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その後

青天の霹靂が身に降った思いだと後に彼女は答えた5

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 その日ダイニングでミヤハルが謎の行動を起こしていた。
 箱から紙を取り出す。
 メモをする。
 また紙を箱に直す。
 再び箱から紙を取り出す。
 メモをする。
 紙を箱に戻す。

 これを数回繰り返していたのである。

 オウマが頭に「?」を浮かべながらミヤハルの行動を眺めていた。

「ミヤハル様、何をやってんすか?」

 オウマも引き取られて数日経って、かなり打ち解けたようだ。
 ミヤハル相手に緊張をしなくなった。
 良い傾向だとミヤハルは思う。
 ミヤハルは堅苦しいのは好きでないのだ。
 自分と同じ立場の存在は今やもう数えるほどしか居ない。
 敬まわれるのはもうお腹いっぱいだ。
 だから身の回りに居る者はフランクなものを置いとくのを好んでいる。

「ん~そろそろ呼び名決めよ思うてなぁ」

 オウマが少し考える。
 そしてオウマがオムツを変えていた赤子に言う。

「良かったなお前、名前つけてくれるってさ」

 やはりオウマも頭の回転が速い。
 ミヤハルが何をしているのか分かったのだろう。
 赤ちゃんに話しかける表情が優しい。
 
 それを見てミヤハルは良い買い物をしたと思った。
 将来有望だ。
 鍛え方次第では今までの育て子の中でもトップクラスになるかもしれない。
 オウマの言葉にキャキャと喜ぶ赤子も潜在能力が高そうであるし、気まぐれでオークションに寄ってみて良かったものだ。

「チビ、来ぃや」

 トタトタと可愛らしい足音を立てて兄がミヤハルの座っているソファの横に座った。
 兄の方は初めて抱っこして貰った相手であろうミヤハルにべったりと懐いている。
 表情筋が仕事しないけど、ミヤハルと居る時はオーラが何か違う。
 背景がほわほわして見える。
 そして抱っこして貰ったからかミヤハルとの距離感がおかしい。
 出来るだけ引っ付こうとしている。

「チビ、お前の名前は今日から”エントビースド”や」

「名前?」

「そう名前、今日からはエントビースドと呼ぶ。気に入らないか?」

「良かったな兄、名前は最高の贈り物だぞ」

 オウマも横から会話に加わる。
 オウマの言葉に兄ーエントビースドの目がキラキラ輝いた。
 魅入られそうな綺麗な青銀の瞳に魅せられそうになる。

「ミヤハル様からのプレゼント?」

「そう、ウチからのプレゼントや。一生モンやから大切にしてや」

「プレゼント…エントビースド、エントビースド……」 

 何回も己の名を口の中で呟く。

「で、エントの弟は”シックスリ―”や」

「それもプレゼント?」

「そうプレゼント」

「シックスリ―…シックスリ―………」

「呼んだらちゃんと返事するんやで」

「分かった」

 エントビースドがコクリ、と首を縦に振る。
 そしてオウマの横に来ると弟ーシックスリ―の手を握って「シックスリ―」と名前を呼んだ。
 可愛い兄弟だ。
 外見が良いのもあるけど、行動が一々可愛い。
 惚れた欲目と言うやつか?

 その日はオウマの訓練は無しにした。
 兄弟の面倒見るのがお仕事。
 そして食事の時間に呼び出した。

 何時もより豪華なご馳走に、テーブルの真ん中に置かれた果実がいっぱい乗った美味しそうなケーキ。
 チョコのプレートに”お誕生日おめでとう”の文字が書かれている。

「お前らは誕生日も分からへんからな。名前つけた今日を誕生日にすることにしたで」

 エントビースドの青銀の瞳がゆらゆら揺れる。
 でも涙は零さなかった。
 涙が見たいとも思ったが、ミヤハルはその涙を自分1人のものにしたいとも思ったから不満はなかった。
 オウマの腕の中のシックスリーもキャッキャッと燥いでいる。
 その赤子を見るオウマの瞳も優しかった。

 本当に気まぐれだった。
 だがそれはきっ運命だった。
 出会うのが宿命であったのだとすら思う。

 気まぐれに立ち寄ったオークション。

 そこでミヤハルは生涯の宝物を手に入れた。
 『初恋』
 甘酸っぱい擽ったい想い。
 何時か数億年また生きても、この想いは忘れない。
 ミヤハルは笑顔を浮かべてエントビードの柔らかな灰銀の髪を指で梳いた。
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