心に体温が触れた時

そらいろ

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 鍵穴に鍵を入れて回すと、ガチャリと音が鳴る。
 繋ぐ反対の空いている手を忙しく動かして、染は玄関のドアを引いた。靴を脱いで家の中に上がろうとすると、少年は玄関に立ったまま動こうとしない。手を引っ張ってみても無反応だ。

「どうした?」

 少年の視線の先は、真っ白な彼の素足だった。

「土足じゃ……悪いなって思って」
「……っふ。そういう所は気にするんだな」

 少年から初めてされた気遣いに思わず染は思わず笑ってしまった。

「いいよ、後で床は拭くから。そのまま風呂でも入れよ」

 染は、少年の手をぐいっと引っ張り、家の中に連れ込み、そのままお風呂場へと向かう。

「バスタオルもタオルもそこにあるから自由に使って。俺はリビングにいるから。なんかあったら呼べよ」

 名残惜しそうに、ここで繋いだ手を離した。お風呂場の扉を染が閉めれば、二人共が離れても残る互いの体温を感じる手をしばらくじっと見続けた。

『気持ちよかった』

 一枚の薄い扉越しに同じ事を思う。
 
 染がリビングへ行けば、今朝と変わらない光景が目の前に広がる。ソファに投げ捨てられた部屋着、テーブルの上には飲み干したペットボトルにカイロを取り出して残った袋、カーテンも閉まったままでひとり暮らしのまさに男の部屋だった。

(昨日、掃除機だけはしてて良かったな……)

 一つため息をついて、染は急いでリビングの物を片付ける。カーテンも開けて、まだ昼前だが雪の降る外から差す陽は無いが、気持ち的には明るくなった。

「あいつ……何か食べるかな」

 今この家にあるものでと、冷蔵庫を開けて中身を見る。水とお茶、卵はあるけどお肉や魚といったメインになりそうな気の利いた材料は無い。

「……冷た」

 冷蔵庫からの冷気すら、染の身体全体を冷やしていきそうで直ぐに扉を閉める。そして、求めてしまう。
 先程の少年の手を。
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