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18話 浮気を目撃された
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「だから! 浮気なんかしてないって!!」
「嘘つかないでよ! 私の友達が見たって言ってんだから!!」
友人が住むアパートに到着すると、ドアを開ける前から言い争いの声が聞えていた。
「おい、外まで聞こえてるぞ」
バイト上がりで呼び出された私は、少し不機嫌に部屋に上がり込んだ。
「だって!」
「俺の言うことが信じられないのかよ!?」
2人のやり取りからおわかりだと思うが、友人カップルの仲裁に呼ばれてしまった。
なぜ私が呼ばれたかというと、この喧嘩の前日に私とこの彼(仮にAとする)が、一緒に学部の飲み会に参加していたからだ。
「陽木! 昨日の飲み会、ホントに男だけの集まりだったよな?」
「ん? あぁ、男だけだったよ」
彼をかばうわけでも何でもなく、むさくるしい男ばかりの悲しい飲み会だった。
「ほら見ろ!」
「飲み会はそうだったかもしれないけど、解散した後は!?」
ちなみに私は男女平等な人畜無害な人間として扱われていたため、この彼女(仮にBちゃんとする)は私の言うことを素直に信じた。
「家が遠い人を送ってそのまま帰ってきたよ。寄り道なんてしてない」
Aはお酒が弱くそこまでお酒も好きではないため、飲み会では自ら運転手を買って出てくれることが多い。
前日の飲み会でもそれは同様で、確かに彼が言うように、家が遠い何人かが彼の車で送ってもらっていた。
このまま2人で話させていても喧嘩になるだけなので、私が仕切ることにした。
「なぁA、最後に送ったのは誰だ?」
「Cだよ」
「Bちゃん、昨日Aが帰ってきたのは何時頃だった?」
この2人は付き合ってすぐ半同棲を始めたので、基本的にAの家に2人で住んでいる。
「確か深夜1時ぐらいだったかな」
「わかった」
それだけ聞いて、私は確認のためCに電話をかけた。
Cいわく、確かにAに送ってもらったとのこと。
もちろんその時点で浮気相手と思しき女性がいるはずもなく、Cを降ろすとAは完全に1人になったわけだ。
「それが0時半過ぎぐらいだってCは言ってた。Cの家は××町だから、0時半過ぎにCの家を出たならここに帰ってきたのはやっぱり1時ぐらいになるな。とても寄り道できる時間じゃない」
「で、でも、友達が確かに見たって! 絶対Aに間違いなかったって言ってるもん!!」
「友達は何て言ってるの?」
「えっとね……」
Bちゃんの友達の目撃談は「女の人を後ろに乗せたAくんはご機嫌だった」という話だった。
友達の目撃談を聞いた私は違和感を覚えた。
2人は喧嘩して冷静さを欠いているから目撃談のおかしな点に気づいてないのだろう。
「俺が今からする話は、Aが浮気をしてないっていうことを前提で話すぞ?」
「前提も何も、浮気なんてしてねーよ!」
「え? じゃあ私の友達が?」
「いや、Bちゃんの友達は本当のことを言ってるんだろう。嘘をつく必要なんてないからね」
「「どういうこと?」」
私が仕切ることで少しずつ冷静さを取り戻してきたようだ。
これから語ることも素直に聞いてくれることだろう。
「目撃談の中におかしな点がある。Bちゃんの友達は何て言ってた?」
「えっと『Aが別の女の子を後ろに乗せてた』って」
「全員が全員じゃないだろうけど、2人で車に乗る時って運転席と助手席に乗らない? デートみたいなシチュエーションならなおさら。」
「「確かに……」」
「それに仮にAが女の子を乗せてたとして、Cの家からこの家までの約20~30分。Aはどこで女の子を乗せて何のために乗せたんだろう?」
浮気相手を乗せて彼女と同棲しているアパートまでドライブをするバカはいないだろう。
友達云々の前に、彼女に見つかる危険性の方が高い。
そのような諸々のことを話すと、Aは安堵しBちゃんは心底納得がいったようだ。
しかし、最大の疑問が残る。
「ねぇ? じゃあ私の友達が見たのって? 見間違い?」
