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学園編

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「片付けは終わったかい?」
「はいアウラ様。どちらへ行かれるのですか?」
「まだ言えない・・・行こうか」

授業が全て終わると、すぐ私に声を掛けたアウラは、私の手を取り、スタスタと歩き出す。
どうしたのかしら?とアウラの様子を横から見るが、いつもと様子が少し違うとしか、感じなかった。
いつもより歩くペースが少し速い、それでも今は着いて行くしかない、
階段をいくつも登り、渡り廊下を通る、その先は小さな部屋へと続いていた。その部屋に入ると、見覚えのある部屋・・・?転移魔法陣の部屋?

「カーナこれを」
「はい。」

アウラは私の左手を取ると、その中指へと指輪を着け、その横の薬指に口付けを落とす

本当ならここに着けたいのだけど、アウラは甘い笑顔をして、甘いセリフを残すが、私はまだ何故ここに連れてこられているのか、まだ検討も付かずいる。

指輪を見ると真ん中に石が入っていて、学園生活中に着けても、さほど目立たないシンプルな指輪、真ん中の石はアウラの目と同じ色合いのアクアマリン、そのまま部屋の真ん中へと立つと、魔法陣が発動を始め、私達はそのまま転移した。

転移先は、どこだろうか?相手がいくら婚約者とはいえ不安になる、そんな私の気持ちを察したアウラは、王城だと答えそのまま歩き始める。

「アウラ様そろそろ教えて下さい」
「カーナごめん。ここでは話せないんだ」

アウラは何も話してはくれない。その声のトーンは優しく落ち着いている。それを聞き私はちょっと安心し落ち着いた。そのまま王城の奥へと進み歩く、

しばらく歩き続けやがて豪華で大きな扉の前に立つ、両サイドに護衛が立っていて、私達を確認するとその大きな扉を開け始め、私はどこなのかを再認識出来た。

「父上参上しました。」

アウラはそこまで言うと、私をエスコートをしながら、歩き始めた。
私はビックリして頭を下げるがアウラに、顔を上げてと言われ、恐る恐る上げる。

そこは謁見の間、陛下と王妃、陛下の斜め後方に宰相でもあるお父様、
陛下と王妃は私達を見ると優しく微笑み、お父様は私の姿を見て一瞬顔が緩んだが、仕事モードに変わった様子、いつも見るお父様と違い凛々しい。

「さてトゥカーナ嬢ここに呼んだのは、未来の可愛い娘を見たいからではない。実は隣国が王太子を招待していと申していてな、そこに婚約者でもある、そなたも是非にと申しておる、行ってくれるか?」

「招待されている・・・。私に拒否権は無い物と思います、何故それを私に聞かれるのですか?」

陛下は宰相に目配せをする、手紙を持ったお父様がこちらへと来て手紙を私に手渡す、お父様は去り際、私に優しく呟く、この話断っても良いよ、と耳打ちをし陛下の後ろへ戻る、意味がわからず、お父様の顔を見るが、宰相として陛下の後ろに立ちこちらを見ていて、私はお父様の意図がわからなかった。


その手紙をアウラと一緒に開く、私達を招待をした国は帝国・・・!歴史の勉強で聞いた話しでは、帝国はこの王国と和平交渉して、今はとても落ち着いた国なのだと私は教えられている。武器も自国を守る分だけはあると聞くが、かなり昔に空の人を拘束した国でもある。
招待の内容は・・・鎮魂祭?誰の?えっ・・・まさか!アルゲティ様の?

「カーナ・・・無理にとは言わないよ」
「えぇ・・・。でも・・・」

私はかなり動揺していて、手紙を持つ手が震える。
アウラは私の肩を寄せ、私の手紙を持つ手に自身の手を重ね、断っても大丈夫だよと気を使ってくれる。

前に王城で初めてアルゲティ様の話しを聞いたあの日、あの時にアウラが話してくれた「カーナはカーナでしょ?」それを思い出し、顔を上げ気を取り直す。帝国で何があるかわからないが、それでも覚悟は必要。
それでも私はトゥカーナであり、アルゲティ様では無い、私はアウラの手を握り返し、大丈夫ですとアウラの顔を見て微笑む、手紙をそのまま持ち一歩前へ進み出る。私は王太子妃教育で、沢山練習をしたカーテシーを優雅にする。

「陛下私行きます。いえ行かせて下さい。そして帝国を見てきます。アウラ様の婚約者として、同行をお許しください。」

陛下と王妃は心配げに見るが、私が覚悟を決めた事を知ると、宰相に目配せをし、前に陛下と王妃がこちらへと降りてくる。私は慌てて頭を下げようとするが、陛下にそのままでと言われ、そんなやり取りの間に私の目の前に立つ陛下と王妃、どうしていいのかと、頭の中がパンクしている私を見た王妃が、
気を使わせてしまったわね。と呟くと私の傍へと1歩近づくと、私の両手をふわりと持ち上げ、私の目を見て微笑む。

「トゥカーナ様、鎮魂祭とは言っても今はお祭りになってます。余り気を張らない様に・・・ね。毎年陛下と行っていたのです。今年は王太子でもあるアウラに是非にと言われてね。」

「この様に呼び出しすまない事をした。アウラも内容もほぼ言えず呼び出しをした、余り責めないでやってくれ。トゥカーナ嬢何か変化があったら、その度にアウラに相談を、」

「陛下、王妃様お気遣いありがとうございます。はいアウラ様に必ず相談をします。それで・・・鎮魂祭はいつ頃なのですか?」

アウラは夏の長期の休みの事で、ソワソワとした様子だっので。その時期なのでは?と思いつく、そして思わずアウラの顔を見てしまう。

「カーナ鎮魂祭は来月だよ。だけど心配は無い」

アウラは私を安心させる様に微笑み肩を寄せる。
私は来月の夏の長期休みは、帝国へと出掛ける事が決定した。
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