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《12話》
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とてとて歩いて診療所へ。
中心街に近いだけあって平民街の外れより活気がある。
地図を見ながら診療所を探すとえらく騒がしい集団が駆けていった。
「はて、何かあった、ですかね?」
気にせずとてとて歩いていたら、目的の診療所に先程の集団が居た。
「先生!団長をお願いします!!」
「団長、俺をかばってせいで!!」
「泣くなトーマス!男らしくしろ!」
「神殿迄運ぶ時間すら惜しいんです!出来る限りの処置をお願いします!団長を、団長を死なせないで下さい!」
(先程の団体さん、ですね。団長さんが怪我した、と言う事でしょうか?)
取り合えず入り口でむさ苦しい男の集団(鎧来ているから多分兵士)がたむろっているので、中に入れない。
(どうしましょう、か?今は面接、無理、ですよね?)
サラは悩んだ。
どう中の医師にお目通りを願おうか。
サラにこの集団に割り込む度胸は無い。
「畜生、手が足りん!誰か他に【治癒】の法術が使える者は居ないのか!?」
(あ、チャンス、ですね!)
「はい、私も治癒術使えます、です!」
「何ぃ!誰か今発言した奴を捕まえてこっちに持って来い!!」
連れて来い、ではなく。
持って来い、である。
どうやら診療所の医師はかなり柄が悪いらしい。
(ひぃ、就職先間違えたかも、です!)
「嬢ちゃんだよなさっきの?ローブ着てるし」
「は、はいぃぃ」
「嬢ちゃん団長を頼む!」
「酷い状態なんだ!神殿から派遣の治癒師が来るまで持ち堪えさせてくれ!」
「ぼけっとしてないで中へ!!」
「ひぃぃぃぃぃ…」
まるで連行だ。
ネグレクト系の虐待は平気だが暴力的なのには耐性のないサラである。
正直腰が引けるが、怪我人を見捨てるのは聖女…いや元聖女の精神をもってありえない。
「小娘!この男の傷口を塞げ!出血を止めるのが優先だ!!」
「ひゃい!」
寝台の上には右腕が千切れた男がいた。
全身ボロボロである。
その中でも腕からの出血が激しい。
「待ってくれ!腕の傷塞いだら団長はもう剣が握れないじゃねーか!」
「剣が握れないより命を優先だろうが!」
「神殿の治癒師なら千切れた腕もくっ付けられるだろう?もう少しだけ時間稼ぎしてくれ!!」
「その稼ぐ時間もねーくらいヤバいんだよお宅らの団長は!!」
血気盛んな兵士と言い争う三十路ほどの細身の男。
身長は高いが痩せすぎだ。
長い黒髪を付け根で無造作に結んでいる。
顔立ちは冷たげだが精神は熱血らしい。
先程のやり取りからサラはそう判断した。
銀色の細いフレームの眼鏡が良く似合っている。
この男こそ平民街の唯一の診療場の医師である。
ギルドの受付嬢曰く【治癒】の法術だけでなく医学にも精通しているらしい。
「あの、千切れた腕はあります、か?流石に神殿の法術師でも欠損再生は不可能、なのです」
「腕は冷やしながら汚れない様に持って来ている!術さえ、術さえ使える治癒師がいれば腕を治せるんだ!なのに…畜生!団長の腕を諦めないといけないのかよ!!」
布に包んである物体が寝台で寝かされている男の腕なのだろう。
たしかに綺麗な布でくるんである。
「それ、貸して下さい、なのです」
「は?」
サラの言葉に呆けている男から包みをひったくる。
荒い動作だが時間が限られているので許して貰いたい。
医師の見立て通り、この出血量では男は持たない。
治すなら今だ。
説明している暇はない。
サラは布を取り外し、カートの上に置いてある生理食塩水で断面を洗い流す。
そして男の千切れた腕の付け根に、腕の断面を押し当てて…。
「神よ、ご加護を…【治癒】」
ブワッ!