とある可能性に気づいたのだろう、尋ねるBちゃんの声は震えていた。
カップルの前に今いるのは、オカルト現象が大好きな男だ。
その男が紐解いた話の行く末は……。 <真実編へ続く>
「嘘つかないでよ! 私の友達が見たって言ってんだから!!」
友人が住むアパートに到着すると、ドアを開ける前から言い争いの声が聞えていた。
「おい、外まで聞こえてるぞ」
バイト上がりで呼び出された私は、少し不機嫌に部屋に上がり込んだ。
「だって!」
「俺の言うことが信じられないのかよ!?」
2人のやり取りからおわかりだと思うが、友人カップルの仲裁に呼ばれてしまった。
なぜ私が呼ばれたかというと、この喧嘩の前日に私とこの彼(仮にAとする)が、一緒に学部の飲み会に参加していたからだ。
「陽木! 昨日の飲み会、ホントに男だけの集まりだったよな?」
「ん? あぁ、男だけだったよ」
彼をかばうわけでも何でもなく、むさくるしい男ばかりの悲しい飲み会だった。
「ほら見ろ!」
「飲み会はそうだったかもしれないけど、解散した後は!?」
ちなみに私は男女平等な人畜無害な人間として扱われていたため、この彼女(仮にBちゃんとする)は私の言うことを素直に信じた。
「家が遠い人を送ってそのまま帰ってきたよ。寄り道なんてしてない」
Aはお酒が弱くそこまでお酒も好きではないため、飲み会では自ら運転手を買って出てくれることが多い。
前日の飲み会でもそれは同様で、確かに彼が言うように、家が遠い何人かが彼の車で送ってもらっていた。
このまま2人で話させていても喧嘩になるだけなので、私が仕切ることにした。
「なぁA、最後に送ったのは誰だ?」
「Cだよ」
「Bちゃん、昨日Aが帰ってきたのは何時頃だった?」
この2人は付き合ってすぐ半同棲を始めたので、基本的にAの家に2人で住んでいる。
「確か深夜1時ぐらいだったかな」
「わかった」
それだけ聞いて、私は確認のためCに電話をかけた。
Cいわく、確かにAに送ってもらったとのこと。
もちろんその時点で浮気相手と思しき女性がいるはずもなく、Cを降ろすとAは完全に1人になったわけだ。
「それが0時半過ぎぐらいだってCは言ってた。Cの家は××町だから、0時半過ぎにCの家を出たならここに帰ってきたのはやっぱり1時ぐらいになるな。とても寄り道できる時間じゃない」
「で、でも、友達が確かに見たって! 絶対Aに間違いなかったって言ってるもん!!」
「友達は何て言ってるの?」
「えっとね……」
Bちゃんの友達の目撃談は「女の人を後ろに乗せたAくんはご機嫌だった」という話だった。
友達の目撃談を聞いた私は違和感を覚えた。
2人は喧嘩して冷静さを欠いているから目撃談のおかしな点に気づいてないのだろう。
「俺が今からする話は、Aが浮気をしてないっていうことを前提で話すぞ?」
「前提も何も、浮気なんてしてねーよ!」
「え? じゃあ私の友達が?」
「いや、Bちゃんの友達は本当のことを言ってるんだろう。嘘をつく必要なんてないからね」
「「どういうこと?」」
私が仕切ることで少しずつ冷静さを取り戻してきたようだ。
これから語ることも素直に聞いてくれることだろう。
「目撃談の中におかしな点がある。Bちゃんの友達は何て言ってた?」
「えっと『Aが別の女の子を後ろに乗せてた』って」
「全員が全員じゃないだろうけど、2人で車に乗る時って運転席と助手席に乗らない? デートみたいなシチュエーションならなおさら。」
「「確かに……」」
「それに仮にAが女の子を乗せてたとして、Cの家からこの家までの約20~30分。Aはどこで女の子を乗せて何のために乗せたんだろう?」
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しかし、最大の疑問が残る。
「ねぇ? じゃあ私の友達が見たのって? 見間違い?」
とある可能性に気づいたのだろう、尋ねるBちゃんの声は震えていた。
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