が少し考え事をしていた間に、団長に講義が終わったのか、ヒドゥリー様は私の方を見て頭をちょこんと下げた後に、私をエスコートする為に手を差し出す、その手は大きく筋張っていた。私はその手を取りヒドゥリー様を見上ると、紺色の瞳は困惑した様に揺れている、女性に慣れてらっしゃらない。と私は何ともない様に微笑む、

「ヒドゥリー様の手は大きいですね。私の手が小さく見えます。」

「えぇ魔術の練習の時、岩を砕いたりしますから」

今回はローブを掴んでいない、団長はそれを見て横で強く頷いていた。

「ケーティ嬢お待たせしました。行きましょう」

「はい、ヒドゥリー様エスコートありがとうございます。でも副団長様は?」

「私は要らない、何だかそれ落ち着かないんだ、」

「そうなのですか?分かりました。」

そのまま王城の転移魔法陣から教会に転移した後、教会内の転移魔法陣がある部屋に到着した、中は広く馬車が軽々と入る位だった。
私は魔法陣の部屋に入ると、天使様の銅像を見上げていた。銅像は髪は長く両手を広げ微笑む様に立っている、
その姿がどうしてもトゥカーナ様に似ている気がしていた、この銅像はかなり古くからある物だから違うと、頭を振っていたらヒドゥリー様が私の両肩に優しく触れ話し掛けてきた。

「ケーティ様・・・嬢大丈夫?転移で気分が悪いとか?」

「いいえ大丈夫です。この銅像は昔エニフ王国が建国したばかりの頃に、アウストラリス王国に宛てた贈り物でしたね。」

「ケーティ嬢詳しいですね。」

「ケーティは勉強熱心なんだな。」

ヒドゥリー様と副団長が声を揃えて流石だねと言う。
私は喋り過ぎたと口元を押さえた後曖昧に微笑む、精霊から聞いたとはいえ、この天使様空の人族の話は内密、どうしようか?と考えた時、あの天使様の絵本を作るのに、エニフ王国から教会の本を借りていて、そこに銅像の事が書かれていたのを思い出した。

「えぇ、絵本を作るのに貴重な本を借りましたので」

「あぁ!それでですか?!」

ヒドゥリー様とザウラク副団長様は納得したので、ザウラク様と3人でたわいも無い話しをする。
転移先で馬車に乗ると、私達はザウラク様に魔術相談をしていたが、いつの間にか話の内容が恋の話になっていた。

「私は性格が男っぽいのか令嬢達に恋愛相談をされるんだ、私は恋愛よりも研究が好きだから、最初は相談されても分からない事が多かった、けど最近になって分かった事があるんだ、
令嬢達は相談と言いながら、既に心の中では決まっている、話を聞き頷くだけで令嬢達は納得する、
令嬢ってこの手の話好きだな、私は城のメイドや街を歩いている令嬢達に好きなタイプをよく聞かれる、研究の話をしても首を傾げられて終わるんだ、」

何でだろうね?と爽やかに笑い赤い瞳を緩める、私は首を傾げザウラク様とヒドゥリー様を見ると、ヒドゥリー様は肩を落とし力無く答える、
 
「副団長その笑顔ですよ、令嬢達やメイドはきっとその笑顔を見に来てるのですよ。令嬢達がこぞって何故魔術練習所に来ているのわかりますか?全て副団長目当てですよ?」

「私は女だから同性には興味は無い、しかし見学に来るのは興味があるからだろ?魔術師が増えると良いな!ケーティは気になる異性はいないのか?」

ザウラク様はチラリとヒドゥリー様を見る、先程の話の内容を理解したのか紺色の瞳を見開いた、口元はパクパクとさせ震えている、ヒドゥリー様は日に焼けていない白い肌は耳まで真っ赤にして、私とザウラク様の顔を交互に見て小刻みき首を振る、

「ぼ・・・僕が聞いてはいけない話なのでは?!」

「恋愛は研究よりも難しい、だけど人の気持ちを知る事もこれからの人生には大切だと私は思う、・・・この旅で是非2人の中を取り持って欲しいと、団長から頼まれたからな。」

