142 / 294
そして全能神は愉快犯となった
【120話】
しおりを挟む
「あ、あれカマラ君?」
「えぇ、兄さんですね」
カフェの窓から外をのぞくと黒髪黒目に姿を変えたカマラが、庇護欲をそそる可憐な少女と2人で歩いていた。
少女を見るカマラの目は、とんでもなく優しい。
天界に居る時には見られなかった目だ。
表情も柔らかい。
「あの子がカマラ君の好きな子かぁ…サイヒちゃんと似た顔でああも相好を崩されると複雑な気分になるわ」
「ユラさんは母様と兄さんの顔の方が僕の顔より好きなのですか?」
「へぁっ?」
思わず間抜けな声がユラの口から出る。
想像もしなかった言葉をかけられたからだ。
「そ、そう言う事じゃなくて!サイヒちゃんとカマラ君は私の親友だった子に似ているから、その似た顔であんな表情されると何と言うか、親友が知らない女の子にデレデレしてるみたいで、複雑?みたいな…」
「そのご親友さんが好きだったのですか?僕の先祖に当たる方ですよね?」
「そりゃ数億年も付き合いがあったんだもの。好きに決まっているじゃない」
「ユラさんはご先祖様と恋愛関係にあったのですか?」
「そんなのある訳無いじゃない!相手は女の子よ!」
「女性同士での恋愛もあるでしょう?」
「ナイナイ!あったら今頃貴方たちが生まれてないわよ」
「つまりユラさんの片思いだった、と?」
「私とあの子との間にそういうのは一切ないの!」
「でもユラさん、お母様と兄さんの顔好きですよね?」
「それは…好き、だけど………」
はっきり言ってサイヒやカマラの顔はユラの好みドストライクだ。
ストレートど真ん中剛速球と言ったくらい好みだ。
男にも女にも見える特上の美貌。
こんな美しい存在は唯一無二であろう思わせる完璧を越えた奇跡の美しさ。
そんなにも綺麗な顔が好みで無いと言う人物があったら是非会ってみたい。
それくらいにサイヒとカマラの美貌は凄まじい。
だがドラジュだってタイプは違うが奇跡的な美しさと言った点では同様なのだ。
ルークとサイヒの良い所を取って来た、と言える顔だ。
2人のどちらにも似ているようでどちらにも似ていない。
唯一無二と言うならドラジュの方が当て嵌まる。
サイヒとカマラはそっくりだし、その先祖も生き写しのような美貌なのだから。
ドラジュの顔の方がユラにとっては緊張する美貌なのだ。
何せ親友と似ていないのに、それと同様クラスの美貌の持ち主。
出会ったことのないタイプの美貌。
サイヒとカマラがストレートのドストライクと言うなら、ドラジュだって魔球クラスの変化球で好みドストライクである。
「じゃぁ僕の顔は好きですか?」
ニコニコと微笑まれながらドラジュに尋ねられる。
「うっ…」
「好き?嫌い?」
子供に問いかける様な優しい声と表情でドラジュが問いかける。
その笑みは優しいはずなのに、圧が凄い。
物凄い圧がドラジュから発せられていた。
美形の笑顔…迫力半端ない。
周囲の女性はもうドラジュを見て、倒れそうなくらい頬を真っ赤に染めている。
ギャラリーが羨ましいとユラは思った。
この質問をこのプレッシャーの中で答えなくとも良いのだから。
見ている分には眼福この上ないだろう。
モブAになりたい。
今のユラの心情だった。
「ねぇユラさん、僕の顔は好き?嫌い?」
甘いテノールが鼓膜を擽る。
耳が孕みそうだ。
ギャラリーの女性の何人かは既に腰を砕けさせ、テーブルと仲良くなっている。
変わってくれ!
ユラは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
なのに顔には熱が集まる。
赤くなったり青くなったりとユラの顔面は忙しい。
キュ、とドラジュはユラの指先を握った。
「答えるまで、離さないですよ?」
チュッ
ユラの中指にドラジュの唇がリップ音を立てて触れる。
グラリ
ゴン!
