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そして全能神は愉快犯となった

【160話】

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 漫画喫茶を借り切った翌日。
 もう寝室に入って軽い甘味と寝酒を楽しんでいる時間、サイヒはルークに尋ねた。

「ルーク、気に入った作品はあったか?」

「サイヒ!鬼〇の刃の聖地巡礼がしたい!」

 エメラルドの瞳を輝かせてルークが満面の笑みで答えた。

「ほぅ、〇滅か。私も好きだぞ、かまぼこ隊黄色い子推しだ」

「私は煉〇さんが好きだな、人間として尊敬する。あんな人に私もなりたい!」

 瞳がキラキラだ。
 映画を見せたらさらにハマるだろう。
 ユラになんとか【復元】して貰えないだろうか?
 サイヒは映画でボロ泣きするであろうルークを想像し、ソレは可愛いなぁと心の中で思った。
 ギャン泣きルーク。
 レアでは無いが尊い。
 サイヒはルークが好きすぎて少し壊れているところがある。
 まぁルークも壊れているのでどっこいどっこいだ。

「では芦ノ牧温泉の老舗旅館・大河荘は外せないな。もともと温泉にも行きたかったし、起点のはじめとしても丁度良い」

「芦ノ牧温泉?」

「大陸の最東にある田舎の方だ。無〇城にそっくりらしいぞ?入ったら三味線で迎えてくれるらしい」

「ソレは良いな!」

「一刀石も行かねばな」

「ソレは何だ?」

「一目見ただけで炭治郎の名シーンのようだと思える場所の、縦に真っ二つに割れた巨大な石「一刀石」だ。この巨石があるのは、剣術・新陰流の達人である兵法家・柳生石舟斎が天狗を相手に剣術の稽古をしたと伝えられている場所だ。
一刀石には、天狗と勝負になった石舟斎が一刀のもとに相手を斬り捨て、2つに割れた巨石が残ったという逸話が残されている。
作中には、炭治郎が修行中、師匠である鱗滝左近次に「この岩を斬れたら最終選別に行くのを許可する」と言い渡されるシーンがある。
岩の巨大さに挫折しそうになる炭治郎の前に、兄弟子・錆兎が現れ、「俺は岩を斬っている、お前より強い」と勝負を仕掛ける。
炭治郎は修行の果て、狐の面をかぶった錆兎と戦い勝利するが、面を斬ったはずの刀が実は岩を斬っていたというエピソードだ。
作品とシンクロする部分が多いことから注目を集め、神話時代ではコスプレをし「原作再現」の写真を撮るファンも多かったらしいぞ。
私たちもコスプレそして写真を撮るか?」

「サイヒのコスプレ…個人的には〇獄さんをして貰いたいが、似合いそうなのは義〇さんだな……」

「うん、分かっていたがそこで女キャラの名前は出んのだな。個人的には兄上もしてみたいが」

「サイヒの兄上!?目が多い…私はどの目を見つめれば良いのだろうか……」

「いや、普通に通常にある目を見つめてくれたら構わんぞ?」

 ルークは若干天然である。
 久しぶりにその天然ぶりが見れてサイヒは楽しくなってきた。
 最初に会った頃のルークみたいだと自然心が浮き立つ。
 愛情は日々増すが、新鮮味と言うよりは落ち着いてきた2人の関係だ。
 いや、他人に言わすと全然落ち着いてないが。

 だが久しぶりに仕事から離れて、重荷を背負ってないルークは無邪気さすら滲ませている。
 出会ってて間もないころのルークの無邪気さを久しぶりに見れた。
 ドラジュに感謝である。
 旅行からの土産はユラと温泉旅行をプレゼントしよう。
 ドラジュは大変喜ぶだろう。

 ユラは人身御供にされたのだ。
 南無。

「ルークは誰がしたい?」

「私?私は…風柱がしたい………」

 照れるルーク可愛い。
 耳まで赤い。
 自分と真逆のキャラを言うあたり、ルークはワイルドさを求めているのかもしれない。
 似ないものを持つ存在程憧れるのは人の性だ。

 傷のあるワイルドルーク…悪くない。
 ワイルドルークを押し倒すのも悪くない。
 すでにサイヒの頭の中は風柱ルークのサービスショットで溢れかえっている。
 開いた胸元がご馳走だ。

 昔のルークなら貧弱で出来なかっただろうが、今のルークは中々の細マッチョである。
 うん、案外似合いそうである。

「後は雲取山も行きたいな」

「主人公と妹の出身地のモデルになったところだな?」

「お、知っていたか。巡礼パンフの説明文では
『雲取山』の標高は約2,017m。道中や山頂からの景色は壮大ですが、登山中級者から上級者向けの山になるので、訪れる際にはしっかりとした準備が必要です。
山頂へは登山上級者でも6時間~7時間、初心者では10時間かかることもあります。日帰りでの登山は難しく、1泊することを想定して訪れましょう。
また作中の雪が積もる『雲取山』は最低気温が氷点下を下回ることもあり、さらに道が険しくなります。
訪れる際には、防寒具、登山グッズなど事前の準備を万全にしていきましょう。
とあるが、まぁ私とルークなら問題は無いだろう」

「雪景色楽しみだな」

「妹のコスプレをしたら背負ってやるぞ?」

「そこは私に背負わせてくれ」

「私に妹のコスプレが似合うとでも?」

「………申し訳なかった」

 流石にサイヒに14歳の少女の可愛らしさを求めるのは如何にルークとは言え見つける事が出来なかったらしい。
 その分、綺麗に全振りしているので問題はない。
 全能神様は可愛げでなく奇跡がかった美貌をウリにしているのだ。

「まぁ後はベタなところで攻めて行こうか。ふふ、楽しみだな」

「私もパンフレットを読み返しておく!楽しい旅行になるなサイヒ!!」

 なったら良いな、ではなく「なる」と言い切るあたりルークはサイヒを好きすぎる。
 コレが近所の家族風呂が付いたスーパー銭湯でもルークにとってはサイヒと2人きりで過ごせる時間は楽しい、幸せ以外のものなのだ。
 
(ふふ、ドラジュには本当に褒美をやらんとな)

 ルークの幸せそうな顔を見て、サイヒはその笑顔を肴に寝酒の果実酒を堪能するのであった。
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