男の腕を中心に白い光が周りを照らした。
「な、何だ!?」
「これで良し、ですかね?」
「な……」
医者が呆けていた。
兵士たちも言葉を失っている。
千切れたはずの男の腕は、何も無かったかのように引っ付いていた。
傷口の後すらない。
「出来ました、よ?」
サラが医師に伝える。
「あ、あぁ…確かに見事に繋がっている。神経は……?」
「神経もしっかり繋いでいます、はい」
医師が男の手の甲に爪を立てた。
「痛ぅっ!」
寝台の男がソレに反応した。
「確かに神経も繋がっている…神殿の治癒師でもここまで見事に欠損を治す者など居ないぞ…小娘、お前は何者だ!?」
「ひゃ、ひゃひゃひゃひゃい、肩をゆらはないでぇぇぇ」
「あ、すまん」
「い、いえ」
医師がサラの肩を掴んで揺さぶっていたのを止めた。
肩からはまだ手が離されていない。
まるで「逃がしてたまるか」と言うような圧を感じる。
「あ、あの、今日就職の面接に来たサラと言います、はい」
「面接だとぉぉぉ?」
「ひゃ、ひゃいぃぃ…」
圧が、圧が怖い。
サラの弱い心臓が止まりそうである。
「他に面接に行ってないだろうなぁぁぁ?」
「こ、こちらが初めてれすぅぅぅ」
凄い圧で迫ってくる医師にサラは涙目だ。
はっきり言って怖い。
「採用だ!」
「ひゃい、へ?」
「今から採用だ!他に面接に行くことは許さん。今日から此処の職員としてばりばりと蟻のように働いてもらう!」
「蟻ですかぁぁぁ?」
「そう蟻だ!お前は蟻だ!ウチの巣でバリバリ働け!」
「うわぁぁん、既にブラック、ですか!?」
「う…ここ、は?」
騒いでいる医師とサラが騒いでいたのを止めたのは、寝台に寝かされていた男の声だった。
「気が付いたか!?」
ポイ、サラが投げ出される。
ぽよん
「ブッ!」
放り出されたサラは何か柔らかいモノに顔をぶつけた。
「やん、大丈夫、お嬢ちゃん?」
「ほえ?」
声のする方を見れば綺麗な顔が。
大きな垂れ目で唇がぽってりしている美女だ。
着ているのは看護師の白衣。
何故かミニ。
そして白衣の胸元に、重力に逆らって膨らみを強調している豊満な柔らかい塊。
おっぱいである。
(お、おっぱいです!それもこんなに大きな!!おっぱいが何故ここにあるんです、か!?)
「ごめんね、ウチのドクター乱暴で。で、お嬢ちゃんが今日面接に来るってギルドから言われていた子かしら?」
「はい、面接、です!」
「採用みたいよ。今日からヨロシクお嬢ちゃん♡」
チュッ
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
頬にキスをされサラがすごい勢いで後ずさった。
「か~わい~♡」
目が、肉食獣のソレである。
何かロックオンされたきがするサラだった。
「おい蟻!」
「蟻じゃなくてサラ、です!」
「蟻サラ!こっちに来い!」
「だから蟻じゃない、です!」
否定しながらもサラは医師の方へ行く。
「見事な治癒だアラ」
「先生、蟻が混じってる…です」
嘆きながらもきちんと答えるサラ。
コミュニケーション自体が苦手なのに、更にはアクの強い男が相手である。
だがココで働くならそんなことは言ってられない。
「お嬢ちゃん!腕、完璧だ!他の傷も無くなっている上に体が軽い、何なら傷を負う前より体調が良いぞ!」
「あ、傷の治療と一緒に体力の回復と増血と慢性的な体の疲れも取りました、です」
「へ~、治癒師ってのは凄いモノだな!何にしてもこれで明日からも仕事が出来る。有難うな嬢ちゃん!」
ニッコリと笑む男に礼を言われる。
こんなにフランクに男に笑顔を向けられたことが無いのでドギマギしてしまう。
(ドキドキするです、顔が熱くなる、です…)
「【治癒】の術式で体力回復に増血、慢性的な疲労回復…出鱈目だ。だが、これは思わぬ拾いモノだぞ」
初めてのトキメキにパニックに陥っているサラの隣で、診療場の医師は「クックックッ」と悪役の様な笑い声をあげていた。
中心街に近いだけあって平民街の外れより活気がある。
地図を見ながら診療所を探すとえらく騒がしい集団が駆けていった。
「はて、何かあった、ですかね?」
気にせずとてとて歩いていたら、目的の診療所に先程の集団が居た。
「先生!団長をお願いします!!」
「団長、俺をかばってせいで!!」
「泣くなトーマス!男らしくしろ!」
「神殿迄運ぶ時間すら惜しいんです!出来る限りの処置をお願いします!団長を、団長を死なせないで下さい!」
(先程の団体さん、ですね。団長さんが怪我した、と言う事でしょうか?)
