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第1章
2話
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改めまして私リコリスと申します。
少し前まで皇太子の婚約者兼《武神》をしておりました。
我が家クレーンカ一族は聖女の結界で対抗できない高位魔族を屠る一族です。
その中でも私はちょっとした変わり種ですので自己紹介させて頂きます。
まずクレーンカ一族は《武神》の役目を建国から務めておりました。
《武神》は闘神の眷属でありバンリウ国の建国に大きく携わったと言われています。
しかしそのあまりに絶大な力ゆえ国の裏側で働く事となりました。
国王にとっても表立って目立たれると自分の権力を揺るがす厄介な相手だと思ったのでしょうね。
こうして我が一族は裏側からとは言え王族と変わらないトップの権力を有しております。
それ位してでも当時の国王は初代《武神》を囲いたかったのでしょう。
なのでコンジュ皇太子が私に行った行為は国の力を半減させる悪手だったという事です。
まぁ私としては発情皇太子と婚姻にならなくて良かったのですが。
だってコンジュ様は私の大切な睡眠時間を削り取る憎き存在でしかなかったからです。
見てくれだけに惚れられて私の中身を理解しようともしなかったコンジュ様をどうして好きになれましょうか?
コンジュ様は国の中枢におられる方です。
その気になったら我が一族が何者であるか知る機会は幾らでもあったはずです。
でもコンジュ様は我が家に訪問しては「今日こそはお茶でもしよう」と私の睡眠時間を削り取ろうとなさいました。
お茶なんて出来る体力は私には残ってません。
夜の間に私は魔族と戦い続きで漸くシャワーを浴びて寝れる、と言う状態なのですから。
なので私はコンジュ様と話す時は何時もベッドの中で睡魔に耐えながらでした。
何度早く帰れと思ったことか…。
私の自室に入れてあげてるだけでも十分特別扱いなのですが甘やかされて育ったコンジュ様は不満いっぱいだったようですね。
社交界に出る年頃になった時には他の女お子を口説いていたようです。
正直貞操観念も低い様なのでコンジュ様の初体験は割と速いのではないでしょうか?
下品な話をすみません。
それでも私とコンジュ様の結婚に大いに乗り気だった皇帝陛下と皇妃様の手前婚約破棄を言い出せなかったようですね。
ワンチャンスあるかもなど思われていたのかもしれません。
まぁ手も握らせてはいないのですけどね。
なので聖女のディルバさんがコンジュ様に靡いたのは良い切っ掛けだったのでしょう。
国を守る聖女なら私以上に妻に相応しいと思ったのでしょうね。
そのディルバさんの聖女の能力は下の下で私は歴代《武神》の中で1番働きづくめになったのですが。
思い出すだけで腹が立ちます。
私の睡眠負債返して貰いたいです。
1度万年寝不足になってみれば良いのです。
少しは私の苦労が分かるでしょう。
その気になればソレも容易に出来るのですよ。
何せ私は混じり物ですから。
《武神》の一族は血を薄めないよう出来るだけ血族の中で伴侶を選びます。
でもお父様はお母様に惚れて周囲の反対を押し切って外の血を一族の中に入れました。
当時は非難轟々だったそうで、お疲れ様ですお父様。
しかしその婚姻が《武神》の一族に新たな風を呼びました。
私の存在です。
お母様は大陸の端にある”蛇神”を祀る巫女姫でした。
その魔力は世界屈指。
こちらも血を護るために近親婚を繰り返していたようです。
”蛇神”の巫女と”闘神”の眷属。
その2つの血が合わさって、こうして私が誕生しました。
なので私は魔法は苦手としていた《武神》が使う事の出来なかった高位魔法もがんがん使います。
正直ディルバさんの結界能力で国を守るには純粋な《武神》の力だけでは足りなかったでしょう。
お母様の巫女の血が入ってハイブリット化した私だから国を守り切れたとも言えます。
ディルバさんがもう少し聖女としての能力が高ければ私もこんなに苦労しなかったのですけどね。
まぁお陰でお父様とお母様の婚姻が良い方向に認められたのは良かったと思います。
私の睡眠時間の問題以外は。
なので私は今までの働きを自分で労ってあげようと果ての塔でスローライフを満喫するつもりです。
国が傾く?
