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《104話》

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 ここ数日、ディノートの王宮では騒がしく家臣や使用人が慌てふためいていた。
 王が倒れた。
 主治医に見せても何の病か分からない。
 だが1日1日と王の容体は悪くなる。
 王の直系の血族はアコロ王子とアポロ王子。

 アコロ王子は王とはなれないだろう。
 生殖行為が行えないからだ。
 いや、言い方が違う。
 女性との間に子孫を残せないからだ。

 アコロ王子は聖女が去ってから、度々苦難の目にあった。
 止めは男としての生殖機能を失った。
 今は男の身で母乳が出る特異体質だ。
 男となら生殖行為が可能だろう。
 実際アコロ王子をそう言う目で見ている輩は多い。
 1番の危険人物は牢に捕らえられ、アコロ王子に害をなすことは出来ないが。
 それでもアコロ王子はもう女相手に生殖行為を行えない。
 後ろを弄らねば射精すら行えないのだ。
 男にアコロ王子を抱かせながら、アコロ王子が女を抱く、なら出来ないことも無い。
 だが国のトップに立つ王が、そんな人物で1国を治められるか?
 答えはNOだ。
 もうアコロ王子に世襲を期待している者は居ない。

 ではアポロ王子はどうだろう?
 アポロ王子は齢11だ。
 王として立つには幼すぎる。

 確かにアポロ王子は王の器だろう。
 勉学も剣術も秀でている。
 だがあまりにも子供だ。
 その無邪気さは人を引き付ける魅力ではあるが、有象無象が溢れている政を制する力はない。
 
 ならするのはアコロ王子を王に据えての垂簾政治か摂関政治か?
 ソレが1番現実的だろう。

 それ故に王宮は荒れていた。

 誰が政の主権を握るか?

 だが女王は政に興味のない女だった。
 淑やかで気品のある美しい女王。
 しかし政を任せるにはあまりにも力不足。

 それ故にアポロ王子を王に据え、己が権力を握ろうとするものが後を絶たなかった。

 問題はそれだけでは無い。

 王は兄弟が多い。
 年若く政にも長けている王弟。

 今、ディノートはアポロ王子を王に推すものと、王弟を王に推すものに分かれている。
 ディノートの国政は荒れに荒れていた。
 誰に任せても適応するだろうが、能力が秀でた者がいないため第1候補すら選べない状態だ。

 とにかく今は王に少しでも長く生きていてもらうしかない。

 その為には発展した医療が必要だった。
 例えばクロイツのような。
 文明国家クロイツなら王の病も治せるかもしれない。
 しかし王を隣国とはいえ国境を渡らせるには王の体力が無さ過ぎる。

 そうして家臣たちが奔走し、藁にも縋る思いで国中を探した結果、1つの下町の小さな診療所が見つかった。

 クロイツで医療を学び、先進の医療器具を扱える医者。

 こうしてセブンの元に、ディノートの宰相が姿を見せに来たのであった。
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