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本編で語られなかったイチャラブ事情

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「また買ってしまった………」

 先月アンドュアイスにそんなものは読まなくてイイ、と言われたが思春期のルーシュは大人に比べて情緒不安定である。
 しかも初恋。
 初めての思春期。
 頼れる姉は皆死んだ目をしている。
 姉たちの思春期はもう過ぎたと思いうのだが、未だに末妹のルーシュと同じレベルで恋愛偏差値が低いのは問題だと思う。
 ドラゴニア家の呪いであろうか?
 皆戦闘の能力は男に後れを取る事なく高いのだが。

 見た目美女・中身アニキな女性の集まり。
 それがドラゴニア公爵武家なのである。

 そんな訳でルーシュは恋愛の相談が出来る相手と言うのが少ない。
 唯一サイヒの専属侍女であるマロンとは大人の恋人を持つ同士恋バナに花が咲くが、天界にホイホイ迎えるほど地上の魔術は発達していない。
 空を飛べばいいと言うものでは無いのだ。
 ちゃんと結界をくぐらないと天界には着かないのである。

 空を飛ぶだけで天界に行けるならルインに乗って好きな時に天界に遊びに行くことが出来るだろう。
 残念ながらルーシュに天界への結界を通り抜ける術は持ち合わせていない。

 そこで登場するのが恋愛雑誌『nyannyan』である。
 今回の見出しはー

 ☆男を喜ばせる女になる☆

 である。
 何とも頭がお花畑の内容が雑誌には陳列しているだろう。
 だが恋愛のバイブルとしてこの雑誌はフレイムアーチャのみならず、他の国でも売られているくらい人気がある。
 表紙や中表紙のイケメンのヌード画像目的のお姉様もいるだろうが、あいにくルーシュはそこには興味がない。
 これは精神年齢が低いからではなく、アンドュアイスという絶品の男に愛されているからだろう。
 雑誌の表紙のイケメンたちよりアンドュアイスは何段階もイイ男なのだ。
 今更そこいらのイケメンでトキメクほどルーシュは飢えていない。

 それに男の肌かは騎士の時にさんざん見た。
 腰にタオルを巻いていたとはいえ、一緒に屈強な男たちと風呂も共にしたルーシュは男の身体にそんなに魅力を感じない。

 はずなのだが、アンドュアイスは別である。

 屈強な美丈夫と言うと騎士団の中にも何にもいた。
 体格ならアンドュアイスと変わらない者も居ただろう。
 だがルーシュは騎士団の男達には何の感想も浮かばないが、アンドュアイスの身体だと袖を捲り鍛えられた腕の筋肉を見るだけでも赤面しそうな程意識してしまう。

 やはり溢れ出る男の色気のさであろうか?

 若干、と言うかかなり失礼なことを考えるルーシュである。
 フレイムアーチャの聖騎士団の団員たちは国の女性の憧れの的なのだ。
 ルーシュが枯れているとしか言いようがない。

 そんな干物なルーシュでもときめかすアンドュアイスのほうが規格外の男なだけである。

「今日はアンドュ様は公務で忙しいと言っていたし、部屋の鍵はかけた。これで誰にも邪魔せずに読めるはずだ」

 すーはーと深呼吸をしてルーシュは雑誌の表紙を捲った。

「ほうほう男を喜ばせる方法か」

「今はこれ位しか頼れるアイテム無いんだよ」

「心友の私に相談すればいいではないか、頼られないとは傷つくぞ?」

「全能神のお前が傷つくたまk…て、うわぁぁっぁっぁっぁぁ何でお前がここに居るサイヒっ!?」

「面白そうな予感がしたので暇つぶしに天界から出て来てみた」

「お前、ちゃんと仕事しろよぉ…全能神なんだろ…………?」

「何かあれば【次元転移】ですぐに天界に戻れるから大丈夫だ」

「このチートめ……」

「そう言う訳で一緒に読むとしよう。姿勢はラッコ抱っこで良いか?」

「おまっ!さては前回覗いていたな!!」

「そうかそうか、アンドュでないとラッコ抱っこはしたく無いと。愛だな、お姉さんは嬉しいぞ」

「2歳しか年変わんねーでしょが!」

「だが私はすでに2児の母である」

「言い返す言葉が思いつかねえよ畜生!」

「まぁ私もその本に興味があるし仲良く読もうではないか心友」

「お前心友のワード出したら私が何でも言う事聞いてくれると思うなよ?」

「駄目か、心友?」

「ぐっ…そう言う眼は卑怯じゃないか?そう言う捨てられた子犬みたいな目はルーク様にしろよ」

「そんな事すればルークは理性を失って私を監禁しかねない。冗談でも笑えんぞ、その発言は」

「相変わらずラブラブでうらやましいなこん畜生!わーったよ!一緒に読めば良いんだろ!」

「では10代の乙女の読書タイムと参ろうではないか♫」

 良いように遊びに使われている気がするが、やっぱりルーシュは2つ年上なだけなのに2児の母にしてこの世界の全能神を甘やかしてしまうのだ。
 そう言う所がまたサイヒの好感度を上げるとルーシュは知らないが。

(まぁアンドュはこんな本に載ってること実践しなくても手を握るだけで喜ぶと思うのだがな)

 流石は己の可愛がる保護犬の事を良く知っているサイヒなのであった。
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