知った事ではありません。
私に対する侮辱をあんな公の場で行ってくれたコンジュ様には手を貸す気にはなれません。
おそらくクレーンカ邸では今頃引っ越しの準備で大忙しでしょう。
親馬鹿なお父様が私をこれ程コケにした王族に力を貸すなんてことは無いでしょう。
昼間にお母様から貰ったバッグの中からも引っ越し先の住所が書いてありました。
我が両親ながら行動が速い事です。
私も適当に新しい屋敷に来るように書いてありましたが馬に蹴れれるのもなんですし今の処行く気はありません。
それよりも誰にも干渉されずにダラダラ過ごせるこの現状を今はめいっぱい楽しみたいのです。
美味しい夕食もいただいたし私はお風呂に入ろうと思います。
ドキドキします。
狭いバスルームですが私は物心ついた時からシャワーで済ませていたので浴槽の湯に浸かるなんてしたことが無いのです。
そんな事していたら風呂で入水自殺ものです。
元気な身体で浴槽の湯に浸かる。
皆が言う”風呂は心の洗濯””風呂に入って後悔したものは居ない”を生身をもって経験できます。
早く浴槽に湯が溜まらないか待ち遠しくてたまりません。
幽閉された塔に湯が出るシステムなどあるかと思いの方がいらっしゃるかもしれませんがソコは問題ないです。
熱魔法で水を湯に帰れば良いだけですから。
あ、浴槽に水が溜まったようですね。
それでは皆様失礼いたします。
私はシャワーではなく”入浴”を体験してまいります。
少し鼻息が荒いのは大目に見て下さいませ。
それではお風呂にレッツゴーですわ!!
少し前まで皇太子の婚約者兼《武神》をしておりました。
我が家クレーンカ一族は聖女の結界で対抗できない高位魔族を屠る一族です。
その中でも私はちょっとした変わり種ですので自己紹介させて頂きます。
まずクレーンカ一族は《武神》の役目を建国から務めておりました。
《武神》は闘神の眷属でありバンリウ国の建国に大きく携わったと言われています。
しかしそのあまりに絶大な力ゆえ国の裏側で働く事となりました。
国王にとっても表立って目立たれると自分の権力を揺るがす厄介な相手だと思ったのでしょうね。
こうして我が一族は裏側からとは言え王族と変わらないトップの権力を有しております。
それ位してでも当時の国王は初代《武神》を囲いたかったのでしょう。
なのでコンジュ皇太子が私に行った行為は国の力を半減させる悪手だったという事です。
まぁ私としては発情皇太子と婚姻にならなくて良かったのですが。
だってコンジュ様は私の大切な睡眠時間を削り取る憎き存在でしかなかったからです。
見てくれだけに惚れられて私の中身を理解しようともしなかったコンジュ様をどうして好きになれましょうか?
コンジュ様は国の中枢におられる方です。
その気になったら我が一族が何者であるか知る機会は幾らでもあったはずです。
でもコンジュ様は我が家に訪問しては「今日こそはお茶でもしよう」と私の睡眠時間を削り取ろうとなさいました。
お茶なんて出来る体力は私には残ってません。
夜の間に私は魔族と戦い続きで漸くシャワーを浴びて寝れる、と言う状態なのですから。
なので私はコンジュ様と話す時は何時もベッドの中で睡魔に耐えながらでした。
何度早く帰れと思ったことか…。
私の自室に入れてあげてるだけでも十分特別扱いなのですが甘やかされて育ったコンジュ様は不満いっぱいだったようですね。
社交界に出る年頃になった時には他の女お子を口説いていたようです。
正直貞操観念も低い様なのでコンジュ様の初体験は割と速いのではないでしょうか?