ザウラク様は最後は早口で小声で話した為、最後まで聞こえなかった。私はヒドゥリー様と目を合わせる、ヒドゥリー様も分からなかったらしい、お互いに首を傾げザウラク様を見る、
ザウラク様は私達に爽やかに笑うとまた話を続けた、

「ヒドゥリーとケーティは好きな人とか居るのか?」

「い・・・いません、」

ヒドゥリー様が緩く首を横に振るのを見て、私は身近にいて、ここ1年で頻繁に会う異性を何人か思い出す。
学園で会うのは隣りのクラスのムスカエ様、同じクラスのヒドゥリー様、後王城で会う王弟レオニス様、街で買い物に出ると視察帰りのトゥカーナ様のお兄様ペルセイ様に会う、その度に『妹から良くしてもらっていると聞いている』と試作の紅茶や緑茶を貰う事もある、王太子様にも会うが違うと首を振る、2人の仲を見ればその中に入る余地もない程だと、 学園やほかの令嬢からも話をよく聞く、

ザウラク様は赤い瞳を私に向けているが、その眼差しは優しく、私の答えを待っていた、私は人差し指を口元に持って来て答える、

「ザウラク様それは乙女の内緒です。そろそろ着くみたいですよ」

「乙女の秘密なら仕方が無い諦めるとしよう。」

ザウラク様は頷くと馬車の外を見たので、私とヒドゥリー様も視線がそちらにいく、

「草木が少ないですね。」

「あぁ、ここら辺はまだマシだ、まぁ調査の時に嫌と言う程分かる。」

馬車がゆっくりとしたスピードで進み、私達は軽く検問を受けてから門を潜る。
エニフ王国に着くと、青と白の建物が沢山あって圧倒されてしまい、馬車からキョロキョロあちこちを見る、丁度鎮魂の儀式が終わり疎らな時間らしく人は少なかった。スムーズに馬車は進み、王城に着きエントランスに通されると、オレンジ髪の男性が立っていた。ザウラク様があの方はエニフ王国の宰相だと教えてくれた。ザウラク様が1歩前に出る。私達は挨拶する為にスカートの端を持つ、ヒドゥリー様はローブを掴みそうになったが、なんとか手を胸下に持っていった様だった。

「お待ちしておりました。お茶を用意します。もう少しここでお待ちください。」

「お出迎えありがとうございます。お心遣い感謝します。」

宰相が頭を下げメイドに目配せすると、メイドは私達を小さな部屋に案内し、お茶を準備し始めた。
小さな部屋といっても20人は軽く入る程でした。
白く長いテーブルには、レース編みされた空色のテーブルクロスが引かれている、
メイドがお茶を入れ前に置くと、お菓子が乗ったお皿を1人づつ前に置く、お菓子はふわふわとした白い物で、それを口に入れるとすぐに消えて無くなった。

「うわー!ふわふわです!紅茶に砂糖を入れなくても、お菓子の甘さで食べられそうです!」

「本当だな、甘い物は疲れた頭を癒すと聞いた事がある、これを作った?なぜこんなにふわふわに?どの魔法を使ったのか?」

「わー。本当に美味しいです!クセになります。」

ザウラク様はスイッチが入ってしまったらしく、ブツブツと何かを呟き、ヒドゥリー様はもう1つふわふわお菓子を手に取ると、ウットリとした顔でそれを見る、それぞれが感想を言い合っていると、ノックが鳴るとメイドが扉を開けると、宰相が笑顔で部屋に入ってきて軽く頭を下げ礼をした。
私達は立ち上がり礼をとろうとすると、宰相はそのままでと手で示す。

「お菓子は如何でしたか?王妃様が作られた新作です。昨夜の食後デザートとして初お披露目したばかりの新作です。」

「えっ!そうなのですか?凄く美味しかったです。」

王妃様の新作だったなんて!この国のお菓子はどれも美味しく、アウストラリス王国の貴族令嬢達にもとても人気がある、エニフ王国に行けば必ずお土産としてお菓子を買って帰る程、手頃な値段から贈り物用の高級品まである為とても重宝されている、ヒドゥリー様は頬が紅潮し紺色の目をキラキラとさせ感想を言う、その姿を見れば恋する乙女の様にも見えてしまう、

