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【80話】
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「う~ん、やはり成長を止めておくべきだろうか?」
その日珍しくサイヒは自室で悩んでいた。
ルークとの共同の部屋ではない。
1人になりたい時用の自室でだ。
「ルークはまだ20歳だからな…まだまだ青春を謳歌する年代だな、うん、成長を止めよう」
1人で納得してサイヒは憂いた顔に、笑顔の表情を張り付けた。
全能神たるもの余裕を持っていなければいけない。
何せ世界を調整するのだから。
サイヒは悩んでいる暇も休んでいる暇も無いのだ。
ただでさえ全能神の入れ替わりがあったところだ。
まだ新たな全能神であるサイヒは功績を残していない。
ちゃんと天神の皆が心からサイヒを全能神だと認めるまでは、止まってはいけないのだ。
「じゃぁ何年後にするか…5年ほど止めておこうか?」
何を止めるのか。
サイヒはソレを言葉にしない。
万が一隠し事がバレるのは避けたいものなので。
「しばらくは激しい運動をしなくて良いように行動しないとな」
うんうんと頷いたサイヒは、今後の予定を頭の中で組み立てる。
まずは2年後に行われるアンドュアイスとルーシュの結婚式には、是非とも出たい。
人界に降りる許可をすぐにとれる体制を作らなければならない。
その為にはやはり成果と人望が必要。
しばらく仕事漬けの生活を送るとしよう。
デスクワークなら負担もほとんどない。
メンタルはゴリゴリ削られるが。
サイヒは事務仕事が苦手な訳では無い。
だがどちらかと言うと体を動かす方が好きだし、正統派の仕事より暗躍している時の方が楽しいのだ。
全能神としての仕事…。
うん、楽しくない。
だがそうも言ってられないのだ。
成果。
まずは成果だ。
天界中の皆がサイヒを敬う成果が必要だ。
その為に嫌な書類仕事もしようでは無いか。
サイヒはテーブルに置かれていた白湯を飲むと、自室を出た。
:::
「お兄様、ご休憩は何を飲まれますか?」
「カフェインの無い温かいものを」
執務室で書類と睨めっこしていたサイヒにマロンが声をかける。
ソレに対してのサイヒの注文が珍しい。
サイヒは紅茶が好きである。
特にアールグレイの香りが好きだと好んで飲んでいる。
飲むときはアイスで。
さっぱりとした飲み物を好む。
それがノンカフェインのホットの飲み物を飲みたがることにマロンは首を傾げた。
「ハーブティーにしましょうか?カフェインは無いですし、ローズヒップなどはどうですか?」
「いや、香りは大人しめの、女性ホルモンの分泌を促さないものにしてくれ」
「ではカモミールは?」
「それで頼もう」
「お茶菓子は何になさいますか?」
「しばらく甘いものは控えたい。茶菓子はしばらく無しで頼みたい」
「承知しました。すぐにお持ちします」
「あぁ頼んだ」
マロンとの会話を終了させ、サイヒは視線を書類に戻す。
テキパキと仕事をする姿は何時もと変わらない。
マロンはサイヒの要望に疑問を抱きながらも、世界一美味しいカモミールティーを淹れるため執務室を離れた。
本日はルークとクオンが別の仕事に出ているのでこの謎の残る会話を聞く事が無かった。
感の良いクオンが居たら何か気付いていたかもしれない。
「もう少しだけ、待っていてくれな」
サイヒは1人になった執務室で、下腹部に手を当て声をかけた。
その日珍しくサイヒは自室で悩んでいた。
ルークとの共同の部屋ではない。
1人になりたい時用の自室でだ。
「ルークはまだ20歳だからな…まだまだ青春を謳歌する年代だな、うん、成長を止めよう」
1人で納得してサイヒは憂いた顔に、笑顔の表情を張り付けた。
全能神たるもの余裕を持っていなければいけない。
何せ世界を調整するのだから。
サイヒは悩んでいる暇も休んでいる暇も無いのだ。
ただでさえ全能神の入れ替わりがあったところだ。
まだ新たな全能神であるサイヒは功績を残していない。
ちゃんと天神の皆が心からサイヒを全能神だと認めるまでは、止まってはいけないのだ。
「じゃぁ何年後にするか…5年ほど止めておこうか?」
何を止めるのか。
サイヒはソレを言葉にしない。
万が一隠し事がバレるのは避けたいものなので。
「しばらくは激しい運動をしなくて良いように行動しないとな」
うんうんと頷いたサイヒは、今後の予定を頭の中で組み立てる。
まずは2年後に行われるアンドュアイスとルーシュの結婚式には、是非とも出たい。
人界に降りる許可をすぐにとれる体制を作らなければならない。
その為にはやはり成果と人望が必要。
しばらく仕事漬けの生活を送るとしよう。
デスクワークなら負担もほとんどない。
メンタルはゴリゴリ削られるが。
サイヒは事務仕事が苦手な訳では無い。
だがどちらかと言うと体を動かす方が好きだし、正統派の仕事より暗躍している時の方が楽しいのだ。
全能神としての仕事…。
うん、楽しくない。
だがそうも言ってられないのだ。
成果。
まずは成果だ。
天界中の皆がサイヒを敬う成果が必要だ。
その為に嫌な書類仕事もしようでは無いか。
サイヒはテーブルに置かれていた白湯を飲むと、自室を出た。
:::
「お兄様、ご休憩は何を飲まれますか?」
「カフェインの無い温かいものを」
執務室で書類と睨めっこしていたサイヒにマロンが声をかける。
ソレに対してのサイヒの注文が珍しい。
サイヒは紅茶が好きである。
特にアールグレイの香りが好きだと好んで飲んでいる。
飲むときはアイスで。
さっぱりとした飲み物を好む。
それがノンカフェインのホットの飲み物を飲みたがることにマロンは首を傾げた。
「ハーブティーにしましょうか?カフェインは無いですし、ローズヒップなどはどうですか?」
「いや、香りは大人しめの、女性ホルモンの分泌を促さないものにしてくれ」
「ではカモミールは?」
「それで頼もう」
「お茶菓子は何になさいますか?」
「しばらく甘いものは控えたい。茶菓子はしばらく無しで頼みたい」
「承知しました。すぐにお持ちします」
「あぁ頼んだ」
マロンとの会話を終了させ、サイヒは視線を書類に戻す。
テキパキと仕事をする姿は何時もと変わらない。
マロンはサイヒの要望に疑問を抱きながらも、世界一美味しいカモミールティーを淹れるため執務室を離れた。
本日はルークとクオンが別の仕事に出ているのでこの謎の残る会話を聞く事が無かった。
感の良いクオンが居たら何か気付いていたかもしれない。
「もう少しだけ、待っていてくれな」
サイヒは1人になった執務室で、下腹部に手を当て声をかけた。
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