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「おかえりぃー。おにいさん」
慣れない料理に暫く時間を掛けてキッチンで作業をしていると白司が寝ぼけながらやってきた。
「おう。起きたか」
白司は大きな欠伸をして、「何作ってるの?」と鍋を覗く。
「一応カレー。食べれるか?」
染が答えると、白司のまだ虚ろだった眼が大きく見開いた。
「え!カレー!好き!僕、熱いまま食べるとか辛い食べ物は苦手なんだけどカレーは大好き!」
「分かった分かった!落ち着けって……!」
嬉しさでぴょんぴょんと飛び跳ねると寝癖のついた白い毛が揺れる。そんな白司を横目に、染はお玉を持ち鍋の中を丁寧に一周回す。待ちきれないのか、単にお腹が空いていたのか「早く食べたいなぁ」と作っている染の様子を伺う。
「ご飯、好きな分自分で入れな。器はその棚から適当に取って」
「はぁーい」
片手を上げて元気に白司は返事をした。
「おにいさんは、こんなもん?」と染の分も入れてくれて、白司からの優しさに頷き口角を上げる。
その後、二人テーブルに隣通し並んで食べ始める。特に興味も無いテレビを付けて、その笑い声が部屋にBGMとして流れる。
「いただきまーす!」
「いただきます」
白司がスプーンでカレーをすくい、口に入るまでを染は隣で見届ける。人に振る舞った料理の感想をドクンドクンと緊張した面持ちで待つ。
(口に合うだろうか。辛すぎたかな、辛いのは苦手とか言ってたもんな。大丈夫かな)
鳴る鼓動はスピードを一気に加速させる。
モグモグと口を動かす白司が言葉を放つ。
「おいっしい!!!」
その笑顔は今まで見せた表情の中で一番純粋で可愛い少年の笑みだった。
「おにいさん、美味しい!料理の才能抜群だね。こんなに美味しいカレー、僕初めて食べたよ」
あまりに白司が褒めるため、染は顔を俯いて「あ、ありがと」としか返事が出来なかった。染の耳は珍しく赤く染まっていて内心喜んでいるのが目に分かった。
白司も染もその後おかわりを繰り返し、二人分にしては沢山作ったと思ったカレーはあっという間に空っぽになる。
誰かと食事をするのなんて何時ぶりだろう。気づくとプライベートでは、もう思い出せないくらい染には過去になっていた。出会ってまだ数時間の相手と会話をする訳でもないのに隣に座り同じものを食べている時間が、幸せだと染は思った。それは、白司も同様に……。
「美味しかった。ありがとう、おにいさん」
白司は食べきったお皿をキッチンに持ってくる。礼儀は一応なっているみたいだ。
「お口に合って良かったよ。皿はそこに置いといて」
白司に指示した後、染はシンクの中を覗いて「うっ……」と後ずさった。自炊をしたからには洗い物は離せない作業だ。深く深呼吸をして仕方ないと、ゴム手袋を戸棚から取り出し両手に装着する。染が洗い物を嫌がる理由はだた一つ。蛇口から流れる水に触れることで自由に動かなくなるほど手が冷えてしまうから。
「おにいさん?大丈夫?」
シンクをじっと見て動かない染を白司は心配する。
「もしかして、洗い物苦手?」
「うん」と素直に肯定出来ずいると、白司はその小さな身体で染とシンクの間を遮り、水を出して洗い物を始めた。染にとってはあり得ない、素手のままで。
「僕がするからいいよ。おにいさんに作ってもらったし、お礼」
下を向いて髪の毛が下りているから白司の表情が見えない。染は「助かる……ありがと」と申し訳無い気持ちを多く抱えて感謝する。
「おかえりぃー。おにいさん」
慣れない料理に暫く時間を掛けてキッチンで作業をしていると白司が寝ぼけながらやってきた。
「おう。起きたか」
白司は大きな欠伸をして、「何作ってるの?」と鍋を覗く。
「一応カレー。食べれるか?」
染が答えると、白司のまだ虚ろだった眼が大きく見開いた。
「え!カレー!好き!僕、熱いまま食べるとか辛い食べ物は苦手なんだけどカレーは大好き!」
「分かった分かった!落ち着けって……!」
嬉しさでぴょんぴょんと飛び跳ねると寝癖のついた白い毛が揺れる。そんな白司を横目に、染はお玉を持ち鍋の中を丁寧に一周回す。待ちきれないのか、単にお腹が空いていたのか「早く食べたいなぁ」と作っている染の様子を伺う。
「ご飯、好きな分自分で入れな。器はその棚から適当に取って」
「はぁーい」
片手を上げて元気に白司は返事をした。
「おにいさんは、こんなもん?」と染の分も入れてくれて、白司からの優しさに頷き口角を上げる。
その後、二人テーブルに隣通し並んで食べ始める。特に興味も無いテレビを付けて、その笑い声が部屋にBGMとして流れる。
「いただきまーす!」
「いただきます」
白司がスプーンでカレーをすくい、口に入るまでを染は隣で見届ける。人に振る舞った料理の感想をドクンドクンと緊張した面持ちで待つ。
(口に合うだろうか。辛すぎたかな、辛いのは苦手とか言ってたもんな。大丈夫かな)
鳴る鼓動はスピードを一気に加速させる。
モグモグと口を動かす白司が言葉を放つ。
「おいっしい!!!」
その笑顔は今まで見せた表情の中で一番純粋で可愛い少年の笑みだった。
「おにいさん、美味しい!料理の才能抜群だね。こんなに美味しいカレー、僕初めて食べたよ」
あまりに白司が褒めるため、染は顔を俯いて「あ、ありがと」としか返事が出来なかった。染の耳は珍しく赤く染まっていて内心喜んでいるのが目に分かった。
白司も染もその後おかわりを繰り返し、二人分にしては沢山作ったと思ったカレーはあっという間に空っぽになる。
誰かと食事をするのなんて何時ぶりだろう。気づくとプライベートでは、もう思い出せないくらい染には過去になっていた。出会ってまだ数時間の相手と会話をする訳でもないのに隣に座り同じものを食べている時間が、幸せだと染は思った。それは、白司も同様に……。
「美味しかった。ありがとう、おにいさん」
白司は食べきったお皿をキッチンに持ってくる。礼儀は一応なっているみたいだ。
「お口に合って良かったよ。皿はそこに置いといて」
白司に指示した後、染はシンクの中を覗いて「うっ……」と後ずさった。自炊をしたからには洗い物は離せない作業だ。深く深呼吸をして仕方ないと、ゴム手袋を戸棚から取り出し両手に装着する。染が洗い物を嫌がる理由はだた一つ。蛇口から流れる水に触れることで自由に動かなくなるほど手が冷えてしまうから。
「おにいさん?大丈夫?」
シンクをじっと見て動かない染を白司は心配する。
「もしかして、洗い物苦手?」
「うん」と素直に肯定出来ずいると、白司はその小さな身体で染とシンクの間を遮り、水を出して洗い物を始めた。染にとってはあり得ない、素手のままで。
「僕がするからいいよ。おにいさんに作ってもらったし、お礼」
下を向いて髪の毛が下りているから白司の表情が見えない。染は「助かる……ありがと」と申し訳無い気持ちを多く抱えて感謝する。
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