上 下
75 / 279
その後

【9話】

しおりを挟む
 ホラーと言えば夏!
 しかし夏はすでに終わっている。
 オコタで鍋が美味しい季節である。

「あかん、今年夏満喫しとらん」

 ミヤハルのその1言が事の発端だった。

 :::

「と言う訳で始めるで百物語inマイハウス!本日は意味が分かると怖い話縛り!!」

 パチパチパチパチ

 リコリスとエントビースドとメイド(×4)が拍手をする。
 雰囲気を出すべく暗くした和室にろうそくに火を灯しての怪談話だ。

「んじゃ、ウチから」

〇本当の人数
昨日8人でかくれんぼ。 ものの5分で自分が見つかった。その5分後3人見つかって最後の4人も5分後に見つかった。驚異的な速さでだったよ!またかくれんぼしたいな。

「ん?何が怖いのでしょうか?」

「よく考えてみろリコリス。
鬼 → 1人
最初に自分が見つかった → 1人
次に3人見つかった  → 3人
最後には4人見つかった  → 4人
つまりは…」

「ひぃぃぃいぃ」

 ギュム~

 リコリスが魔王の腕にしがみ付く。
 意味が分かったらしい。
 リコリスに引っ付かれて魔王も満更ではない。
 それにしてもこの程度で悲鳴をあげるとは、リコリスはホラーに耐性が無い様だ。

「では次は私だな」

 ミヤハルを足に乗せて胡坐をかくエントビースドが話し始める。

〇招かざる人
2人の女がビデオカメラを携えて心霊スポットに入り、このまま1時間ほど廃病院を探索した。 「何も映らなかったねー。」 「家帰ろっか。うち来る?」 「そうするよ。」 「え?いいの?」 「いいよー。」 「じゃあ行くー。」 2人の女は病院を後にした。

「多い!多いです―――――っ!!」

 リコリスがガタガタ震える。

「では我が…」

〇男の行動
昨日は海へ足を運んだ 今日は山へ足を運んだ 次はどこに運ぼうか……
頭を抱えて悩んだ 実は昨日から手を焼いている
…案外骨が折れる 重い腰を持ち上げた 電話が鳴っている 友人に頼むむねを確認し明日までには終わらせようと腹をくくった

「バラバラ?バラバラなんですか!?」

「参加させて頂いて有難うございます☘では私が☘」

〇便座
初めて家にきた彼女。彼女がトイレを出た後に俺がすぐ入った。その直後彼女が「ダメ!見ないで!忘れ物したの!」とドアを激しく叩く。トイレ内を見ても特に何もないので「どしたの?何も忘れてないよ」とそのまま俺は用を足し、便座を降ろしトイレをでた。

「エーデルちゃんナイスや!別の意味で怖いわwwww」

「え、え?私よく分からなかったです」

「リコリスちゃんは穢れ無きままおってなぁ」

「では次行きます♡」

〇部屋のあかり
友達から怖い話を聞いた夜。私は怖くなって、全部の部屋の電気を点けてお風呂に入っていた。そろそろ出ようとバスタオルを手にしたとき、自室から物音がした。恐る恐る電気をつけたが、何もいなかった。…なあんだ、気のせいか。

「ぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっ」

「リコリスちゃんがマナーモードになっとるww」

「もっと引っ付いて良いぞリコリス」

「まおう~グズッ」

「満面の笑みやな魔王」

「それでは私も♪」

〇父親の計画
父は私に泳ぎを教えるため、電車で私を遠くの海に連れていきました。父の指導は厳しく、泳ぎを知らない私を何度も海に放り込みました。私は必死で手足を動かし、その結果僅か一日で泳げるようになりました。でもあの日、なぜ父は私の分だけ帰りの切符を買い忘れていたのでしょうか?

「家族は仲良くですぅぅぅぅっ!」

「あ、リコリスちゃんのトラウマが…」

「申し訳ありませんリコリス様♬」

「では参ります☆」

〇そっくりな双子
双子の幼女が誘拐された。 双子はガムテープで目と口を塞がれた 犯罪者は 姉の耳元でヘリウム声になり囁いた 「抵抗したり逃げたら妹を殺すよ。」 さらに犯罪者は 妹の耳元でヘリウム声になり囁いた 「抵抗したり逃げたら姉を殺すよ。」

「ん~と?」

「双子は見分けにくいぞ?」

「身近な恐怖ですぅぅぅぅっ!!グズグズ」

「で、リコリスちゃんで1周やねんけど、コレは無理やね。今回は解散、皆自分に当てられた部屋でゆっくり寝てやぁ~」

「ま、魔王…今日は1つの布団で寝ましょうね!寒いですもんね!」

「そうだな。冷えるからな。一緒の布団で寝る様にしよう」

 和室の客間にリコリスを連れて向かう魔王が振り向き、ミヤハルにサムズアップした。
 どうやら満足な結果らしい。

「そう言うつもりじゃなかったんやけどなぁ」

「では私たちも寝よう。メイド達もゲストルームを好きに使ってくれ」

「「「「有難うございます☘♡♬☆」」」」

 元気いっぱいの声で侍女たちは答える。
 楽しそうで何よりだ。

「エント、うちも怖なったから一緒のベッドで寝ようかな?」

「眠るだけか?」

「眠るだけや、こんなに客おるのにそんな気分にはなれんわ」

「アッチはそうでもないみたいだがな……」

 その夜、ミヤハル邸に女のすすり泣く声と小さな悲鳴が響いたという。

 次の日、つやつやと顔色の良い魔王と目元を赤くしたリコリスの姿があったとか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

「本当に僕の子供なのか検査して調べたい」子供と顔が似てないと責められ離婚と多額の慰謝料を請求された。

window
恋愛
ソフィア伯爵令嬢は公爵位を継いだ恋人で幼馴染のジャックと結婚して公爵夫人になった。何一つ不自由のない環境で誰もが羨むような生活をして、二人の子供に恵まれて幸福の絶頂期でもあった。 「長男は僕に似てるけど、次男の顔は全く似てないから病院で検査したい」 ある日ジャックからそう言われてソフィアは、時間が止まったような気持ちで精神的な打撃を受けた。すぐに返す言葉が出てこなかった。この出来事がきっかけで仲睦まじい夫婦にひびが入り崩れ出していく。

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

「不吉な子」と罵られたので娘を連れて家を出ましたが、どうやら「幸運を呼ぶ子」だったようです。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
マリッサの額にはうっすらと痣がある。 その痣のせいで姑に嫌われ、生まれた娘にも同じ痣があったことで「気味が悪い!不吉な子に違いない」と言われてしまう。 自分のことは我慢できるが娘を傷つけるのは許せない。そう思ったマリッサは離婚して家を出て、新たな出会いを得て幸せになるが……

夫の不貞現場を目撃してしまいました

秋月乃衣
恋愛
伯爵夫人ミレーユは、夫との間に子供が授からないまま、閨を共にしなくなって一年。 何故か夫から閨を拒否されてしまっているが、理由が分からない。 そんな時に夜会中の庭園で、夫と未亡人のマデリーンが、情事に耽っている場面を目撃してしまう。 なろう様でも掲載しております。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

処理中です...