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2章

【212話】

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「ローズ国王!図面のチェックお願いします!」

「ここの図形が間違っている!ここはコレではなくこうだ!」

「聖水の在庫が足りなくなってきました!」

「ガフティラベル帝国に滞在しているリリィ様に伝達を!聖水を棚卸して貰うぞ!」

「あーっ!ここの魔術文字の字体が間違っています!」

「修正して間違っているところを全部5時間以内に整えろ!」

 カカンでは現在《聖破邪大結界》の作成中だ。
 まるで漫画家の〆切前の様に皆が死んだ目をしながら結界の構成陣の作成に取り組んでいる。
 何せ時間が無い。
 魔王が悪魔を連れてせめて来る前に結界を作らなければいけないのだ。
 1000年前の結界があるので今のところ大した被害は喰らってないが、それでも魔王の存在で活性化した魔物が人を襲う事故が多発している。
 国全土を覆う新たな天界式の結界を作らない訳にはいけない。

 だが魔王が復活した事を知っているのは王宮勤めの役職持ちだけだ。
 一般市民は知らされていない。
 無駄に恐怖を煽る必要性は無い。
 集団パニックは時に敵が出るより被害が出る。

 しかし魔王の存在を知っている者にとっては命がけの作業であった。
 死にたくないのは皆同じだ。

 そして悪魔は残虐性が高いのだと言う。

 魔族と悪魔は違う。
 魔族は魔力が膨大で長命な”魔族と言う名の人種”なのだ。
 無駄に残虐性は無いし人間を襲うことも無い。
 世界のいたるところに探せばひっそりと暮らしている魔族は存在する。
 20数年前の魔族と人間の戦争のせいで、無駄に人間との間にヒビが入った事で、あまり人里には降りなくなったが、大陸に人間として住む魔族は存在する。

 それ以外の大半の魔族は魔国が無くなったので別の大陸に真魔国を作り出したらしい。
 現在は国を整えるため魔族は今回の人間を狙った悪魔との戦争にはかかわっては来ないだろう。

 20数年前に魔族と人間とで争いが起こったのも『悪意の概念』の仕業であった。
 その時は御使いリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが軽くいなしたのだが。
 悪魔の王となるとそうもいかない。

 悪魔は魔族とは比べ物にならない程魔力が多く、残虐だ。
 人の地肉を喰らい、女子供を犯しつくす。
 そんな輩を国に入れないようにするのは当然の事である。

 なので大聖女の《聖破邪大結界》の上からさらに天界式の《聖破邪大結界》を張るのである。

 一般人にはそれとなく誤魔化しながら仕事を振っているが、内心理由を知る者は鬱で死にたい気分だろう。
 国全体を覆う結界なので兎に角大きい。
 人件費も馬鹿にならない。
 コレに関しては天界から補助が来るので結界のかなめとなる聖石の入手と、人件費に割くだけのインゴットを国に支給されているので問題はないのだ。
 そうでもしないとお金が無くて国が傾きましたじゃ話にならない。

「ふぅ、後幾日かかるのだろうな………」

 大陸の大国が《聖破邪大結界》を張り終えたらリリィ・オブ・ザ・ヴァリーは魔界へと旅立つ。
 ローズにとってはソレが心配の種でもある。
 魔王が攻めてこないのはリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが地上に居るからと言う事が大きい。
 魔王はリリィ・オブ・ザ・ヴァリーに執着している。
 ゆえに魔王の抑制力になっているのがリリィ・オブ・ザ・ヴァリーだった。

 果たしてリリィ・オブ・ザ・ヴァリーが魔界に旅立った瞬間に悪魔が攻めてこないと言えるだろうか?

 この事を知っているのは会議で魔王とリリィ・オブ・ザ・ヴァリーの攻防を見た13人の人間のみ。
 その事がさらにローズの心を重くするのであった。
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