取り合えず入り口でむさ苦しい男の集団(鎧来ているから多分兵士)がたむろっているので、中に入れない。
(どうしましょう、か?今は面接、無理、ですよね?)
サラは悩んだ。
どう中の医師にお目通りを願おうか。
サラにこの集団に割り込む度胸は無い。
「畜生、手が足りん!誰か他に【治癒】の法術が使える者は居ないのか!?」
(あ、チャンス、ですね!)
「はい、私も治癒術使えます、です!」
「何ぃ!誰か今発言した奴を捕まえてこっちに持って来い!!」
連れて来い、ではなく。
持って来い、である。
どうやら診療所の医師はかなり柄が悪いらしい。
(ひぃ、就職先間違えたかも、です!)
「嬢ちゃんだよなさっきの?ローブ着てるし」
「は、はいぃぃ」
「嬢ちゃん団長を頼む!」
「酷い状態なんだ!神殿から派遣の治癒師が来るまで持ち堪えさせてくれ!」
「ぼけっとしてないで中へ!!」
「ひぃぃぃぃぃ…」
まるで連行だ。
ネグレクト系の虐待は平気だが暴力的なのには耐性のないサラである。
正直腰が引けるが、怪我人を見捨てるのは聖女…いや元聖女の精神をもってありえない。
「小娘!この男の傷口を塞げ!出血を止めるのが優先だ!!」
「ひゃい!」
寝台の上には右腕が千切れた男がいた。
全身ボロボロである。
その中でも腕からの出血が激しい。
「待ってくれ!腕の傷塞いだら団長はもう剣が握れないじゃねーか!」
「剣が握れないより命を優先だろうが!」
「神殿の治癒師なら千切れた腕もくっ付けられるだろう?もう少しだけ時間稼ぎしてくれ!!」
「その稼ぐ時間もねーくらいヤバいんだよお宅らの団長は!!」
血気盛んな兵士と言い争う三十路ほどの細身の男。
身長は高いが痩せすぎだ。
長い黒髪を付け根で無造作に結んでいる。
顔立ちは冷たげだが精神は熱血らしい。
先程のやり取りからサラはそう判断した。
銀色の細いフレームの眼鏡が良く似合っている。
この男こそ平民街の唯一の診療場の医師である。
ギルドの受付嬢曰く【治癒】の法術だけでなく医学にも精通しているらしい。
「あの、千切れた腕はあります、か?流石に神殿の法術師でも欠損再生は不可能、なのです」
「腕は冷やしながら汚れない様に持って来ている!術さえ、術さえ使える治癒師がいれば腕を治せるんだ!なのに…畜生!団長の腕を諦めないといけないのかよ!!」
布に包んである物体が寝台で寝かされている男の腕なのだろう。
たしかに綺麗な布でくるんである。
「それ、貸して下さい、なのです」
「は?」
サラの言葉に呆けている男から包みをひったくる。
荒い動作だが時間が限られているので許して貰いたい。
医師の見立て通り、この出血量では男は持たない。
治すなら今だ。
説明している暇はない。
サラは布を取り外し、カートの上に置いてある生理食塩水で断面を洗い流す。
そして男の千切れた腕の付け根に、腕の断面を押し当てて…。
「神よ、ご加護を…【治癒】」
ブワッ!
