上 下
30 / 59

【28話】

しおりを挟む
「賑わってますね皇太子様」

「カノン…一応お忍びの身なので皇太子呼びを止めて欲しいのだが………」

「すみません、こうた…フォルテシモ様」

「もう1回呼んでくれ」

「フォルテシモ様?」

「もう1度!」

「………フォルテシモ様?」

 何故か皇太子様が感激に打ち震えております。
 何が原因でしょうか?

「ようやくカノンに名前を呼んで貰えた………」ボソッ

「何か?」

「いや、何でもない。露店も多いな、イカ焼きを食べようカノン!」

「もうすでにかき氷とチョコバナナとフランクフルトとフライドポテトと焼きもろこしと焼きそばを食べていますよフォルテシモ様…それにしても珍しいメニューが多いですね。
屋台と言ったら串焼きくらいしか私は食べた事なかったのですが…どなたが発案されたメニューなのでしょうか?」

 遠くでわーわーと騒ぎ声が聞こえます。
 どうやら週末恒例らしい大食い大会が開催されているそうです。
 第1回優勝者が絶対王座として君臨しているそうです。
 何でも空色の髪と翡翠色の瞳の物凄い美形の少年冒険者さんなのだとか。
 見に行きたいと言ったら皇太子様に止められました。

 かなり真剣な顔で。
 あんなにキリッとした表情見たの久しぶりなので思わずときめいてしましました。

 そうですよね、この南の土地と何とか協定を結べないか来たのでした。
 遊んでいる場合ではありません。
 その割には皇太子様は食を謳歌している様子ですが…?
 まぁ久しぶりに国を出れたので羽を伸ばしているのでしょう。

 私も皇太子様には肩の力を抜いて欲しいので、少しは旅行気分を味わうのも良いかも知れません。

 さっきの発言と矛盾している気もしますが…。
 私が美少年見たがっていると思って焼き餅焼いた、何てこと無いですよね?
 それだったら少し嬉しいな~とか思っちゃうのですけど。

「フォルテシモ様、タレが口の端についていますよ」

 私はハンカチーフを取り出しソレを拭いてあげます。

「ひゅ~熱いねお二人さん!良かったらこっちのりんご飴もどうだい?うまいぜ!」

 軽い声がかけられました。
 えーと、カップルに見えました、私たち?
 それは嬉しくて、それ以上に恥ずかしくて死にそうです。
 一応また婚約者に戻ったんですけど、カップルなんて甘い期間カノンの時期ではありませんでしたから。
 寧ろポリフォニーの時の方がカップルに近かったと言うか……。
 皇太子様、本当に男の方が好きとか無いですよね………?
 たまにちょっぴり不安になります。
 ポリフォニーにはべたべたに甘えていた皇太子様が、私がカノンに戻ってから何だかしっかりしてきた、と言うか格好良くなってきたからです。
 あんまり甘えたもどうかと思いますが、それはそれで嬉しいもので……。
 矛盾してるとは思いますが。

「カノン、折角だ買おう!」

「フォルテシモ様!」

 グイ、と腕を引かれます。
 力いっぱい抵抗したら難なく外せる手が外せません。
 本当に私は皇太子様に惚れ切っているのですね。

「よ、色男!可愛い彼女連れて………ロゼの瞳!?」

「え!」

「嘘!」

「ロゼの瞳だと!?」

「聖女様?」

 周囲がどよめきました。
 どうやらこの地では既に”ロゼの瞳の聖女”の話は誰もが知るところのようです。
 大勢の人たちに取り囲まれて、どうしましょうか?
 皇太子様に害の及ばないように、どう振舞いましょう?
 ポリフォニーの頃でしたら正面切って威嚇できたのですが、女、それも貴族令嬢に確実に見える格好の私では睨んでも威嚇にもならないでしょう。

 カノンに戻ったからと言って戦闘能力が落ちた訳ではありません。

 むしろ本来の体に戻れて能力は陪乗しています。
 なぎ倒していくのは簡単でも、ここには平和協定を結びに来たのです。
 どう切り抜けましょうか?
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。

大森 樹
恋愛
【短編】 公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。 「アメリア様、ご無事ですか!」 真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。 助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。 穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで…… あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。 ★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

私が妻です!

ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。 王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。 侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。 そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。 世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。 5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。 ★★★なろう様では最後に閑話をいれています。 脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。 他のサイトにも投稿しています。

愛を知らないアレと呼ばれる私ですが……

ミィタソ
恋愛
伯爵家の次女——エミリア・ミーティアは、優秀な姉のマリーザと比較され、アレと呼ばれて馬鹿にされていた。 ある日のパーティで、両親に連れられて行った先で出会ったのは、アグナバル侯爵家の一人息子レオン。 そこで両親に告げられたのは、婚約という衝撃の二文字だった。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

鈍感令嬢は分からない

yukiya
恋愛
 彼が好きな人と結婚したいようだから、私から別れを切り出したのに…どうしてこうなったんだっけ?

処理中です...