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第2章 そして2章ぐらいで段々問題が起きるんだ
33話 計画性がないってツラい
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「なぁジョージくん。無理を言うつもりはないのだが、昼の料理数をもうちょっと増やすことはできないのかな?」
4月22日の月曜日、プレオープン後は初の来店となるガードスさんから声をかけられた。
「おかげ様で大盛況なので、もう少しスタッフの技術が上がれば料理数も増やせると思いますよ」
実際の営業が始まって1週間が経過し、みな何とか仕事の流れを掴み始めてきた。
せっかく掴んだものがしっかりと定着するまでは、料理数を増やすつもりはない。
ガードスさんは俺の考えを聞いて「よく部下のことを考えているな」と褒めてくれたが、どことなく残念そうな顔をした。
その表情が少し気がかりだったので、少し踏み込んで聞いてみる。
「やっぱりお昼に30食っていうのは少ないですかね?」
「普通の食堂や屋台なら多くもなく少なくもないという感じだが、この店の料理の質を考えると少なすぎるように感じるな」
ちなみに反省会の次の日から予定どおり通常営業を開始したんだけど、初日の15日と翌16日のお客様はほとんど知り合いばかりだった。
プレオープンに来てくれた商業ギルドの職員さんが他の職員さんを連れてきてくれたり、巡回終わりの警備隊の人だったり。
ヌコヌコとそのお連れ様に話を聞いて来店してくれた猫人族が特に多かったかな。
プレオープンの日に入店を断ってしまった人が義理堅く来店してくれたりもしたけど、本当の意味で初見のお客様は片手で足りるほどの数だった。
しかしそれ以降は、休憩時間が店のオープン時間にマッチした商業ギルドの職員さんや冒険者ギルドの職員さん、警備隊の人が列を成すようになり、その様子を見た通行人もこれは何事かと気になって並んでくれるようになった。
「今ではオープン前に10人前後並んで待ってくれてますからね」
「うむ、俺も巡回時にその様子は見ているよ。しかしそうなると、俺達みたいな立場の人間がいささか来店が難しくなるんだよ」
「ガードスさんみたいな立場の人?」
「冒険者ギルドのビービー様も商業ギルドのオイ様も愚痴をこぼしていたが、俺達みたいにシフトの決定権を持つものが頻繁に来店してしまうと、公私混同だと思われてしまうわけだよ」
店の料理にありつけるよう、好き勝手にシフトを操作していると思われてしまうわけか。
「道理でオイさんもガードスさんも来てくれなかったわけですね。ビービーさんは1度来てくれましたけど、肉の解体を専門とするギルドスタッフを連れて、視察だって言ってましたもんね」
「そういう何かしらの名目をつけられればいいんだけど、俺達の仕事は店の中に入らずして遂行できる内容だからな」
「確かに」
申し訳ないけど笑っちゃった。
警備隊の仕事は巡回が主だから、特にトラブルがない限りは店に入る必要はないもんな。
「料理の数はいずれ増やす予定ですので、今しばらく御辛抱いただけたらと思います」
「結果的に無理を言ってしまったようだが、心待ちにしているよ」
ガードスさんとの世間話を終え、他のお客様の案内やキッチンの手伝いをしながら考えた。
(っていうか、料理数を増やさないと赤字経営なんだよな)
今月に関しては初期投資がかさんだし、月半ばからの営業だったので赤字は決定事項だった。
広告費や宣伝費を使うことなくスタッフが集まっただけでも御の字だ。
しかし数字に向き合って来月以降の収支計算をしてみたところ、毎日予定数を完売しても月に金貨5~10枚の赤字が発生してしまうことが発覚した。
概算の雑費を含んだ計算なんだけど、予定以上に雑費がかさむことも大いにあり得るし、雑費がなかったとしてもギリギリでプラスになるかな、ぐらいの貯蓄食いつぶし経営だった。
