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1章 なんだかんだで城へ

番外編・いざ城へ~レイン・アルテント〜

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 息子たちの乗った馬車が、だんだんと遠くなっていく。
 リンは、「起きてるのー!」と張り切っていたが、結局馬車が来る前に寝てしまった。
 
野次馬で出てきていた街の人達は、いつの間にか帰っていた。俺だけが、馬車が行った方向を見つめていた。


   あの子達なら大丈夫


 そう自分に言い聞かせていると、

「ただいま~」

と、呑気な声が聞こえてきた。この声は...

「遅い!ルー!」

 俺の夫、ルオネット・アルテントが後ろに立っていた。

「ん?どした?」

 この男は、事情をよく知らない。それもそのはず、仕事でこの街を離れていたからだ。

「ん?どした?じゃない!あぁー、もう!俺達の息子が、王子たちに気に入られて呼び出されたの!今、馬車で行ったの!手紙書くって言ってたけど、もう、もうっ...」


 ヤバい、泣きそう。


 改めて言葉にして、もうあの子達はいないんだという事実が本当なんだと実感してしまった。

 俺は昔、城で働いていたことがある。あそこは、給料も休みも言う事なしだが、死ぬまで出られない。何故俺が出られたのかは、まぁ、いつか話そう。

 とにかく、もう会えないと考えてもいい。その事実が、叩きつけられた。

 俺が頑張って涙を堪えていると、ふわりと抱きしめられた。

「大丈夫、大丈夫だから。絶対会える。だからもう一生会えないとか思うな。な?」

 もうダメだ。止まらない。頭から降ってくる言葉に、我慢していた涙が溢れてくる。嗚咽を漏らしながら、ついルーにあたってしまう。

「何を根拠に…グスッ…言ってるんだよ!…グスッ…ムリに…決まってんだろ!」

ルーの胸を叩きながらブツブツと言っていると、叩いていた腕を掴まれた。
 え?と思い、ルーの顔を見ると...


   笑っていた


「大丈夫だって。俺達の息子だぞ?絶対会える!俺達が信じなくてどうすんだ?」

 …そうだ。俺達が信じなくてどうするんだよ。はなから諦めてちゃ、絶対会えない。
 なら、絶対会えるって、信じるしかないんだ。

「…ごめん、取り乱して…」

「いいよ。」

 なんだかんだで許してくれる。優しくていい奴だ。

「可愛かったしな」

「なっ!」

 前言撤回!人をからかうのが大好きな最低野郎だ!

「ごめんごめん。怒るなよ」

 憤慨する俺に、ルーは唇を重ねてきた。


 頑張れよ、3人とも。
 また会える日まで、俺達も頑張るから。
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