「不思議な感じです。ふわふわして可愛くて美味しいです!」

「これはどの様な魔法を使い、この様なお菓子を作ったのです?是非とも聞きたいです。」

ザウラク様は先程の続きを話しをしていた。
宰相は「皆様お褒めの言葉をありがとうございます。王妃様にお伝えします。」と困った様に笑い聞き流す。
ヒドゥリー様とザウラク様の感想が逆なら、宰相も困らなかったと思う、

「お待たせしました案内します。」

私達は宰相の案内で謁見の間へと通され、そこで3人横に並んで頭を下げ待つ、なぜか私が真ん中でザウラク様に、「挨拶お願いね」と言われてしまう、

「頭を上げなさい。」

頭を上げると王妃の横にトゥカーナ様がいる、髪色はあの時染まってしまった髪色、そして天使様空の人族と同じ髪色、もしかしたらトゥカーナ様は・・・
私は挨拶をしながら考えていた。

「アウストラリス王国の協力に感謝します。今日は長旅の疲れを癒し、明日から調査を願いますね。そうね・・・また例のアレをお願いしてもいいかしら?あの子も女の子なら怖がらないと思うのよ。」

「お任せ下さい。」

頭を上げると、トゥカーナ様に安心して欲しくてウインクをした。
あっ!トゥカーナ様が微笑んでる、

その後先程迄いたトゥカーナ様が行方不明になり、精霊王様を呼び出したが、トゥカーナ様の行方は分からなかった。

羽根を見せると、王太子アウラ様は顔には出さないが、上着の胸の部分をシワになりそうな程、強く握りしめていた、
私は何も言えなかった。それでも何かを言った所で慰めにもならない、口を開きかけて閉じた。
王太子アウラ様に羽根を返して貰い姫様の部屋に行く時間となり、メイドが迎えに来てしまった。

「失礼します。」

と礼をして出たが聞こえなかったらしい、この後どうトゥカーナ様を探すのかを考えているのでしょう。
私もとても気になります、姫様が楽しみにしているので気合いを入れて頑張ります。と自分に喝を入れる。

私はメイドに案内されて王城の奥に奥にと案内される、恐らく城の1番奥に来たのでは?と思う程歩いた。目の前に背の高い柵が見えてきて、まるでそこだけ外に居る錯覚になる、門を開け中に入る、
小さな庭とあちこちに蔓が巻き付いた古ぼけた建物、
これが私の第一印象だった。

「・・・姫様の部屋はここですか?」

「そうでございます。」

メイドは淡々と答えノックをする。
中から優しげな年配の侍女が扉を開け私を中に入れた。
パタンと扉が閉まると侍女に聞いてしまう、本当にここは姫様の部屋なのだろうか?

「アウストラリス王国から派遣されて来ました。ニュー・ケーティです。」

「私は姫様の侍女をしていますリリでございます。」

「あの・・・姫様は本当にここに?」

「はい、王家の事情でございます。口出しは御遠慮下さい。」

「い・・・いえ!そんな口出しなんて・・・あの姫様は?」

侍女のリリさんは私は慌てて首を横に振り否定する。
本題に戻したいが姫様が見当たらない、ザウラク様が言っていた、魔術師嫌いが出ているのかもしれない、
私は手に持っていた絵本を大きな声で読み始めた。リリさんは驚いた顔をしていたが、内容を聞き優しく微笑む、

「昔、女の子はお庭でピクニックをしていました。美味しいお菓子とサンドイッチを作ってもらって、女の子はとても楽しそうです。空を見上げると、とても綺麗な天使様が空を飛んでいました。」

私が玄関先で大きな声を出し絵本を読んでいたからか、奥の扉が少し開いた。そこから綺麗な青髪がひょっこりと出て、次は海の様な青い瞳が見えた。その青い瞳は続きをせがむ様に見ているので、私は続きを読み始めました。

「空を飛んでいる天使様は元気がありませんでした。女の子は天使様はお腹が空いていると思い、天使様を呼びました。
『天使様!ご飯一緒に食べましょう』女の子は声を掛けたけど、天使様は首を横に振りました。女の子は困りました。
次は元気になる歌はどうだろうと、元気になります様にと想いを込めて歌を歌いました。天使様はまた首を横に振りました。」

姫様は扉を開け私の前に来ると、小さな手で私の手を引っ張っると、リビングのソファへ連れて行くと「どうぞ」と座らせてくれました。顔を見ると青い瞳は潤んで今にも溢れそうです。

「天使様どうしちゃったの?」

「天使様が気になりますか?では続きを良みますね。」

姫様は泣きそうになりながらも力強く頷くと、私は続きを読み始めました。

「女の子は天使様の事が分からなくなりました。女の子は思いっきり大きな声で言いました。『天使様お友達になって下さい!』天使様はそこで頷きました。聞くと寂しかったと、女の子は天使様とお喋りをしてピクニックを楽しみました。」

お終いです。とテーブルに開いていた絵本を閉じると、姫様の青い瞳がキラキラと輝いていて。興奮した様に私を見る、

「良かったね!天使様とお友達になれて、ルビーも天使様とお友達になりたい、でも・・・」

姫様の名前はルビー様と言うのね。私もしんみりとしてしまい、言葉が出なかった時、不思議な事が起きた。読む時に絵本から抜き出したあの羽根が意思がある様に動き出し、風が吹いた様にふわりと私から抜け出した。
私や侍女のリリさんや姫様も羽根を見る、

その羽根は意思がある様に窓から外に出て行く、先に反応したのはルピー姫様で玄関から走って追いかけた。
次はリリさん、私は一足遅れて出て行こうとしたら、リリさんは腰を押さえ座り込んだ、私が治癒魔法を掛けようとすると、リリさんは首を横に振ると、姫様の走った方へと指をさした。

「申し訳ございませんが、私の事よりも姫様を・・・ルピー姫様をお願いします。」

「分かりました!」

私は走りながら精霊を呼ぶと、お願い青髪の姫様を探してと言うと、赤い精霊がすぐに見つけ出してくれた為大事にはならなかった。
良かったと姫様を見ながら腰が抜けてしまった。

「ルピー姫様羽根は捕まえましたか?」

私は赤い精霊にお礼で撫でていると、姫様は頷くが不思議な物を見る様に精霊を見ていた。

「お願いしたら羽根さんがルピーの所に帰ってきたの。だから逃げない様に本に閉じ込めたの・・・お姉ちゃんその赤いのは精霊様なの?」

「はいそうです。私達はお友達なのですよ。」

私は赤い火属性の精霊をルピー姫様の所に行く様に手を差し出すと、私の後ろから水、土、風、聖、闇の属性の精霊達が姫様の所に行き、姫様の周りでダンスをする様に、上下に動いていた。姫様は精霊に好かれたらしい、

「ルピー姫様凄いです!もう精霊達とお友達になったのですね。手の平をお皿みたいにすると乗ってくれますよ」

姫様は嬉しそうに笑うと手の平をお皿の様にした。ふわり、ふわりと全部の属性が手の平に乗る、姫様は擽ったそうに精霊を見る、

「精霊様私とお友達になって下さい。」

精霊はそれに答える様にまた飛び上がると、クルクルと姫様の周りを回りながら上下に動いた。
青い精霊が姫様から離れ私に話し掛ける、姫様はキョトンと私を見ていた。話し終わるとまた姫様の元へと戻る、

「姫様精霊達もお友達になりたいと言ってますよ。」

「嬉しい!私のお友達・・・ありがとう。」

ルピー姫様は嬉しそうに笑うと、精霊達と一緒にその場でクルクルと回る、
ピンク色のスカートがふわりと揺れ、そこだけおとぎ話を見ている見たいになった。

バタバタと走る音が聞こえ、私は姫様を守る為に抱きしめた。
精霊達は驚いてどこかへ行ってしまった。

「ルピー姫様はここに隠れていて下さい。危ないですからけして出てきてはいけません。」

「精霊のお姉ちゃん何があったの?」

リリさんには名前言ったけど、姫様にはまだだったと思い出した。しかし何があったか見に行かないと、リリさんから頼まれた姫様を部屋に返せない、

「はい危ない事が無いか、精霊のお姉ちゃんが見てきますから、ルピー姫様はこの大きな柱に隠れていて下さいね。」

私は不敬だと分かりながらも、姫様の頭を優しく撫でた。姫様は寂しそうに頷くと柱の影で隠れる様に座り込んでしまった。魔術師のフードを被り音がした方に向かって歩く、
これから起こる事が、両国にとって大きく歴史を変えると知らずに・・・
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