「ゆ、ユラさん!大丈夫ですか!?」
ユラは全身を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。
眼が回ってしまって瞳が虚ろである。
クタリとその全身に力が完全に入っていない脱力状態だ。
「焦りすぎたかな…?」
ついカマラに心があるんじゃないかと言う発言を聞いて、ドラジュも嫉妬してしまったのだ。
だがこのユラの反応。
男慣れしていないのが丸わかりだ。
クスリ、とドラジュは妖艶な笑みを浮かべた。
「これ位で気をやるなんて、本当に可愛い。まだ誰も手付かずなその全て、僕色に染めたいね、早く」
クスクス笑うドラジュの垂れ流される色気に、カフェにいる女性たちは腰を砕けさせテーブルや床とお友達になるのであった。
ドラジュ、ユラを口説くのに夢中過ぎてすっかり本来の目的を忘れている。
カマラが少女とカフェに入って来て初めてドラジュは本来の目的を思い出すのであった。
「えぇ、兄さんですね」
カフェの窓から外をのぞくと黒髪黒目に姿を変えたカマラが、庇護欲をそそる可憐な少女と2人で歩いていた。
少女を見るカマラの目は、とんでもなく優しい。
天界に居る時には見られなかった目だ。
表情も柔らかい。
「あの子がカマラ君の好きな子かぁ…サイヒちゃんと似た顔でああも相好を崩されると複雑な気分になるわ」
「ユラさんは母様と兄さんの顔の方が僕の顔より好きなのですか?」
「へぁっ?」
思わず間抜けな声がユラの口から出る。
想像もしなかった言葉をかけられたからだ。
「そ、そう言う事じゃなくて!サイヒちゃんとカマラ君は私の親友だった子に似ているから、その似た顔であんな表情されると何と言うか、親友が知らない女の子にデレデレしてるみたいで、複雑?みたいな…」
「そのご親友さんが好きだったのですか?僕の先祖に当たる方ですよね?」
「そりゃ数億年も付き合いがあったんだもの。好きに決まっているじゃない」
「ユラさんはご先祖様と恋愛関係にあったのですか?」
「そんなのある訳無いじゃない!相手は女の子よ!」
「女性同士での恋愛もあるでしょう?」
「ナイナイ!あったら今頃貴方たちが生まれてないわよ」
「つまりユラさんの片思いだった、と?」
「私とあの子との間にそういうのは一切ないの!」
「でもユラさん、お母様と兄さんの顔好きですよね?」
「それは…好き、だけど………」
はっきり言ってサイヒやカマラの顔はユラの好みドストライクだ。
ストレートど真ん中剛速球と言ったくらい好みだ。
男にも女にも見える特上の美貌。
こんな美しい存在は唯一無二であろう思わせる完璧を越えた奇跡の美しさ。
そんなにも綺麗な顔が好みで無いと言う人物があったら是非会ってみたい。
それくらいにサイヒとカマラの美貌は凄まじい。
だがドラジュだってタイプは違うが奇跡的な美しさと言った点では同様なのだ。
ルークとサイヒの良い所を取って来た、と言える顔だ。
2人のどちらにも似ているようでどちらにも似ていない。
唯一無二と言うならドラジュの方が当て嵌まる。
サイヒとカマラはそっくりだし、その先祖も生き写しのような美貌なのだから。
ドラジュの顔の方がユラにとっては緊張する美貌なのだ。
何せ親友と似ていないのに、それと同様クラスの美貌の持ち主。
出会ったことのないタイプの美貌。
サイヒとカマラがストレートのドストライクと言うなら、ドラジュだって魔球クラスの変化球で好みドストライクである。
「じゃぁ僕の顔は好きですか?」
ニコニコと微笑まれながらドラジュに尋ねられる。
「うっ…」
「好き?嫌い?」
子供に問いかける様な優しい声と表情でドラジュが問いかける。
その笑みは優しいはずなのに、圧が凄い。
物凄い圧がドラジュから発せられていた。
美形の笑顔…迫力半端ない。
周囲の女性はもうドラジュを見て、倒れそうなくらい頬を真っ赤に染めている。
ギャラリーが羨ましいとユラは思った。
この質問をこのプレッシャーの中で答えなくとも良いのだから。
見ている分には眼福この上ないだろう。
モブAになりたい。
今のユラの心情だった。
「ねぇユラさん、僕の顔は好き?嫌い?」
甘いテノールが鼓膜を擽る。
耳が孕みそうだ。
ギャラリーの女性の何人かは既に腰を砕けさせ、テーブルと仲良くなっている。
変わってくれ!
ユラは背中に冷や汗が流れるのを感じた。
なのに顔には熱が集まる。
赤くなったり青くなったりとユラの顔面は忙しい。
キュ、とドラジュはユラの指先を握った。
「答えるまで、離さないですよ?」
チュッ
ユラの中指にドラジュの唇がリップ音を立てて触れる。
グラリ
ゴン!
