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《6話》

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 薄いピンクのフレアワンピース。
 マリン柄のトップス。
 白のTシャツ×2枚。
 デニムのスキニー。
 ベージュのスカンツ。
 黄色のロングワンピース。
 黒のカーディガン。

 どれも銅貨5~銀貨1枚だ。
 先行投資としては悪くないだろう。

「はぅ、結構買ってしまいましたが、今までの自分へのご褒美と思えばこれくらい許されます、よね?」

 重さの感じないエコバックに入った戦利品を見て、サラはニマニマと顔の筋肉が緩むのが分かる。
 ローブ以外の服なんてスラム時代のボロボロの布切れ以来だ。
 明日からは日常では私服を着よう。

 サラは心を弾ませた。

 先程の店で服を着替えて来ても良かったのだが、ギルドに冒険者登録をしに行かなくてはいけない。
 流石にワンピースで冒険者登録は揶揄いに来たのかとおもわれてお仕様がない。
 仕方なしに灰色のローブのままである。
 ちなみに本来「聖女」は純白のローブだが、神殿を出る際に灰色のローブに着替えさせられた。
 くったりとした使用感があるので、この灰色のローブもきっと古着だろう。
 
 まぁ服として機能してくれればソレで良い。
 スラム街育ちだけあってサラは意外と逞しいのだ。

「ここがギルドですよね?」

 王都の中心地に来た。
 流石に人が多いし喧噪も大きい。
 
 早く帰りたいと思ったが、ギルドは1国に本店が中心街に、支店がその他にでもあるのだが登録は本店で無いと出来ないのだ。

 看板が立てられた大きな建物。
 剣とドラゴンの看板が掲げられている。
 ”ギルド”と西洋文字と東洋文字の2つで書かれている。
 西洋文字の方でならサラでも読めた。
 剣とドラゴンの看板は字が読めない者でも分かるようにだろう。

 平民には字が読めない者も3~4割存在する。
 貧困で学業をならく機会が無いからだ。
 サラも神殿に保護されるまではそうであった。
 神殿の暮らしを思い返すとアレは”保護なのだろうか?”と首を傾げる生活だったが。

「すみません、冒険者登録をしたいのですが…」

 受付カウンターらしきところに座っている20代半ばの女性に声をかける。

「はい、身分証明書は持っていますか?」

「す、すみません…無い、です」

「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。名前と年齢さえ分かれば冒険者登録は出来ますから」

 ニッコリと受付嬢が微笑む。
 誰にでも笑顔。
 クレームを入れられても笑顔。
 口説かれても笑顔。
 セクハラされても笑顔。
 パワハラされても笑顔。
 受付嬢は結構大変なのである。

 サラの様な素直そうな少女は癒し系であり、受付嬢からすると他の冒険者よりよっぽど質が良い。

「ローブを着られていると言う事は後衛職ですね?魔術師ですか?法術師ですか?」

「え、と法術師です。簡単な【治癒】と【解毒】それに【結界】の法術、なら使えます」

 実際には【浄化】も使えるが、【浄化】は高位の法術なので黙っておく。

「それだけ使えれば十分ですね。法力の量を計ります。この水晶に手をかざして下さい」

 受付嬢がサラの前に水晶玉を出した。

「はい、それでは…」

(力を抑えて、力を抑えて……)

 サラは加護の力が溢れない様に、出来るだけ己の法力だけを水晶に流し込むようにする。
 水晶が淡く光った。


「まぁ、お嬢さん優秀ですね!C級の法力量です!」

「それってどれ位、なのでしょうか?」

「熟練冒険者級ですよ!これならすぐにでもクエストに出れます!!」

「いえ、私戦闘の経験は無いのでどこかで”治癒師”として働きたい、のですが」

「そうですね…お嬢さん体力無さそうですし、クエストは先走りましたね。では診療所などで働くのが良いでしょうね。場所は王都の中心にしますか?なんならお嬢さん位の法力があれば神殿勤めも可能ですが、宜しければ紹介状を書きましょうか?」

