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そして全能神は愉快犯となった

【155話】

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 その日の夜、再びユラはサイヒの部屋の風呂を借りに来ていた。

「随分とウチの息子が情熱的だったようで」

 クスクスと一緒に入浴しているサイヒが笑う。
 逆上せた訳でもないのにユラは全身を真っ赤にさせた。

「体洗うの手伝いましょうか?」

「恥ずかしいけど…お願いします………」

 ユラの体中についた赤い花弁。
 ドラジュの執着が見て取れるマーキングの痕だった。

「まだ体中が痛くて、自分で背中とか清めれる自信無かったのよぉぉぉ」

「初めて、痛いですよね」

「サイヒちゃんでも痛かったの!?」

「私を何だと思っているのですか?」

「規格外の化け物」

「頑張って自分で体洗ってください」

「ごめんなさいぃぃ、見捨てないでぇぇぇぇ」

 ユラが滂沱の涙を流す。
 どうにも随分と必死である。
 何かを恐れていると言うか……。

「あぁさてはドラジュに一緒にお風呂に入ろうとか言われたんですね」

「な、そ、わっ!」

「何でそれが分かったの?ですか?」

 コクコクとユラが首を縦に振った。

「ドラジュは執着心と嫉妬心が凄いですからね。まぁ女相手でもユラさんを触らせたくないんですよ。母親の私だけ例外、と言ったところでしょう」

 相変わらず隠れマザコンである。

「今朝も食事を部屋に運ばせるのを伝えに来た時、それはそれは嬉しそうな顔してましたよ」

「恥ずかしくて死ねるぅぅぅぅうっぅ!!」

 ジャボン、とユラが湯の中に沈んだ。
 2分せずに浮かび上がってきた。
 当然だ、ユラは肺呼吸である。
 鰓呼吸は習得していない。
 寧ろよくぞ熱い湯に2分も潜っていたものである。

「ところで」

「何サイヒちゃん?」

「まだ異物入ってる感じしません?」

「恥ずかしいから言うのやめてぇぇぇぇぇえ!!」

 全くもって騒がしい。
 浴場だから声も良く反響する。
 ユラのドップラー効果のかかる叫びを聞きながら、サイヒはうんうんと頷いた。

「私もそうでしたし」

「そなの?」

「えぇ、体中が痛い中良く逃げ出せたと思いますよ、今にしてみれば」

「諸体験の後に逃げ出すって何があったのよ」

「まぁ全部、前全能神のせいです」

「あ~【全知全能】ね。同じ古代種同士付き合いは長いけど、本当に碌な事しないわねアイツ」

(その【全知全能】がユラさんを好きだったことは伝えるのは止めておこう)

 実は前全能神の能力を受け継いだサイヒは記憶まで受つでいる。
 歴代の全能神の記憶全て受け継いでいるのだ。
 よくぞ頭がショートしなかったものだ。
 そのあたりサイヒはやはり化け物なのである。
 ユラの化け物発言は間違っていない。

「まぁ亀の甲より年の功、上手く巧みにドラジュを交わしてくださいな。神とはいえまだ20歳です。性欲盛りついてますよ?一晩で事が済んだと思ったら大間違いです」

「これからもあの痛いのするの!?」

「皆通ってきた道です。慣れると気持ち良いのでそれまで頑張って下さい。あ、暫くは部屋の明かりは付けないよう言っておきます」

「何で部屋の明かり消してたの知ってるの!?」

「まぁユラさんの性格上そうだろうと。暫くは暗くても文句を言わないでしょうけど、相手は性欲旺盛な若者です。くれぐれも油断なさらないように」

「~~~~恥ずかしくて死ねる………」

 そしてまたユラは湯の中に沈んだ。
 今度は3分後に上がってきた。
 この調子だとユラが潜水のギネス記録をたたき出す日も遠くないかもしれない。
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