下品な話をすみません。
それでも私とコンジュ様の結婚に大いに乗り気だった皇帝陛下と皇妃様の手前婚約破棄を言い出せなかったようですね。
ワンチャンスあるかもなど思われていたのかもしれません。
まぁ手も握らせてはいないのですけどね。
なので聖女のディルバさんがコンジュ様に靡いたのは良い切っ掛けだったのでしょう。
国を守る聖女なら私以上に妻に相応しいと思ったのでしょうね。
そのディルバさんの聖女の能力は下の下で私は歴代《武神》の中で1番働きづくめになったのですが。
思い出すだけで腹が立ちます。
私の睡眠負債返して貰いたいです。
1度万年寝不足になってみれば良いのです。
少しは私の苦労が分かるでしょう。
その気になればソレも容易に出来るのですよ。
何せ私は混じり物ですから。
《武神》の一族は血を薄めないよう出来るだけ血族の中で伴侶を選びます。
でもお父様はお母様に惚れて周囲の反対を押し切って外の血を一族の中に入れました。
当時は非難轟々だったそうで、お疲れ様ですお父様。
しかしその婚姻が《武神》の一族に新たな風を呼びました。
私の存在です。
お母様は大陸の端にある”蛇神”を祀る巫女姫でした。
その魔力は世界屈指。
こちらも血を護るために近親婚を繰り返していたようです。
”蛇神”の巫女と”闘神”の眷属。
その2つの血が合わさって、こうして私が誕生しました。
なので私は魔法は苦手としていた《武神》が使う事の出来なかった高位魔法もがんがん使います。
正直ディルバさんの結界能力で国を守るには純粋な《武神》の力だけでは足りなかったでしょう。
お母様の巫女の血が入ってハイブリット化した私だから国を守り切れたとも言えます。
ディルバさんがもう少し聖女としての能力が高ければ私もこんなに苦労しなかったのですけどね。
まぁお陰でお父様とお母様の婚姻が良い方向に認められたのは良かったと思います。
私の睡眠時間の問題以外は。
なので私は今までの働きを自分で労ってあげようと果ての塔でスローライフを満喫するつもりです。
国が傾く?
知った事ではありません。
私に対する侮辱をあんな公の場で行ってくれたコンジュ様には手を貸す気にはなれません。
おそらくクレーンカ邸では今頃引っ越しの準備で大忙しでしょう。
親馬鹿なお父様が私をこれ程コケにした王族に力を貸すなんてことは無いでしょう。
昼間にお母様から貰ったバッグの中からも引っ越し先の住所が書いてありました。
我が両親ながら行動が速い事です。
私も適当に新しい屋敷に来るように書いてありましたが馬に蹴れれるのもなんですし今の処行く気はありません。
それよりも誰にも干渉されずにダラダラ過ごせるこの現状を今はめいっぱい楽しみたいのです。
美味しい夕食もいただいたし私はお風呂に入ろうと思います。
ドキドキします。
狭いバスルームですが私は物心ついた時からシャワーで済ませていたので浴槽の湯に浸かるなんてしたことが無いのです。
そんな事していたら風呂で入水自殺ものです。
元気な身体で浴槽の湯に浸かる。
皆が言う”風呂は心の洗濯””風呂に入って後悔したものは居ない”を生身をもって経験できます。
早く浴槽に湯が溜まらないか待ち遠しくてたまりません。
幽閉された塔に湯が出るシステムなどあるかと思いの方がいらっしゃるかもしれませんがソコは問題ないです。
熱魔法で水を湯に帰れば良いだけですから。
あ、浴槽に水が溜まったようですね。
それでは皆様失礼いたします。
私はシャワーではなく”入浴”を体験してまいります。
少し鼻息が荒いのは大目に見て下さいませ。
それではお風呂にレッツゴーですわ!!
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