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そして全能神は愉快犯となった

【157話】

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「助けてサイヒちゃん…いい加減ぐっすり寝たいの………」

 そうサイヒに助けを求めたのはユラである。

 何故か異様に草臥れている。
 声は擦れているし、目の下にクマが出来ている。
 少しばかり痩せたか?
 げっそりとし、肌の色は白を通り越して青白い。
 さながら幽鬼のようである。

「1週間ドラジュの部屋での監禁ご苦労様です」

「監禁とかいわないでぇぇえ!!」

 滂沱の涙が流れる。
 せめて軟禁と言った方が良かっただろうか?
 少しばかりサイヒは悩んだ。

 が、1週間ユラはドラジュの部屋から出てきてない。
 ドラジュの部屋で食事をとり(ドラジュが取りに来る)、ドラジュの部屋で眠る。
 部屋には風呂もトイレもミニキッチンもあるのでクラスには不便でない。

 だがユラは部屋に籠りたい訳では無い。
 
 まぁ自分の部屋ならだらだら過ごすが。
 いや、だらだらも少し違うか。
 大体ユラが部屋に籠るときは原稿をしている時である。
 どうやら東の小大陸(魔国があった大陸である)では、今もコミニケーションマーケットが続いているらしい。
 オタク、素晴らしい。

 ちなみに漫画文化は東の小大陸から天界でも流行だ。
 サイヒが好きなのは呪霊が出てくる作者が単眼猫なアレである。
 推しは主人公だ。
 イケメンは見慣れているので目隠し先生の女になる事は避けられた。
 特級呪物飲んじゃう系主人公可愛い。
 いっぱいご飯食べさせてあげたい。
 珍しくサイヒが母性本能を擽られるのである。
 漫画、凄い。
 いつか天界でもコミニケーションマーケットを復活させようと企んでいたりする。
 ユラが天界に住むことになったらノウハウは手に入るので是非自分も参加しよう。
 そう心に決めているサイヒである。

 閑話休題

 そんな訳で、ようやく恋人になったユラを片時も話さなかったドラジュのせいでユラは今ボロボロなのだ。
 特に腰と太腿の裏の筋肉が痛い。
 数億年使わなかった部位の筋肉を毎日使っているのである。
 体力が奪われるのは仕方ない。

 それにしてもドラジュの絶倫ぶりよ。
 流石は毎日夫を鳴かせるサイヒの息子である。
 母によく似て精剛だ。

 泣かれると益々鳴かせたくなるのは母子の血筋と言うしかない。

 だが1週間、ドラジュに抱きつぶされてヘロヘロのユラは哀れである。
 膝もプルプル震えている。
 扉にしがみ付いているのは足の筋力だけでは力が入りきらないのだろう。

 さて、どうするか…。

 サイヒは悩んだ。
 サイヒだって悩むことはある。
 これでも母親だ。
 息子の楽しみを奪いたくはない。
 サイヒが言ったらマザコンのドラジュは言う事を聞くであろうが…。
 珍しく優等生のドラジュが羽目を外しているのだ。
 どんどん羽ばたけ突き進めと言いたくなる。

 が、おんなじ女として受け入れる側のしんどさは知っている。
 ご先祖様の大事な叔母であるし、サラにもう1人のご先祖様の従姉妹でもある。
 無碍にはしたくない。

「取り合えず今日は匿ってあげますけど、明日からはドラジュと上手く話し合って適当なラインは決めて下さいよ」

「サイヒちゃん、神……」

 拝まれた。
 まぁサイヒは確かに神ではある。
 それも神の中で1番偉い全能神である。
 たまに自分でも忘れているが。

「私の部屋を1日だけ貸してあげますよ。そこで今日はゆっくり休んでください。私はルークのところに行くので1人でのんびり過ごしてくださいな。部屋の物は好きに使って良いですから。
ドラジュには今日は私の部屋に泊めると私から伝えておきます。ユラさんじゃ言いくるめられそうですからね」

「あ”り”がど~~~~っ」

「はいはい、泣いたら目が晴れますよ。擦らず涙は拭きましょうね。肌を摩擦すると皺が出来やすくなりますから」

 成長が止まっている神や古代種にこの理論が当てはまるか分からないが。
 取り合えずこくこく首を縦に振って、ティッシュで涙を拭きながら鼻をかんでるユラを見て、サイヒは確かに構いがいがあって近くで見ていた気分は分かるな、と思ったのだった。
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