11 / 15
Lemonade
しおりを挟む
小さい頃から通っているカフェ兼お家のお隣さんは、僕が生まれた頃から知っている年上のお兄ちゃんがいた。物心ついた時には、にいにの後ろにべったりで「にいにとがいい!」が口癖だったのを覚えている。
「おかえり。どうだった?今日の学校は」
「何も変化無し。にいにが居ないとつまんないよ」
「俺が居たら自分の席に戻んなくなるだろ」
「同じクラスで隣同士の席にして貰うもーん」
「はい」とグラスに注がれたシュワシュワのレモネードをテーブルの上に置いてくれる。大好きな人が作ってくれる大好きな飲み物の為に、僕は毎日学校に通うことを頑張れているんだ。
「はぁ。最近蒸し暑いよねぇ」
制服のブレザーを脱いで、椅子に掛ける。レモネードをストローで一口……と思ったけれど想像以上に喉が乾いていたみたいで、一気に半分まで飲んでしまった。
「梅雨……だからな。今朝も雨降ってたろ」
「うん。登校するのが憂鬱になった」
「ほんと学校嫌なのな」
笑うにいには、頭を優しく撫でてくれた。幼い頃から変わらない。お互いひとりっ子なのに本当の兄弟みたいに僕らは仲が良い。
「あ、テラス行こうぜ」
お客が居ない放課後の時間、大学生のにいにはアルバイトとして任されているこの時間。僕にとって憩いの時だった。
「誰かいるの?」
滅多に行かないテラスにも横並びに木の椅子があり、飲み物を飲むことも可能だ。
手を引っ張られて、にいにの歩きに合わせる為に少し駆け足でついていく。
「ここ、座って」
にいにが屋根の下にある濡れていない椅子に座り、指差す所へ言われるがまま隣に座る。
「前見てみ?」
「ん?」
にっこりと笑うにいにの横顔を一瞬見て、目の前に顔を向ける。
「う……わぁ」
パステル調のトーンで大きく咲く紫陽花が僕らの目の前の景色に沢山現れた。存在する紫陽花は、今朝の雨の雫が残り、夕日に照らされながら艶と生命の強さを一つ一つが魅せてくれている。
「満開に咲いたばっかりなんだよ。朝はまだ蕾だったから」
「綺麗……本当に綺麗」
「だろ?一緒に見れて良かったよ」
「にいに、ありがと」
顔をにいにの方に向けて、感謝する。嬉しい感情が溢れているだろう。表情にも、きっと。
「……好き」
小さく、小さく呟いた一言が脳内に響くように繰り返された。意味を考える前に、僕の唇にはにいにの温かい唇が触れて、すぐに離れた。
「酸っぱい、な」
恥ずかしそうに笑うにいにの顔を僕は今でも忘れていない。
*Twitterにて、一松さんとのコラボ作品
「おかえり。どうだった?今日の学校は」
「何も変化無し。にいにが居ないとつまんないよ」
「俺が居たら自分の席に戻んなくなるだろ」
「同じクラスで隣同士の席にして貰うもーん」
「はい」とグラスに注がれたシュワシュワのレモネードをテーブルの上に置いてくれる。大好きな人が作ってくれる大好きな飲み物の為に、僕は毎日学校に通うことを頑張れているんだ。
「はぁ。最近蒸し暑いよねぇ」
制服のブレザーを脱いで、椅子に掛ける。レモネードをストローで一口……と思ったけれど想像以上に喉が乾いていたみたいで、一気に半分まで飲んでしまった。
「梅雨……だからな。今朝も雨降ってたろ」
「うん。登校するのが憂鬱になった」
「ほんと学校嫌なのな」
笑うにいには、頭を優しく撫でてくれた。幼い頃から変わらない。お互いひとりっ子なのに本当の兄弟みたいに僕らは仲が良い。
「あ、テラス行こうぜ」
お客が居ない放課後の時間、大学生のにいにはアルバイトとして任されているこの時間。僕にとって憩いの時だった。
「誰かいるの?」
滅多に行かないテラスにも横並びに木の椅子があり、飲み物を飲むことも可能だ。
手を引っ張られて、にいにの歩きに合わせる為に少し駆け足でついていく。
「ここ、座って」
にいにが屋根の下にある濡れていない椅子に座り、指差す所へ言われるがまま隣に座る。
「前見てみ?」
「ん?」
にっこりと笑うにいにの横顔を一瞬見て、目の前に顔を向ける。
「う……わぁ」
パステル調のトーンで大きく咲く紫陽花が僕らの目の前の景色に沢山現れた。存在する紫陽花は、今朝の雨の雫が残り、夕日に照らされながら艶と生命の強さを一つ一つが魅せてくれている。
「満開に咲いたばっかりなんだよ。朝はまだ蕾だったから」
「綺麗……本当に綺麗」
「だろ?一緒に見れて良かったよ」
「にいに、ありがと」
顔をにいにの方に向けて、感謝する。嬉しい感情が溢れているだろう。表情にも、きっと。
「……好き」
小さく、小さく呟いた一言が脳内に響くように繰り返された。意味を考える前に、僕の唇にはにいにの温かい唇が触れて、すぐに離れた。
「酸っぱい、な」
恥ずかしそうに笑うにいにの顔を僕は今でも忘れていない。
*Twitterにて、一松さんとのコラボ作品
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
保育士だっておしっこするもん!
こじらせた処女
BL
男性保育士さんが漏らしている話。ただただ頭悪い小説です。
保育士の道に進み、とある保育園に勤めている尾北和樹は、新人で戸惑いながらも、やりがいを感じながら仕事をこなしていた。
しかし、男性保育士というものはまだまだ珍しく浸透していない。それでも和樹が通う園にはもう一人、男性保育士がいた。名前は多田木遼、2つ年上。
園児と一緒に用を足すな。ある日の朝礼で受けた注意は、尾北和樹に向けられたものだった。他の女性職員の前で言われて顔を真っ赤にする和樹に、気にしないように、と多田木はいうが、保護者からのクレームだ。信用問題に関わり、同性職員の多田木にも迷惑をかけてしまう、そう思い、その日から3階の隅にある職員トイレを使うようになった。
しかし、尾北は一日中トイレに行かなくても平気な多田木とは違い、3時間に一回行かないと限界を迎えてしまう体質。加えて激務だ。園児と一緒に済ませるから、今までなんとかやってこれたのだ。それからというものの、限界ギリギリで間に合う、なんて危ない状況が何度か見受けられた。
ある日の紅葉が色づく頃、事件は起こる。その日は何かとタイミングが掴めなくて、いつもよりさらに忙しかった。やっとトイレにいける、そう思ったところで、前を押さえた幼児に捕まってしまい…?
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
頻尿が恥ずかしい成人男性
こじらせた処女
BL
チカサ(23)はおしっこが人より近いことがコンプレックスである。そのため栄養ドリンクなんてもってのほか、カフェインでさえも絶対に飲まないという徹底ぶりでトイレの回数を控えていた。そんな中、同じ部署のニシキ先輩と一緒に外回りに行くこととなる。緊張も相まってチカサはいつもよりトイレが近くなってしまい、何度もトイレと言うのが恥ずかしくなってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる