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《129話》

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 麻婆豆腐を食べて、その日もサラはセブンの家にお泊りだ。
 ナナは何処に住んでいるか分からない。
 レオンハルトはセブンの家に間借りしているはずなのだが、何故か姿が見えない。

「レオンさん、何処行った、の、でしょう?」

「どうせエロナースの所だ。心配するだけ損だから止めておけ」

「心配、いらない2人、素敵です。私も、早く大人に、なりたいです…」

 食後のお茶をセブンと2人で飲みながら、サラはそんな事を言う。

 大人の定義とは何だろう?
 ディノートでは18歳で成人だ。
 サラは19歳である。
 国の基準では十分に大人である。

 だがセブンから見てサラは子供に見える。

 自分が付いていないといけない子供。
 庇護する対象。
 1人にしたくない少女。

 セブンはサラをあのアパートに帰らすのが嫌いだ。
 生活に必要最低限のものしか置いてない1間のアパート。
 生活感のない冷たい空気の漂う部屋。
 寝るだけの場所なのでサラに取っては十分な一国一城の物件様なのだが。
 セブンの所に来ると居心地が良すぎて、ついついお泊りをしてしまう。
 そうセブンが仕向けているとは気付いていない。
 当然だ、セブンも無意識なのだから。

「エロンの事よりもアホロ王子の方が問題だ。急に人が変わって何があったんだ?」

「アコロ王子は昔から、あんな感じ、です、よ?」

「いや、ここ数カ月ほど淑やかな美形をしてただろう?」

「興味なくて何も知らない、です」

「興味ないのか?」

「無い、です」

「そうか」

 ふ~んとセブンは満更でもなさそうな息をついた。
 サラとアコロ王子が婚約者であったことは知っている。
 いや、知らされた。
 あのサラの奪い合いの後、レオンハルトからサラの過去を聞いたのだ。

 流石は仕事のできる男である。
 サラの過去を存分に調べ上げてくれた。

 そしてサラが聖女であるにもかかわらず、婚約者のアコロ王子が勝手に婚約破棄をし、別の聖女を立てたのだと聞いた。
 サラの神殿での扱いも聞いた。
 想像以上のブラック企業だ。
 セブンの診療所など生温い。
 どうりでサラがへこたれない訳である。
 後食への執着も生い立ちが原因と判明。
 これからはもっと旨い物を食わせ続けねばとセブンは決心した。

 だがアホロ…アコロ王子はサラを見初めた。

 当然だ。
 聖女時代と違って今のサラは体中に栄養が行き届いているし月の物が始まり女らしくなった。
 正直セブンの目から見ても美少女判定を上げても良いと思う位には良い方向に成長した。
 これなら十分好色のアコロ王子が気に入るのも当然だろう。

(ここまで育てたのは俺だぞ…誰が1度アラを捨てたヤツに返すものか…………)

「セブンさん、眉間、皺よってます。デザート美味しく、ないです、か?」

「俺が作ったんだ、不味い訳が無いだろう」

「ですよね、美味しい、です、よね」

 ニコニコとサラが笑う。
 この笑顔を見るために最近は料理をしているようなものだ。
 人のために作る料理も良いものだとセブンは最近思っている。
 ”人のため”ではなく”サラのため”だと言う事には気付いていない。
 拗らせDTは相変わらずである。

 因みに本日のデザートは『オーギョーチ』である。
 レモンがさっぱりの中華スイーツで食後のデザートにおすすめである。

「取り合えずあのアホロがどんな手でお前を捕まえに来るか分からん。暫くはここに滞在しろ」

「はい、です」

 コクリ、とサラが頷く。

(これで暫くはアラが家にいる生活だな)

 それに喜んでいる自分がいるなんて気付いても居ないDT歴33年の男、それがセブンと言う男なのであった。
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