男の腕を中心に白い光が周りを照らした。
「な、何だ!?」
「これで良し、ですかね?」
「な……」
医者が呆けていた。
兵士たちも言葉を失っている。
千切れたはずの男の腕は、何も無かったかのように引っ付いていた。
傷口の後すらない。
「出来ました、よ?」
サラが医師に伝える。
「あ、あぁ…確かに見事に繋がっている。神経は……?」
「神経もしっかり繋いでいます、はい」
医師が男の手の甲に爪を立てた。
「痛ぅっ!」
寝台の男がソレに反応した。
「確かに神経も繋がっている…神殿の治癒師でもここまで見事に欠損を治す者など居ないぞ…小娘、お前は何者だ!?」
「ひゃ、ひゃひゃひゃひゃい、肩をゆらはないでぇぇぇ」
「あ、すまん」
「い、いえ」
医師がサラの肩を掴んで揺さぶっていたのを止めた。
肩からはまだ手が離されていない。
まるで「逃がしてたまるか」と言うような圧を感じる。
「あ、あの、今日就職の面接に来たサラと言います、はい」
「面接だとぉぉぉ?」
「ひゃ、ひゃいぃぃ…」
圧が、圧が怖い。
サラの弱い心臓が止まりそうである。
「他に面接に行ってないだろうなぁぁぁ?」
「こ、こちらが初めてれすぅぅぅ」
凄い圧で迫ってくる医師にサラは涙目だ。
はっきり言って怖い。
「採用だ!」
「ひゃい、へ?」
「今から採用だ!他に面接に行くことは許さん。今日から此処の職員としてばりばりと蟻のように働いてもらう!」
「蟻ですかぁぁぁ?」
「そう蟻だ!お前は蟻だ!ウチの巣でバリバリ働け!」
「うわぁぁん、既にブラック、ですか!?」
「う…ここ、は?」
騒いでいる医師とサラが騒いでいたのを止めたのは、寝台に寝かされていた男の声だった。
「気が付いたか!?」
ポイ、サラが投げ出される。
ぽよん
「ブッ!」
放り出されたサラは何か柔らかいモノに顔をぶつけた。
「やん、大丈夫、お嬢ちゃん?」
「ほえ?」
声のする方を見れば綺麗な顔が。
大きな垂れ目で唇がぽってりしている美女だ。
着ているのは看護師の白衣。
何故かミニ。
そして白衣の胸元に、重力に逆らって膨らみを強調している豊満な柔らかい塊。
おっぱいである。
(お、おっぱいです!それもこんなに大きな!!おっぱいが何故ここにあるんです、か!?)
「ごめんね、ウチのドクター乱暴で。で、お嬢ちゃんが今日面接に来るってギルドから言われていた子かしら?」
「はい、面接、です!」
「採用みたいよ。今日からヨロシクお嬢ちゃん♡」
チュッ
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
頬にキスをされサラがすごい勢いで後ずさった。
「か~わい~♡」
目が、肉食獣のソレである。
何かロックオンされたきがするサラだった。
「おい蟻!」
「蟻じゃなくてサラ、です!」
「蟻サラ!こっちに来い!」
「だから蟻じゃない、です!」
否定しながらもサラは医師の方へ行く。
「見事な治癒だアラ」
「先生、蟻が混じってる…です」
嘆きながらもきちんと答えるサラ。
コミュニケーション自体が苦手なのに、更にはアクの強い男が相手である。
だがココで働くならそんなことは言ってられない。
「お嬢ちゃん!腕、完璧だ!他の傷も無くなっている上に体が軽い、何なら傷を負う前より体調が良いぞ!」
「あ、傷の治療と一緒に体力の回復と増血と慢性的な体の疲れも取りました、です」
「へ~、治癒師ってのは凄いモノだな!何にしてもこれで明日からも仕事が出来る。有難うな嬢ちゃん!」
ニッコリと笑む男に礼を言われる。
こんなにフランクに男に笑顔を向けられたことが無いのでドギマギしてしまう。
(ドキドキするです、顔が熱くなる、です…)
「【治癒】の術式で体力回復に増血、慢性的な疲労回復…出鱈目だ。だが、これは思わぬ拾いモノだぞ」
初めてのトキメキにパニックに陥っているサラの隣で、診療場の医師は「クックックッ」と悪役の様な笑い声をあげていた。
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