「ゆ、ユラさん!大丈夫ですか!?」
ユラは全身を真っ赤にしてテーブルに突っ伏した。
眼が回ってしまって瞳が虚ろである。
クタリとその全身に力が完全に入っていない脱力状態だ。
「焦りすぎたかな…?」
ついカマラに心があるんじゃないかと言う発言を聞いて、ドラジュも嫉妬してしまったのだ。
だがこのユラの反応。
男慣れしていないのが丸わかりだ。
クスリ、とドラジュは妖艶な笑みを浮かべた。
「これ位で気をやるなんて、本当に可愛い。まだ誰も手付かずなその全て、僕色に染めたいね、早く」
クスクス笑うドラジュの垂れ流される色気に、カフェにいる女性たちは腰を砕けさせテーブルや床とお友達になるのであった。
ドラジュ、ユラを口説くのに夢中過ぎてすっかり本来の目的を忘れている。
カマラが少女とカフェに入って来て初めてドラジュは本来の目的を思い出すのであった。
2
お気に入りに追加
4,980
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
【完結】国に勝利を齎して『お前とは結婚しない! 』と告げられるが、私は既に結婚しています
紫宛
恋愛
ゼファード帝国には、5人の将軍が存在する。
1人は剛腕のヴァイツ、
1人は魔炎のフェイド、
1人は竜星のシルヴァ、
1人は双剣のアルフィ、
1人は黎明のティルセリア、
その中でも、黎明のティセリアは女性で若く、平民から実力だけで将軍までのし上がった実力者。
今回、隣国との戦争で3年続いた戦争に勝利という終止符を打ち帝都に帰還した。
勝利を祝う為に、催されたパーティでこの国の第2皇子ゲイリオに『お前とは結婚しない!俺は聖女マリアリアと結婚する! 』と宣言されました。
続編を別のタイトルにて、執筆中。
本編ティルセリアとアルヴィスのその後~子供が出来るまで~。番外編として、ゲイリオ皇子のその後、マリアの過去、将軍達の日常、両陛下の秘密、等など投稿予定です。
よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
2話完結。
ごめんなさい、2話完結出来なかった……!
3話完結です。よろしくお願いします(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”
素人作品です。
9月29日
ご指摘頂いた内容は、分かる範囲で修正させて頂きました。
ありがとうございましたm(_ _)m
同日19時
ご指摘頂いた内容、勘当、離縁について調べ直し、修正致しました。
あらすじでの名前の修正及び、誤字修正致しました。
ありがとうございましたm(_ _)m
10月1日
5代将軍→5大将軍、修正致しました。
【R18】溺愛される公爵令嬢は鈍すぎて王子の腹黒に気づかない
かぐや
恋愛
公爵令嬢シャルロットは、まだデビューしていないにも関わらず社交界で噂になる程美しいと評判の娘であった。それは子供の頃からで、本人にはその自覚は全く無いうえ、純真過ぎて幾度も簡単に拐われかけていた。幼少期からの婚約者である幼なじみのマリウス王子を始め、周りの者が
シャルロットを護る為いろいろと奮闘する。そんなお話になる予定です。溺愛系えろラブコメです。
女性が少なく子を増やす為、性に寛容で一妻多夫など婚姻の形は多様。女性大事の世界で、体も中身もかなり早熟の為13歳でも16.7歳くらいの感じで、主人公以外の女子がイケイケです。全くもってえっちでけしからん世界です。
設定ゆるいです。
出来るだけ深く考えず気軽〜に読んで頂けたら助かります。コメディなんです。
ちょいR18には※を付けます。
本番R18には☆つけます。
※直接的な表現や、ちょこっとお下品な時もあります。あとガッツリ近親相姦や、複数プレイがあります。この世界では家族でも親以外は結婚も何でもありなのです。ツッコミ禁止でお願いします。
苦手な方はお戻りください。
基本、溺愛えろコメディなので主人公が辛い事はしません。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。
Rohdea
恋愛
伯爵令嬢のフルールは、最近婚約者との仲に悩んでいた。
そんなある日、この国の王女シルヴェーヌの誕生日パーティーが行われることに。
「リシャール! もう、我慢出来ませんわ! あなたとは本日限りで婚約破棄よ!」
突然、主役であるはずの王女殿下が、自分の婚約者に向かって声を張り上げて婚約破棄を突き付けた。
フルールはその光景を人混みの中で他人事のように聞いていたが、
興味本位でよくよく見てみると、
婚約破棄を叫ぶ王女殿下の傍らに寄り添っている男性が
まさかの自分の婚約者だと気付く。
(───え? 王女殿下と浮気していたの!?)
一方、王女殿下に“悪役令息”呼ばわりされた公爵子息のリシャールは、
婚約破棄にだけでなく家からも勘当されて捨てられることに。
婚約者の浮気を知ってショックを受けていたフルールは、
パーティーの帰りに偶然、捨てられ行き場をなくしたリシャールと出会う。
また、真実の愛で結ばれるはずの王女殿下とフルールの婚約者は───
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる