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学園編

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ぼんやりと目が覚め、懐かしく、嬉しい気持ちと、複雑な気持ち、それがぐちゃぐちゃに混ざり合っている、よくわからない気持ちでいると、部屋の中をふわりと花の香りがする。辺りを見回しても花は無く、夢の中の母様の優しい香りに似ているが、来ている訳でも無いらしい。

ふぅと息を吐く、早く寝たからなのか、今はまだ暗い時間。寝たい気分でも無く、照明をつけお茶でも飲んで落ち着こうと、立ち上がり準備をする。

度々夢は見ていて、はっきりとした夢は見た事が無かった。朝起きれば忘れているか、断片的に覚えているだけ、今回はっきりと覚えていて、凄いリアルだった。母様の歌詞までは覚えていないが、どこかで聞いた覚えがあるメロディ、母様の歌は心地が良く、子供なら眠くなる。なのに・・・なぜ今のタイミングなのか、考えれば考える程わからない夢、

考え過ぎて、お湯を沸かしていたのを忘れ、ポットの口から湯気が凄い出てる、慌てて止め、ふぅ・・・と息を吐き胸を撫で下ろす、熱すぎるからポットを少し冷ます。ポットを冷ましている間に、気持ちを入れ替えようとしても、切り替わらないもので、

茶器を取り出し紅茶を入れ、あっ!と思い出す、姿見を見るをの忘れていた。今回は夢だから無いのでは?と思い、立ち上がり姿見の前に立ち確認する。

今回もやはり無く、深く息を吐きソファへと座る。
前回、今回と変化は無かった。呪文が完成しているなら、もう父様は来ないのかもしれないが来たら来たで、対処が母様だけになる。
夢の中のアルゲティ様は父様が大好きで、父様もアルゲティ様が大好き、白い世界で会った時の母様もそんな事を言ってたっけ・・・。

考え事をしていたら、音楽が流れ始め身支度を始める、髪は母様が染めてくれたのを思い出し、チャレンジをするが上手くいかない、母様の魔法は、まるで水の様ですーっと流れる様に魔法がかかり、私のは粘りのある油、たらりと垂れる様に落ちる、んー。ミューだともう少し速く出来るので、自分の魔力なんだろうな・・・

考え事をし過ぎて朝食の時間になり、食堂に向かう廊下の曲がり角で、エリーゼと出会う。
少女漫画ならパンを咥えてぶつかると、恋が始まるらしいが、お互いに女子で、パンも残念ながら咥えていない、その前に下品だ!とか言われるので、今はやらない
(幼少時にクッキーでそれをやり、姉様とロッテに叱られた)私も成長した。

アホな事を考えているが、挨拶はしっかりと済ませた。食事も済ませ学園へ行く、エリーゼと別れ、教室の席に座り思う。

この日常が素晴らしい!平和サイコー!明日は王城へ行くので、お昼休みに申請をしに行く、今までは、初めて出た時は王家からの申請、倒れた時は学園長指示で、今回は自分で申請、

セキュリティがしっかりしていると、申請が多い、確か職員室と門の警備、2ヶ所、頑張る私・・・。

真面目に授業を受け、昼休みになると、私は外出の申請をする為に職員室へ向かう、職員室に帰る先生の後ろに、こっそりとひっそり着いて行く、迷子防止の為、最近自信は無いが私は方向音痴ではない。

職員室に行くと、アリス先生が速い動きでやって来る。姉様入って直ぐなのに良く分かりましたね。

「アリス先生、外出許可下さい。」
「どこに行くの?トゥカーナ」
「王城へ行きます。王太子妃教育があるので」

そこまで言うとアリス先生は、サラサラと紙に申請書を書いてくれて私に手渡す。

「はい!これ門の警備にも、渡してね」
「ありがとうございますアリス先生」

私はニッコリと微笑むと、アリス先生もニッコリ微笑む、あの話を聞いてみる。

「アリス先生聞きたい事があるのです。トランプ大会と、かくれんぼがあると聞いたのですが、」

私がそこまで言うと、アリス先生は手をギュと握り私の目を見る

「大丈夫よトゥカーナ、私が守るもの」
「えっ?何からですか?怖いです。」

アリス先生はニッコリと笑う、私はその表情が怖くてそして寒気で身震いをする。

「敵から」
「えっ?敵ってなんですか?姉様、身内贔屓は止めて下さいね、したら嫌いになります。」

私はほっぺを膨らましプィ!と横を向く、姉様にここまでの意思表示はした事がほぼない、
アリス先生は絶望した顔をすると、大会のプリントを手渡し、ドボドボと席まで戻っていく、私は軽く頭を下げ職員室を出る、そこから門まで行き、申請書を渡してきた。

門からは、帰り道がわからないと警備の人に言ってみたら、ちょうど見回りの時間だからと、分かる場所まで送ってもらい教室に戻れた!ふぅ・・・。と息を吐き、落ち着く、でも寂しくて隣りをつい見てしまう、アウラの席を、明日は朝から王城だから、会えるのだけど落ち着かない。考えるとドキドキしてくる、昨日の方が落ち着いていたよ!私。ドキドキしたまま授業を受け、放課後になる。

「トゥカーナ様、いらっしゃいます?」
「ケーティ先輩!どうしたのです?」
「あれからあの子どうなったのか心配で・・・」

ミューの話しだったので場所を変える事にした。行く場所は屋上、あの小さい花畑ぽい所、ケーティはここを知っていて、人が余り来ない為、最初の頃はよくここに来ていたらしい、

「先輩ミューの事なのですが、まだ母様の所にいるの。いつ帰って来るかはわからないです。」
「そうですか・・・。あのダメならダメと言ってくださいね。母様は誰の母様なのですか?」

こればかりは言えない、もしここで言って、無いとは思うが、それをケーティが他に言ってしまえば、私はどうなるのかわからない、これは王家とお父様との秘密の話しになるから、私は首を横に振り

「ごめんなさい先輩、お答え出来ません」
「いいえ!トゥカーナ様、こちらこそ申しわけございません。」

2人して謝り笑い合う。風が爽やかに吹く、すると部屋の中でふわりとした、あの花の香りがする。

「先輩ミューが帰って来たら、またお付き合いお願いします。」
「トゥカーナ様こちらこそです!お互い頑張りましょう!」

私は明日速いのでと言うと、ケーティが送ってくれると言ってくれて、私は一緒に転移魔法陣部屋へと行く、ケーティに夏の予定はどうなんだろう?と聞いてみる。

「先輩夏の休みはどこか行くのですか?」
「・・・実は、誘いたい方が居て・・・」
「誰ですか?私が知ってる人です?」
「はい・・・でも、まだ秘密です!」

ケーティは人差し指を立てまだシーですよ!って、いつも精霊に言ってる口調なのを忘れてるが、可愛いからOKです!

ケーティに別れの挨拶をして、私はそのまま寮に転移した。
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