顔を焼かれ妹に荒野に捨てられた公爵令嬢、その身を偽り皇太子の護衛として王国へと帰還する

プロローグ

　私の名前はカノン・ロゼ・フォーチュン。
　フォーチュン公爵家の長女にしてこの国の皇太子様の婚約者であります。
　”氷姫”と呼ばれた母の生き写しの美貌を持ち、爵位の高い家に生まれ、さらには皇太子様の婚約者である私の事を誰もが羨みます。

　ですが私は変わって貰えるならこの立場を変わって欲しいです。

　私の父と母は恋愛結婚でした。
　しかし私を出産した後、産後の日立ちが悪く母は帰らぬ人となりました。
　この日から私は父に憎まれるようになりました。

　私が５歳の頃、父が１人の美しい女性と私と同い年の女の子を家に連れて帰ってきました。
　２人はその日から私の家族になりました。

　義母は父が愛した母の面影がある私を疎みました。
　数日違いの年の差しかない妹は私の事を嫌いまいした。

　私が居たせいで自分が公爵家の長女になれなかったからです。

　妹は私の腹違いの、血が繋がった本当の姉妹でした。
　父は母と婚約していた時から義母とも関係を持っていたようです。
　妹はソレを知っていました。

　私は憎まれながらも慕う父が、母だけを愛していなかった事にショックを受けました。
　そして父はにくい私ではなく、妹だけを可愛がるようになりました。
　私はいないものとして扱われました。

　義母と妹は事あるごとに私に嫌がらせをします。
　２人が行くパーティーに私が同行する事はありません。
　１０歳になる頃には私が新しい服を新調する事も許されません。
　使用人も義母の味方なので私に手を差し伸べてくれる方がいません。

　なので私は母の形見の装飾品の一部を売って、古着を買って凌いでいました。
　出来るだけ安くて長く着れそうなものを買いました。

　皇太子様と会う時だけ妹のドレスを借ります。
　産まれた時から決められていた婚約者の皇太子様に私は恋心を抱いていました。
　この時間だけが至福でした。
　何時か皇太子様の伴侶になる。
　そんな未来があるから私はやってこれました。

　そしてその未来もカレンによって潰されます。
　カレンも皇太子様に恋心を抱きました。

「お姉さまみたいなみすぼらしい女より花の妖精と呼ばれる私の方が皇太子様にお似合いでしょ」

　ニッコリと愛らしく笑ったカレンの手には強力な酸の入った瓶が握られていました。