「そ、それはいい、です!私は平民街で働きたいと思って、います。自宅からも近い方が良い、すし…」

 神殿を追い出されたのに神殿に紹介状を書かれては本末転倒だ。

「残念です。潜在能力がこんなに高いのに…では用紙に名前と年齢をお書きください。字は書けますか?」

「はい、最低限なら」

 名前と年齢を記入する。

「18歳!?」

「はい、18歳です」

「あ、すみません。14~5歳だと思っていました……」

「いえ、良く間違われるのでお気になさらないで、下さい……」

 明らかに受付嬢はサラの胸元を見ていた。

(うぅ、どうせ私はぺったんこですよぉ……)

 身長は女性の平均身長はあるが、胸は見事なまな板だ。
 子宮に宿した加護がなくなれば月の物が来て、体つきも女らしくなるはずだ…。
 おそらく………。

(サイヒ様はあんなにスタイルが良いのに…あぁあの神様が丹精込めて作ったような美しさ、また会えないで、しょうか……)

「サラさん!ぼ~っとしてどうしました」

「すみません!ちょっと白昼夢、に浸ってました!」

 ついつい憧れの他国の聖女を心に描き悦に入ってしまっていた。
 さぞや締まりのない顔をしていた事だろう。
 少し恥ずかしくてサラは頬を赤く染めた。

 名前と年齢を記入し、ギルドカードを渡される。
 1番下のE級からだ。

「クエストをしない代わりに診療所で治癒師として働いて貰いますね。
診療所でどれだけ働いたのか月に1回、ギルドカードを持って支店で良いので経験値登録をして下さい。
行った術のレベルに合わせてギルドカードの右端にある微魔石に経験値が溜まります。
ある一定の経験値をクリアすると冒険者のクラスも上がるので頑張ってくださいね」

 にっこりと受付嬢が微笑みならサラを見送ってくれた。
 奥の酒場の喧騒がうるさくて、荒くれ者の集まりがたむろっている酔っ払いに絡まれなくて良かった。
 サラはほっ、と息を吐いた。

「冒険者登録もすんだし、お昼ご飯は早い安い旨いのお店、に行ってみましょう♪」

 サラは平民街へと戻り、受付嬢から教えられた”キチヤ屋”と言う名のビーフライスを食べるべく早足で中心街を後にした。

 :::

「おい、もっと近くに寄れ」

「はい、殿下」

 城の大浴場で花弁の浮かべられている湯に浸かったアコロ王子は、薄絹1枚の豊満な胸の女性の腰を抱き寄せた。

「ふふ、やはり女はこれくらい胸がないとな。あのスラム街のエセ聖女と婚約破棄したのは間違いなかったな」

 反対側の女の方に腕を廻して、そのたわわな乳房を揉みしだく。

「あん、殿下ぁお戯れを」

「んん、何か言ったか?」

 アコロ王子が女性の胸の頂点へ指を滑らそうとした途端、窓から黒い虫が2匹入って来た。
 黒いダイヤモンドと呼ばれるクワガタである。
 そしてアコロ王子の胸に止まると、示し合わせたように左右の乳首を挟んだ。

「ぎやぁぁぁぁぁぁっぁぁっ!!」

「「「「キャァァ―――――ッ!!」」」」

 アコロ王子と女性の悲鳴が浴場に響く。

「い、痛い!痛い!!私の乳首が!乳首がぁぁぁあぁぁああっ!!」

「騎士様!お助け下さい!!」

「ば、馬鹿!こんな姿を騎士に見せれるわk――――」

「「「「「大丈夫ですか殿下!!」」」」」

「見るなぁっ!ひぃ、痛い!痛い!乳首がちぎれるぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

「だれか殿下の乳首を守れ!」

「クワガタが何でこんなところに!?」

「あぁっ殿下の乳首があんなに赤くっ!」

「いいから早く助けろ――――――っ!」

 その日からアコロ王子の乳首には2週間、軟膏とガーゼが必須だったと言う。
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