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第1章 小説の第1章は大体説明みたいな感じだよね

23話 いざプレオープン!

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「今日のプレオープンで来店する人のほとんどは俺やみんなの顔見知りだけど、ちゃんとお客様として対応するように!」

「「「はいっ!」」」

 4月13日の土曜日。
ついにプレオープンの日を迎えた。

 みんなへの挨拶で言ったように、ほとんどが顔見知りで金銭のやり取りも発生しないプレオープン。料理も実際の営業より数をしぼった小規模な予行練習だけど、俺にとって、いや俺達にとって大切な1日になるだろう。

 ちなみに、研修を始めてからはスタッフを全員呼び捨てで呼ぶことにした。
もううちの店のスタッフだから全員平等に扱わないといけないし、俺の呼び名も『店長』に統一させてもらった。
やっぱりしっくりくるなと少し感動したのは内緒だ。

 労働時間に関しても、まだ子どもだからとそれぞれ午前か午後の半日シフトを考えてたんだけど、スタッフ全員とその保護者より「1人前の社会人として扱ってほしい」と懇願されたんで、渋々こちらが折れた。

 その代わりと言ってはなんだが、条件として、飲食店ということもあるので体調不良は正直に申し出るように厳命している。
料理や接客を通じてお客様に病気を移すわけにはいかないからな。

「じゃあポジションは昨日までの打ち合わせどおりで!」

「「「はいっ!」」」

 キャトンには予定どおりレジを担当してもらう。
メイクさんに発注した木製の食札はバッチリ揃ってるから、金銭のやり取りはなくてもレジ係の仕事はきちんとある。

 調理は俺が担当する予定だったけど、みんなが働いてくれることで人手に余裕はあるし、特に今日は挨拶や案内とかの来客対応をしないといけないから、ミーニャに担当してもらうことにした。
 ミーニャは家でずっと料理を担当していたとのことで、非常に手際が良かった。味覚も誰よりも鋭いようで、全メニューの習得が1番早かった。

 ニャジーは調理をメインとした全体のフォローのポジションだ。
猫人族はみんな物覚えがよかったんだけど、ニャジーはさすが最年長で、その中でもずば抜けて覚えがよかった。
5日間の研修ですべてのポジションを平均的にマスターしてくれたので、フリーで動いてもらって忙しい場所を臨機応変にフォローしてもらう。

 いつも元気でムードメーカーのライオには、デシャップを集中的に教え込んだ。

 デシャップっていうのは、一般的には料理が上がってくる“場所”のことを指すんだけど、飲食業ではその場所で指示をする司令塔的な意味合いが強い。笑顔を絶やさないライオはまさに適任で、お客様の番号を呼ぶ係も担ってもらう。

 料理が上がりそうなタイミングで味噌汁を準備しないといけないし、料理を受け取りに来たお客様に普通盛りか大盛りかを尋ねてご飯をつがないといけないし、かなり忙しいポジションだ。

 口数が少ないジャックは本人が洗い場を希望した。
最初は「接客が嫌だから洗い場を希望したのかな?」とか思っちゃったけど、彼は手先が器用で細かいところまで気配りができるので、誰よりも食器の扱いが素早く慎重で、洗い上がりもキレイだった。
洗い上がった食器を所定の位置に戻す手つきも丁寧で、洗い場に関しては他の追随を許さないレベルだ。

「じゃあ俺達のお店、フェーレースのプレオープンだ!」

 約束どおり朝イチでメイクさんとそのお弟子さん達が来て、立派な看板を設置してくれた。

 俺達は全員でその様子を見守った。
店名とその意味を教えた時に見せてくれた、スタッフ全員の感動した姿は忘れられない思い出になりそうだ。喜んでくれて本当によかった。

 道具を置きに一度工房に行ったメイクさん達が戻ってきたんだろう、外から話し声が少しだけ聞こえてきている。

 俺は胸を高鳴らせながら店のドアを開けた。

「お待たせしました、フェーレースのプレオープンです! 」

 開いたドアに掛かっている札を、クローズからオープンへと変える。

 声をかけた人には昨日のうちに手書きの招待券を渡しているから、今日のお客様はは招待券を持っている人だけ。

 申し訳ないが一般のお客様にはご遠慮いただく。その旨を書いた貼り紙もしっかり貼っていて、『15日に正式オープンするのでよろしくお願いします』という宣伝もバッチリだ!

「ガッハッハ! 俺達が1番の客だな、誇らしいぞ!」

「いらっしゃいませ! 看板などの準備や設置、本当にありがとうございました。今日はゆっくりとお楽しみください!」

「「「いらっしゃいませー!」」」

 相変わらず大きな声で笑いバンバンと背中を叩くメイクさんだが、不思議と今日はその痛みが心地いい、、、わけない! 痛いものは痛い!

 お弟子さん達も今日のプレオープンを楽しみにしてくれていたらしく、誰が今日の看板設置の仕事を担当するかで大いにモメたらしい。

「ワシらは説明書きの板を作ったから何となく流れはわかるが、やっぱり変な感じだのう!」

 メイクさん達は案内なしにスムーズにレジに向かったくれたけど、普通の飲食店なら席への案内が最初だろうから、入口での混雑や混乱が心配だな。

「い、いらっしゃいませ! きょ、今日は招待状が料理のお代になりますので、こ、こちらにお出しください!」

 1組目のお客様に緊張しているキャトンが、料金代わりの招待状を回収する。
代わりに1番から5番の食札を渡し、空いている席の利用を口頭で案内する。

「料理の準備が整いましたら食札の番号を呼びますので、あちらの台で受け取りをお願いします! 料理の受け取りの際、ご飯は普通盛りか大盛りが選べます!」

「大盛りはいくら払えばいいんですか?」

 お弟子さんの1人が遠慮がちに尋ねる。
今日の定食は土曜日の焼肉定食なので、ご飯との相性はバッチリだ。

「お、大盛りも同じ値段です!」

 緊張してはいるが、キャトンの受け答えは元気がよく完璧だ。慣れてきたらもう少しフランクさも出てくるだろうし、今日のとこはこれで及第点だろう。

「やったぁ! じゃあ俺は大盛りだ!」
「俺も!」
「おいらも!」

「おめぇら、行儀よくしねぇか!」

 師弟は微笑ましいやり取りをしながら席につく。

「日替わり5つお願いします!」

「「「はいっ!」」」

 キャトンがオーダーと食札を厨房へ流すと、中からも元気な声で返事がくる。
気持ちよく仕事をするためには挨拶や返事が大事だと教えたから、しっかりと生かしてくれている。

「ミーニャ、キャベツはもう盛り付けてるからね!」

「ありがとうございます!」

 料理担当のミーニャと、フォロー役のニャジーの連携もバッチリ。

 ライオも料理の進捗具合を見ながら味噌汁を注ぐ準備をしているし、まだ洗い物がないので担当の仕事がないジャックは、やや苦手としている料理を見てしっかりと学んでいる。

(この子達には安心して仕事を任せることができそうだな)

 そんなことを考えていると、再び店のドアが開いた。
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