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2章

【216話】

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 大陸中の魔獣や魔物が凶暴になった。
 今まで森でのんびり過ごしていた穏やかな魔物迄、今は村や町を襲いに出没する。
 近隣の国は騎士団を遠征に出すことになった。
 被害は余りに多く、もうギルドと契約している冒険者たちだけでは、クエストとして片づけられる規模を大きく上まってしまったのだ。

「魔王が何らかの理由で凶暴化したのだろうな」

 リリィ・オブ・ザ・ヴァリーの声が白の空間に響く。
 集められ他13人の選ばれし者たちが円卓を囲む。

「カカン王国、スティルグマ王国は大聖女の張った結界が生きている。国から出なければ国の中ででは被害はさほどないだろう。
軍事国家フレイムアーチャは戦いを生業としているのでそう不利では無い。
獣人族の国ジャクタルは高い肉体能力を持つ獣人たちの国なので、まぁ凌げるであろうな。
魔術国家ディノートも優秀な魔術師が揃っている。法術国家フォクウンも優秀な法術師や神官が揃っているので問題は無かろう。
ガフティラベル帝国は雷帝に授けた加護で簡易結界が張ってあるので大丈夫だ。
だが文明国家のクロイツは戦いには向いていない。
他のそれぞれの国からの協力を仰ぎたい。出来るであろうか?」

「それぞれの国から戦力の援護を出して行きます」

「そうか、助かる。悪いな雷帝。他にも力を振り分けれる余裕のある国はあるか?」

「私の所も少数でしたら」

「アーシュ殿か。フレイムアーチャの精鋭部隊には期待をしている」

「戦力をさいて貰う分、我が国の医療班を他の国に差し出します。法術国家のフォクウンには必要ないでしょうが、クロイツは医学においては大陸最高峰を名乗らせて貰っておりますので」

「レオンハルト宰相、よろしくお願いするぞ」

「御意に」

「魔物と魔獣が凶暴性を増したとはいえ、まだ高位の悪魔が通れるほどのゲートは開いていない。そちらは私がどうにかしよう。皆は自国と周囲の民を護ることに力を割いてくれ」

「「「「「「「御使い様の仰せのままに」」」」」」」

「では、今日はこれにて解散とする。皆それぞれ《聖破邪大結界》の制作にも力を入れてくれ」

 パチン、とリリィが指を鳴らす。
 そして13人の使徒たちは己の部屋に飛ばされたのであった。
 
 リリィ・オブ・ザ・ヴァリーが魔界に向かう2か月前の話である。
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