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《59話》

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「ところでドクター、今日から何処の宿に泊まるの?」

 ナナがセブンに問う。
 
 大きな施設に大きな集合住宅。
 どれが宿か一見して分からない。

「いや、宿は取らん。こっちにいる間は知人の家に厄介になる。家事力を提供する代わりにタダで宿を手に入れる事が出来たぞ、クックックッ」

 それはそれは楽しそうなセブンである。
 そろそろ料理も作りたくなって来ていたのだ。
 獣車での旅の途中の昼食は各自持ちだ。
 そしてセブンは毎回サンドイッチを宿の厨房を借りてこさえていた。
 サンドイッチ。
 飽きない用に具のレパートリーも拘った。
 だがサンドイッチ…。

 もうそろそろ手の込んだものが作りたい!

 鍋が。
 フライパンが。
 オーブンが。
 蒸し器が恋しい。

 そうセブンは家事大好きの中身主婦のアラサー男なのだ。
 家事力はカンスト。
 嫁が欲しいと思ったことなど無い。
 自分の家に他人が上がり込んで家の中をうろつかれる何て以ての外だ。
 食事だって1人でゆっくり静かに食べたい。
 なのに何故に女が欲しいと思えるか?

 だがセブンは気付いていない。

 サラは月の物が始まると体もメンタルもボロボロになるのでセブンの家で療養するのだ。

 セブンの作った食事を食べ。
 セブンが入った湯の張った浴槽につかり。
 セブンの家のトイレも使用する。

 それをセブンは居心地が悪いとは思わない。
 むしろ2人前の食事を作る方がはかどると、嬉々として料理をしている。
 これだけ自分の内側にサラを入れておいて、未だサラが自分の中で特別枠だと認識していないのである。

 もう脳味噌が病気の領域だ。

 ちなみにこの時はサラの体調を気遣うせいかご子息はお眠りになっている。
 1度サラが元気な時にセブンの家に泊まりに行ってみて欲しいものだ。
 ご子息が昼夜問わず勃ち上がる事だろう。
 その際のセブンの脳内に罹るダメージも測定したいものだ。

「ここだ」

「嫌な予感てあたるのよね~」

 城壁をくぐってから馬車に乗るのでまさかとは思ったのだ。
 王都の中心に向かう馬車。
 つまり王宮に近づいて行く訳だ。
 そして王宮に近いほど暮らす貴族の階級は上がっていく。

 そして馬車が止まった先は、王宮の次位に大きいのではないかと言う邸だった。

「「「「「「「「「お久し振りですセブン様」」」」」」」」

 セブンたちの訪問を主から聞かされていた邸の使用人たちが、馬車から降りたセブンたちを出迎えてくれた。

「暫く邪魔をさせて貰う。レオはまだ務めか?」

「はい、夕食には戻ると言っておられました」

「はいはい、夕食は作っとけって事だな」

「楽しみにされておりました」

「了解した」

 久しぶりの料理に腕が鳴るのかニヤリ、と笑みを浮かべる。
 悪役にしか見えないのは何故なのか?

「ちょ、ちょっとドクター!この屋敷の主人の階級は!?」

「あぁレオは公爵でこの国の宰相だ」

「美味しそう!じゃなくて、上流階級程魔族に厳しいのがクロイツじゃなかった!?」

「そうだぞ。まぁレオは気にしないで良い。エロナースものんびり過ごせ。ただし餌をくれてやるから使用人には手を出すなよ!」

「分かってるわよ!」

 小声でボソボソ喋るセブンとナナを見ながらサラはニコニコ笑顔を浮かべていた。
 それはそれは楽しそうに。

「楽しそうねサラちゃん?」

「ふへへ、久しぶりにセブンさんのご飯ですぅ」

(逆2乗の法則とは、物理量の大きさがその発生源からの距離の2乗に反比例する、という法則である。逆2乗とは2乗の逆数のことであり、この法則はしばしば、ある物理量の大きさがその発生源からの距離の逆2乗に比例する、という形でも述べられる。逆2乗の法則はしばしば短縮して逆2乗則とも呼ばれる。逆2乗の法則は冪乗則の一種であり、様々な物理現象の中に見出すことができる。以下の節では自然科学と物理学の歴史の中で特に重要な例について述べる。逆2乗の法則の発見により、物理学者は何らかの変化を認めたとき、その発生源と発生源との距離の関係を調べ、それらが逆2乗の法則に当てはまるかどうかに関心を持つようになった。逆2乗の法則が成り立つこと、特に指数が 2 であることには、我々のいる空間が3次元であり等方的であることと密接に関係している。空間の各点で測定できる物理量について、それがある発生源から生じる流体のようなものと見なせる場合、発生源から偏りなく流出する物質からの類推により、発生源を囲む球面を通過する物質の量は、球面の大きさによらず一定であると考えることができる。したがって球面を通過する物質の密度は球面の面積に反比例して小さくなる。発生源が球殻の中心にあるとすれば、球面の大きさは発生源から球面までの距離の2乗に比例するから、球面を通過する物質の密度は球面と発生源の距離の2乗に反比例する。
逆2乗の法則が成り立つことは、発生源の形状に強く依存している。逆2乗の法則が成り立つのは発生源が点や真球と見なせる場合であり、例えば棒状の光源に対しては逆2乗の法則は成り立たない。一般には、発生源の細かな構造を無視できる程度の距離においてのみ、より具体的には発生源の大きさに比べて非常に遠距離の領域で逆2乗の法則が成り立つ)

 本日のセブンの脳みそのお供は逆2乗の法則であった。
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