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2章

【231話】

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「コレが自家発電か」

「主にソーラーパネルで発電しているよ」

 鈴蘭とマオは病院の発電所を見る。
 案内してくれたのはミヒロの夫のミナガだ。
 サザナ”ミナガ”レでミナガである。

「蓄電池も兼ね備えているな」

「ソーラーだけでは賄えないからね。蓄電池だけでも3ヵ月は持つよ」

「ふむ、短いな」

「短いかい?」

「3ヵ月で神を倒せると思うか?」

「難しいだろうね」

「ソーラーだけでは心許ない」

「太陽が顔を出してる期間も短いしね」

 この会話にマオは付いていけない。
 現代知識がないからだ。
 鈴蘭は先祖の記憶(と言うか知識である)を調べる事で現代知識もある。

「良し、蓄電池を少し弄るとしよう」

「良い方法があるのかい?」

「用意に時間がかかるが、電気の供給の点の問題は解決される」

「どうするのかね?」

「魔石を使い魔術で電気を生み出す装置を作る。所謂魔法陣と言うものだ。魔力を流し込めば電気が生まれるようにすれば係を作り順繰りで回せば電気が切れる心配はない」

「そんな事が可能なのかい?」

「私は出来んことは言わん」

「それは失礼した。君を見縊ったつもりはなかったんだが」

「分かっている。それでは今まで溜めて来た魔石とこれから必要になる魔石の数を確認して、動力源を動かせる人材が何人いるか確認せねばな」

「魔石が足りない場合はどうするんだい?」

「魔物狩りだな。私は有害な魔物以外を殺戮するのは好きではないが、同種を護るためだ、仕方ないだろう」

「魔物狩りが好きでない、か。君は本当に変わっているね。今生きてる人類は魔物など滅亡して欲しいと思っているだろうに、君たちの感性はまるで最初からこの事態に順応してあるみたいだ。君たちは何者だい?」

「ふふ、秘密をあまり抱えたくはないが、それを話すと余計に混乱を巻き起こすだけだ。暫くはその事は話に出さないでいてくれると有難い」

 鈴蘭の言葉にミナガは笑みを浮かべた。
 まるで子供を見守る父親のような目だった。
 鈴蘭はこんな目で人に見られたことが無いので不思議な感情を感じる。

 鈴蘭は今まで庇護されたことが無い。
 何時も自分が守る側だ。
 だから年長者であっても庇護欲を込めた目で見られたことが無かったのだ。

「君たちのような子供が皆を率いて頑張っている。それを見出すようなことは大人の私は手助けすることはあれ、邪魔をすることは無いよ。良く頑張ったね」

 ミナガが優しく鈴蘭に言う。

 鈴蘭の年齢は外見こそ17歳だが、実際には倍以上生きている。
 実年齢はミナガとそれ程変わらない。
 だが、鈴蘭は自分が子供になった気がした。
 庇護の眼で見られると言うのは、これ程に心を穏やかにさせるモノかと驚愕すら抱いて。

「貴方のような人格者が此処に居てくれて良かった。是非これからも皆を纏めて欲しい」

「君たちが居るのに?」

「我々はあくまで神に反逆するチームのリーダーをしているに過ぎない。もともと集団を纏めるのには向いておらんのだ。これからも戦いはするし、戦力を育てる事はするが、この病院に居る人間を保護し纏めるのは貴方にお願いしたい」

「これは大変そうだ、が、子供が頑張っているのに大人が頑張らない訳にいかないね。今それが1番向いているのが私だと言うならば、その役目請け負わせて貰うよ」

「有難う。では私とマオは魔法陣と魔石の解読で少し籠る。暫くは部屋から出ないだろうから、適当に食事などを持ってきて欲しい」

「分かった、腕によりをかけて作らせて貰う」

 ミナガは医者だが料理も作る。
 ちゃんと料理担当班も居るのだが、料理を作っている方が落ち着くらしい。
 それにさり気無く食材が使われ過ぎないように気を使っているようでもある。
 随分と有能な男が存在したものだ。
 流石は『大聖女』の父親である。

 そして、鈴蘭にとってのご先祖様でもある。

 血縁の為にこんなにすんなり受け入れられるのだろうか?
 鈴蘭の心の中にミヒロもミナガもす、と入って来て自分の居場所を作ってしまった。
 実の両親に興味を持たれなかった鈴蘭からしたら、まるで本当の親のように接してくれる2人の存在は不思議で、それでいて温かい物だった。

「鈴蘭、私は私にも甘えて欲しいと思うぞ」

「ふふ、では2人きりになったらたっぷり甘えさせて貰おう」

 あてがわれた部屋でマオが言った。
 どうやらマオは鈴蘭が他人に懐くのが気に障るらしい。
 流石に表に出しはしないが、鈴蘭から見れば一目瞭然だ。
 そんな、鈴蘭の事が好きすぎるマオの事が心から可愛いと思う。

「お前が居れば、私は幾らでも頑張れる。ずっとそばに居てくれ、マオ」

「当然だ!もう鈴蘭を忘れたりしない!!」

 1度『悪意の概念』によって鈴蘭の事を忘れたのが相当尾を引いているらしい。
 マオは鈴蘭が自分から離れて行かない様に必死である。

「ではまずは甘い口付けでも期待しようか?」

「良いのか?」

「こんな時だからこそお前を感じたいよマオ」

「私も鈴蘭に触れたい」

「では、たっぷり愛情を注いでおくれ」

 ベッドに鈴蘭は寝転んで、まだ立っているマオを誘う。
 マオはその誘惑に耐えることなく、その身体の上に乗り、そ、と唇を重ねるのであった。
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