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いつもと違う光の眩しさを感じて、朱斗は目を覚ました。
「朝……にしては早すぎる」
真っ先に見た時計の針が指し示す時刻は明け方と言っていいほど、とても早い朝だった。
リビングにつけているカーテンは日差しを遮ることを知らない。その為、ソファで眠ってしまった朱斗は日が昇るにつれて照らされる面積が増え、眩しさを感じ自然によって起こされた。
「もう一回。寝よう」
そう呟いて朱斗はまた眠りにつく。
---
「お疲れ様でしたー」
連日の天候が悪いせいで、仕事もスタジオや屋内が多くなっていてスムーズに撮影が進んでいく。
今日は朝から様々な俳優さんとブランド商品とのコラボ撮影で、次々と変わるセットに衣装にと目まぐるしく時間が過ぎていく。
朱斗も良い写真が出来上がるためにプロのカメラマンとして頭をフル回転させ、ほとんど休憩もせずにシャッターを切っていた。
「おわった……」
久しぶりの長丁場にやっと一息ついて椅子へもたれる。ずっとカメラを持っていたせいで疲労の溜まった両腕をだらんと垂れ下げて、目だけを動かし取り終えたデータを眺める。
強い眼力、服装や背景の雰囲気によって変わる表情、自分の見せ方が分かっているポージング。モデルとはまた違う業種なため、その場その場で自然に演じて出来上がる作品になっている。
「……俳優さんってすごいな」
「嬉しいお言葉ありがとうございます。須藤さん」
朱斗を呼ぶ声の方向を見上げれば、そこにはつい先程までいい表情や瞬間を少しでも外さまいと撮影していた彼だった。
「っわあ!結埜(ゆの)さん!」
ふと出た彼への褒め言葉がまさか本人に聞かれているなんて思いもしなかったため、突然現れた彼に驚いた朱斗は座っていたパイプ椅子からバランスを崩した。
「……っおっ、と」
転けそうになる朱斗を結埜は身体を自らに引き寄せ助ける。
ガシャン……!
そして、パイプ椅子だけが派手に倒れスタジオ内にその音が響く。
「大丈夫ですか!?」
周りにいたスタッフは一斉にその音の方を見て、慌ててやってくる。
その輪の中心で結埜に抱きしめられている朱斗は、注目の的になれば自分の今の状況をやっと把握でき、結埜から離れた。
「……わ。っえ、その、あ、ありがとうございます」
こんなに戸惑う自身を仕事場で出てしまうことは滅多に無く、驚くと共に戸惑いを見せる。
「いいえ。大丈夫でしたか?」
「あ、はい。だいじょう、ぶです……」
樹矢ほどでは無いが自分よりも背高い結埜の顔が見れず、彼の胸元に向かって声を放つ。
何もなかった様子な二人に安心した周りのスタッフ達は元の位置に戻り始めて、彼ら二人だけの会話が始まる。
「朝……にしては早すぎる」
真っ先に見た時計の針が指し示す時刻は明け方と言っていいほど、とても早い朝だった。
リビングにつけているカーテンは日差しを遮ることを知らない。その為、ソファで眠ってしまった朱斗は日が昇るにつれて照らされる面積が増え、眩しさを感じ自然によって起こされた。
「もう一回。寝よう」
そう呟いて朱斗はまた眠りにつく。
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「お疲れ様でしたー」
連日の天候が悪いせいで、仕事もスタジオや屋内が多くなっていてスムーズに撮影が進んでいく。
今日は朝から様々な俳優さんとブランド商品とのコラボ撮影で、次々と変わるセットに衣装にと目まぐるしく時間が過ぎていく。
朱斗も良い写真が出来上がるためにプロのカメラマンとして頭をフル回転させ、ほとんど休憩もせずにシャッターを切っていた。
「おわった……」
久しぶりの長丁場にやっと一息ついて椅子へもたれる。ずっとカメラを持っていたせいで疲労の溜まった両腕をだらんと垂れ下げて、目だけを動かし取り終えたデータを眺める。
強い眼力、服装や背景の雰囲気によって変わる表情、自分の見せ方が分かっているポージング。モデルとはまた違う業種なため、その場その場で自然に演じて出来上がる作品になっている。
「……俳優さんってすごいな」
「嬉しいお言葉ありがとうございます。須藤さん」
朱斗を呼ぶ声の方向を見上げれば、そこにはつい先程までいい表情や瞬間を少しでも外さまいと撮影していた彼だった。
「っわあ!結埜(ゆの)さん!」
ふと出た彼への褒め言葉がまさか本人に聞かれているなんて思いもしなかったため、突然現れた彼に驚いた朱斗は座っていたパイプ椅子からバランスを崩した。
「……っおっ、と」
転けそうになる朱斗を結埜は身体を自らに引き寄せ助ける。
ガシャン……!
そして、パイプ椅子だけが派手に倒れスタジオ内にその音が響く。
「大丈夫ですか!?」
周りにいたスタッフは一斉にその音の方を見て、慌ててやってくる。
その輪の中心で結埜に抱きしめられている朱斗は、注目の的になれば自分の今の状況をやっと把握でき、結埜から離れた。
「……わ。っえ、その、あ、ありがとうございます」
こんなに戸惑う自身を仕事場で出てしまうことは滅多に無く、驚くと共に戸惑いを見せる。
「いいえ。大丈夫でしたか?」
「あ、はい。だいじょう、ぶです……」
樹矢ほどでは無いが自分よりも背高い結埜の顔が見れず、彼の胸元に向かって声を放つ。
何もなかった様子な二人に安心した周りのスタッフ達は元の位置に戻り始めて、彼ら二人だけの会話が始まる。
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