お店の様子が問題ないことを確認し、スタッフに一声かけてスタッフルームに引っ込む。
そして大声で叫んだ。
「最初っから経営難じゃねーかよぉぉお!!」
4月22日の月曜日、プレオープン後は初の来店となるガードスさんから声をかけられた。
「おかげ様で大盛況なので、もう少しスタッフの技術が上がれば料理数も増やせると思いますよ」
実際の営業が始まって1週間が経過し、みな何とか仕事の流れを掴み始めてきた。
せっかく掴んだものがしっかりと定着するまでは、料理数を増やすつもりはない。
ガードスさんは俺の考えを聞いて「よく部下のことを考えているな」と褒めてくれたが、どことなく残念そうな顔をした。
その表情が少し気がかりだったので、少し踏み込んで聞いてみる。
「やっぱりお昼に30食っていうのは少ないですかね?」
「普通の食堂や屋台なら多くもなく少なくもないという感じだが、この店の料理の質を考えると少なすぎるように感じるな」
ちなみに反省会の次の日から予定どおり通常営業を開始したんだけど、初日の15日と翌16日のお客様はほとんど知り合いばかりだった。
プレオープンに来てくれた商業ギルドの職員さんが他の職員さんを連れてきてくれたり、巡回終わりの警備隊の人だったり。
ヌコヌコとそのお連れ様に話を聞いて来店してくれた猫人族が特に多かったかな。
プレオープンの日に入店を断ってしまった人が義理堅く来店してくれたりもしたけど、本当の意味で初見のお客様は片手で足りるほどの数だった。
しかしそれ以降は、休憩時間が店のオープン時間にマッチした商業ギルドの職員さんや冒険者ギルドの職員さん、警備隊の人が列を成すようになり、その様子を見た通行人もこれは何事かと気になって並んでくれるようになった。
「今ではオープン前に10人前後並んで待ってくれてますからね」
「うむ、俺も巡回時にその様子は見ているよ。しかしそうなると、俺達みたいな立場の人間がいささか来店が難しくなるんだよ」
「ガードスさんみたいな立場の人?」
「冒険者ギルドのビービー様も商業ギルドのオイ様も愚痴をこぼしていたが、俺達みたいにシフトの決定権を持つものが頻繁に来店してしまうと、公私混同だと思われてしまうわけだよ」
店の料理にありつけるよう、好き勝手にシフトを操作していると思われてしまうわけか。
「道理でオイさんもガードスさんも来てくれなかったわけですね。ビービーさんは1度来てくれましたけど、肉の解体を専門とするギルドスタッフを連れて、視察だって言ってましたもんね」
「そういう何かしらの名目をつけられればいいんだけど、俺達の仕事は店の中に入らずして遂行できる内容だからな」
「確かに」
申し訳ないけど笑っちゃった。
警備隊の仕事は巡回が主だから、特にトラブルがない限りは店に入る必要はないもんな。
「料理の数はいずれ増やす予定ですので、今しばらく御辛抱いただけたらと思います」
「結果的に無理を言ってしまったようだが、心待ちにしているよ」
ガードスさんとの世間話を終え、他のお客様の案内やキッチンの手伝いをしながら考えた。
(っていうか、料理数を増やさないと赤字経営なんだよな)
今月に関しては初期投資がかさんだし、月半ばからの営業だったので赤字は決定事項だった。
広告費や宣伝費を使うことなくスタッフが集まっただけでも御の字だ。
しかし数字に向き合って来月以降の収支計算をしてみたところ、毎日予定数を完売しても月に金貨5~10枚の赤字が発生してしまうことが発覚した。
概算の雑費を含んだ計算なんだけど、予定以上に雑費がかさむことも大いにあり得るし、雑費がなかったとしてもギリギリでプラスになるかな、ぐらいの貯蓄食いつぶし経営だった。
お店の様子が問題ないことを確認し、スタッフに一声かけてスタッフルームに引っ込む。
そして大声で叫んだ。
「最初っから経営難じゃねーかよぉぉお!!」
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