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1章 なんだかんだで城へ

再開〜ラン・アルテント~

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「少し待ってて」

 ドデカい扉の前で、エルさんが言った。

「あのぉ、この部屋は...」

「王子たちの部屋だよ」

 やっぱりか!扉がおっきいわけですわとか思っていたら、

「王子様方、御三方が到着致しました。」

待ってエルさん!まだ心の準備が...

「入れ」

王子ー!待ってって!許可しないで!

「失礼します」

 早い!まだ失礼しないで!
 僕達がオロオロしているのに気付いたエルさんが、

「大丈夫。ほら、入っておいで」

と、優しく言ってくれた。

「でも、心の準備が...」

「王子たち、怖くないですか?」

「怒ってない...?」

 罰せられるかもしれない可能性がない訳では無い。僕達は警戒していた。

「大丈夫。怖くないし、怒ってない。このまま入らなかったら、それこそ怒っちゃうよ」

 それはいけない。入らないと。

『失礼します。』

 僕達は勇気を出して部屋に入った。
 部屋には3人の人物が...


   イ、イケメンだー!(3回目)


 クソッ!かっこいい人はいつ、どの角度で見てもかっこいいんですね!別に羨ましくなんかないし!
 とか思っていると、王子たちが僕達の前に、それぞれ立った。僕の前にいるのは、よく喋っていた人だ。長男なのかな?
 すると、突然跪き、僕達の手を取った。そして、

『待っていたよ。私のかわいいお姫様』

 と言って、手の甲にキスをした。
 …え?今、何された?手にキス...?ってか、お姫様...?
 全てを理解した途端、恥ずかしくなり、3人揃って赤面した。

「ひ、姫って、僕達男ですし...」

「そ、そうそう!俺達より可愛い子は沢山いるし...」

「僕達には合ってないと思いますー...」

「なら、どう呼べと?」

 え?どう?そりゃあ…

「普通に!普通にランでいいです!」

「俺も!レンで!」

「僕もー」

 すると、王子たちは困ったように顔を見合わせた。

「いやしかし...」

 あ、なるほど。名前で呼んでいいのかって戸惑ってんだね。でも、ねぇ?

「いいんですよ!王子様ですし!」

 僕は笑って言った。すると...


   王子が固まった


 え!?何!?失礼だった!?

「あ、あのぉ...?」

「あ、あぁ、すまん。」

 良かったー!怒ってるわけじゃなかった!

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ。それより、僕達のことも名前で呼んでくれないか?」

 え、えぇー!僕達、大パニック!

「いやいや、いやいやいや」

「それは恐れ多いというか、なんというか…」

「僕達が呼んでいいとは思えない...」

 と僕達が言うと、王子たちはとても悲しそうな顔をした。僕達が呼んでいいとは思えない。でも、悲しそうな顔を放っておけない。名前、呼んだ方がいいよな。と、ここで問題発生!


   名前知らない…


 いつも「王子様方」としか聞いてなかったから!
 僕は急いでエルさんにSOSを出した。

「エルさん、エルさん!」

「ん?どうしたの?」

「あの、とっても聞きにくいのですが...王子様のお名前って…何ですか?」

 エルさん、凄い驚いてる。「え?知らないの」って顔してる。ごめんなさい知らないんです。

「今お話していた方は、イレーク王子と言います。」

「ありがとうございます!エルさん!」

 エルさん紳士だ!いい人!この人が上司で良かった!

「イ、イレーク…王子…?」

 勇気を出して言った。これで首はねられるのは嫌だなぁーとか思っていたら


   抱き締められた


 え?

「あ、あのぉ...?」

「す、すまない!」

  いや、そんなに勢いよく謝らなくてもいいんだけど…

「あ、いえ!別に嫌とかじゃなかったんですけど...いきなりでビックリして...」

 無意識に抱きつくほど嬉しかったのかな?名前で呼ばれることが。

「コホン。えー、そろそろよろしいでしょうか?」

エルさんの方を見る。

「もう時間も遅いですし、彼らには明日からバリバリ働いてもらうので、早く休ませたいのですが」

「すまなかった。もう下がってくれて構わない。」

「それでは、失礼します。ほら、みんなも」

「あ、失礼します!」

「失礼します~」

 は、早くない!?いつの間にか、レンとロンがエルさんに続いて退出しようとしていた。僕も慌てて扉に向かい、

「失礼します、イレーク王子」

 と言って、退出した。


「フフッ、あんなに嬉しそうなイレーク王子、初めて見た」

 僕達の部屋が用意されているらしく、その場所に向かっている途中、エルさんが笑いながら言った。

「?どういうことですか?」

「いや、イレーク王子って、あの3人の中でも、特に嬉しそうな顔を見たことがないんだよ。それが、あんなに嬉しそうにランを抱き締めて...こっちまで嬉しくなっちゃった。ありがとね、ラン」

 お礼を言われるようなことはしてないけど、でも、喜んでもらえたなら、それはそれでいっか!
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