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《174話》

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「あら、ドクターとサラちゃん同伴出勤なのね」

「一緒に同じ店で朝飯を食べたからな」

 けしてここで昨日の夜から一緒に居ましたとは言わないセブンである。
 だがナナは気付いていた。
 セブンの服が昨日と同じなのである。 
 サラの方は着替えているが。
 そして2人の香りが共に移り香として薫る。
 サキュバスのナナは嗅覚も人間とは比べ物にならない。

(あの2人同じ匂いがするよな?)

 こしょこしょとナナに耳打ちするのはレオンハルトである。
 サキュバスでもない真っ当な人間のお前が何故そんなに嗅覚が効く?と突っ込んではならない。
 ディノートに来た時、ナナの香りを追ってセブンの診療所を見つけたもうすぐ人間を辞めそうなレオンハルトであるのだから、1番ともにした者の香りが一緒なくらい簡単に嗅ぎ分けるのである。

 だがまだ一緒に居ただけだとレオンハルトもナナも気付いていた。
 まだ距離感が体を重ねた者のソレでない。
 しかしそうなるのももうすぐなのでは、な雰囲気が2人の間で流れている。

「ただいまなのじゃ、ふぅ、脳が小さい者に知識を教えると言うのは面倒くさいものじゃのう。良い男もおらなんだし、我を労わってもいいのだぞ、番殿?」

「手だけだぞ?」

「ちょっとレオン!」

「ソレで収まるんだ。他の男に目移りするまで手の浮気だけは許してくれ………」

 レオンハルトの目が死んでいる。
 どうやらブラックドラゴンに相当悩まされているらしい。
 ナナはプンプンと怒っているが、美女は怒る姿も色っぽいものだ。

「診療所と俺の家ではするなよ」

「誰のせいでこうなったと思ってんだ!この鬼医者!!」

 そうセブンのせいである。
 セブンは人化ブラックドラゴン―もといラックに仕事を言い渡していたのだ。
 森の薬草の調合。
 ラックは長く生きるドラゴンなだけあって薬の知識も素晴らしかった。
 頭の回転も速く、セブンのお薬口座もすぐに理解した。
 そして薬師ギルドを通して、小さな製薬会社を立てるべくラックがセブンの診療所から責任者として派遣されてのであった。

 どうやら製薬会社はうまく起動しそうである。

 その件でセブンは昨日薬師ギルドを訪問したのである。
 その内に副作用の出ない軽い薬を置いている薬局も作る予定である。

 全くブラックドラゴンがレオンハルトを気に入ってくれて良かったものである。
 棚から牡丹餅と言うヤツだ。
 レオンハルトを餌に、そしてセブンの作る料理で餌付けして、セブンは見事ラックを上手く使えるようになったのである。

 数日、何人かの薬師ギルドの従業員に知識を叩き込んだため、ラックは三日三晩寝ずに仕事したのである。
 ドラゴンにとっては三日などつかの間に過ぎないが、頼まれた仕事をこなしたのだ。
 ご褒美が欲しくなるのは仕方ないだろう。

「さ、行くのじゃ番殿♡」

「あぅあぅあぅあぅ~~~~~…………」

 レオンハルトは黒いドレスの美女に引きづられて行ったのだった。

 サラが《診療中》の札を診療所の扉をかける。
 今日も又、何時もの仕事の日々が始まるのであった。
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